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瑞華国白家奇譚〜理系令嬢は恋より発明がしたいのに、王弟殿下に執着されています〜  作者: ぶるどっく
第二章 知恵の芽吹きと絡繰の塔

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第十七話



「(……何だ、この男は……?!)」


 甘い顔立ちに似合う蜂蜜のような微笑み。


「(顔や身体を不躾に近付け、迫って来る不愉快な女どもを思い出す。

 その女どもを思い起こさせる……この男は、なんだ?)」


 彰玄の拳に無意識に力が籠り、武人としての勘が警鐘を鳴らす。


 ……目の前の甘ったるい顔をした男は、油断してはいけない相手だ、と。


「……王弟殿下、どうなさいましたかな?」


「……何でもない。

 泰山、この子供たちは何をしている?」


 甘い笑顔の玲から視線を外し、泰山へと彰玄は問い掛ける。


「読み書き、算術を学んでおりまする。」


「こんなにも……幼い頃から、か?」


 彰玄だけでなく、凛と景文も目を丸くしてしまう。


「幼いと言いましても、此処にいる子供たちは一番年下の子供でも五歳。

 平民の子ならば、己が出来ることを手伝い、親に習って見様見真似でも出来ることを増やしていく年頃。

 ……第一、王弟殿下も、このくらいの時分には礼儀作法などの教師は付いていたかと」


「それは、そうだが…………凛、景文、一般的な中級貴族は、このように子供たちを集めて読み書きを教えるのか?」


 五歳にもなれば、勉学を学び始めることは当然だといわんばかりの泰山の表情に彰玄は違和感を覚える。


「「一般的では有りません!」」


 彰玄の問い掛けに、凛と景文は勢い良く答える。


「上級貴族や財力がある者でも、まずは礼儀作法と読み書き程度です!

 あんな黒い板に書いているような算術を教えたりしません!」


「そうです!

 しかも、この場にいる子供達は使用人の子供達でしょう?!

 使用人の子に読み書きや算術を引っ括めて教える家など有りません!

 算術に関しては私が習いたいくらいというか、習いたいです!

 白家のご当主殿ぉぉぉぉっっ!!

 是非ともこの死に損ないの老人を哀れと思って参加させてくだされぇぇぇぇっっ!!!」


 死に損ないと自称する割には驚きの瞬発力で、泰山の足元に縋り付いた景文。


「死に損ないというには元気百倍過ぎるだろっっ?!

 徐算官長っ!

 白家当主から離れてくださいっっ!

 官吏としての自覚と威厳を持って振る舞うって約束したでしょうっっ?!」


「嫌じゃ、嫌じゃあぁぁぁっっ!

 ワシ、老人じゃもん!

 約束なんて知らないもん!

 官吏なんて引退するっ!

 残りの人生は、神の算術を究めるって決めたんじゃもん!」


「だからアンタを連れて来るのは反対したんだっっ!!!

 第一アンタは年寄りってほど、年寄りじゃないだろうっっ!!」


 泰山の足に座り込み、鬼気迫る形相で抱き着いて離れない景文を、凛が力任せに引っ張り離そうと試みる。


「っ……アンタ、文官なのに何でっ!

 こんなに力が強いんだよっっ?!」


「ふんぎゅぅぅぅぅぅっっ!!!」


 歯を食いしばり、目玉が飛び出そうなほどに力を込めて景文は泰山から離れない。


「「「………………」」」


 そんな凛と景文のやり取りを見ていた泰山、彰玄、玲。


「…………王弟殿下」


「…………すまん」


 泰山が何とも言えない視線を彰玄へと向け、彰玄が視線を逸らしつつ謝罪の言葉を呟いた。


「…………あはは!

 とても面白い御仁ですね、ご当主様。

 ではでは……昨日、僕が提案した内容で進めてみては……?」


 ニッコリと笑顔を浮かべた玲が泰山へと視線だけで問い掛ける。


「……うむ」


「ありがとうございます!」


 小首を傾げ、己の可愛らしさを十二分に理解した仕草で玲が彰玄たちへと微笑みを向ける。


「あのぉ……もし宜しければ、僕の授業に参加なさいますか?

 実際に参加した方が分かりやすいかと思うのですが……」


 如何ですか?と彰玄に近寄り、あざと可愛い上目遣いで玲は問い掛ける。


「っ……」


 彰玄の背筋に悪寒が走り、鳥肌が立つ。


「ことわ……」


「参加します!

 参加以外の選択肢は死んでも有り得ませんっっ!!

 そうで御座いましょうっ王弟殿下っっ!!!」


 ゾワゾワと走った悪寒に、彰玄が断ろうとした瞬間。

 目を血走らせた景文が凄まじい形相で、彰玄と玲の間に出現した。


「参加でござりまするぅぅぅぅっっ!!!」


「ああっもう!!

 不敬罪もクソもないなっっ!!」


 首に縄を付けてでも景文を大人しくさせようとする凛。


「ふふ!

 とても面白い方をお連れですね、王弟殿下♡

 ……僕も、素敵な殿下のお側に侍りたいな……?」


「断る」


「……すぐに釣れない所も男らしくて素敵ですね♡」


「っ…………?!」


 ニコニコと無邪気を装って引っ付こうとする玲から、必死に距離を取ろうとする彰玄。


「……玲」


「はい、ご当主様!

 僕、ご当主様や姫様のために頑張って良いところをお見せますね……!」


 渋い顔をした泰山が玲の名前を呼べば、お任せください!と素敵な笑顔を浮かべるのだった。




ここまでお読みいただき、ありがとうございます!


明葵の発明と瑞華国の行く末、そして彰玄との関係が「続きも読みたい!」「面白い!」と思っていただけましたら、ブックマークや☆☆☆☆☆評価で応援していただけると嬉しいです!


皆さまの応援を励みに、明葵たちの物語を最後まで描いていきます!!

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