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瑞華国白家奇譚〜理系令嬢は恋より発明がしたいのに、王弟殿下に執着されています〜  作者: ぶるどっく
第二章 知恵の芽吹きと絡繰の塔

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第十六話



「……本日は、ようこそおいで下さいました。」


 霊山の麓の白家の屋敷。


「一族を上げて、歓迎させて頂きまする……王弟殿下」


 屋敷の前に、明葵を除く白一族が並び、頭を下げる。


「……感謝する」


 歓迎すると言っているにも関わらず、彰玄は白一族から放たれる無言の圧力を感じ取った。


「(……夏侯様……その、白一族の方々からあからさまでは有りませんが、敵意のような圧力を感じるのですが……)」


「(…………色々と有ったもので……)」


彰玄の背後では、凛と景文がコソコソと言葉を交わていた。


「(……明葵嬢が了承した上で、あの円塔に隔離されているのでしょう?

 それならば、白一族から敵意を感じる理由が無いはず…………あ、もしや……)」


「(……徐算官長、王弟殿下は女性の扱いは不得手だということは内密に。)」


 何かを察した景文に、凛は遠い目をしてしまう。


「(……凛、景文……聞こえているが?)」


 白家当主である泰山に案内されて、屋敷内を移動する彰玄がジロリと二人を睨む。

 

「王弟殿下、明葵より御三方が興味を持たれた内容は聞き及んでいます。

 しかしながら、それだけをお見せしても芸がない。

 よって、娘の許可も得て、明葵の作業場も披露させて頂きまする。」


「……娘と連絡を取り合っていることを隠さぬのだな。」


 前を歩く泰山の背中へと、彰玄は率直に問い掛けた。


「隠す必要が有りますかな?

 陛下より、あの娘を守るための処置だと……円塔への隔離については伺っております。」


 泰山が歩みを止めて振り返れば、その瞳は強い意志を持って光っていた。


「……最も、近衛の精鋭の方々と言えど、毒には疎いようですな。

 もしくは……そうですな、外道の抜け道は御存知無い様子。

 蛇の道は蛇と申しますが、龍の巣の中に仕える者ならば、表と裏の役割は違えども……知ると知らぬでは見える物も変わってくるかと。」


「…………お前には蛇の道が見えると?」


「いえいえ……所詮は中級の貴族。

 しかも、権力争いに敗れて都落ち仕掛けた者の末裔ならば。

 ……路傍の石のような我らに見える物は、限られております。」


 変わらぬ泰山の表情。

 王族を前に、付け入る隙を与え無い動かぬ感情は、その名前の通り山の如し。


「……そうか。

 お前たち一族を路傍の石と例えるならば、我らは枯井戸の底の小石が精々だろうな。」


「ご謙遜を、王弟殿下。

 ……路傍の石の価値を見誤る愚か者こそ、枯井戸の底の小石でしょうに。」


 泰山と同じように、彰玄は無表情で言葉を返す。


「……算術をいち早く取り入れ、一族全体に浸透させ、新しい知識に臆することなく柔軟に受け入れる。

 それ程の器量を持つ者は、王族や上級貴族の中でも数える程だろう。

 ……新しい知識を得ても、その価値を理解できねば意味が無い。

 お前たち一族が、幼い娘の戯言だと切り捨て無かったからこそ、白 明葵はあれ程までの叡智を育て上げた。」


「……過大評価ですな。

 我らにとっては、可愛い末娘の戯言ではなく金言だと親馬鹿を発揮したに過ぎませぬ。」


 幼子だった明葵が熱病に掛かった次男の梓苑(しおん)を助けたあのとき。


「…………それに、あの娘が特別であることなど一目瞭然でしたから。」


 あの時を切っ掛けに、明葵が人ならざる者達から溺愛されていることを泰山たちは知ったのだ。


「……それはどういう……」


「此方で御座います」


 泰山の言葉の意味を測りかね、彰玄が問い掛けようとした声を遮るように、泰山は目的の部屋の扉を開いた。


「は~い!

 良い子のみんな!注目してくださいね〜!」


「はーい!玲(れい)師(せんせい)!」


 黒塗りの大きな板に向かって、大人しく座って話を聞く子供たち。


 黒塗りの板に白い棒のような物で何かを書き記していく青年。


「あ……」


 爽やかな笑顔に、可愛い系の甘い顔立ち。


「……玲、此方へ」


 子供たちを前に笑顔を振りまいていた麗しい青年が、泰山に気が付いて瞳を揺らす。


「……王弟殿下、この者がお尋ねになられた明葵よりも暗算が得意な者となります。

 玲……王弟殿下方へ、ご挨拶を。」


「お初にお目に掛かります……魚 玲と申します」


 恥ずかしそうに頬を薔薇色に染め、はにかんだように玲は微笑む。


「僕のような者が、噂に名高き王弟殿下にお目通り叶うなど夢のようです……!」


 細身だが鍛えられた身体に、靭やかに伸びた四肢。

 甘く蕩けるように垂れ目がちな碧い瞳。

 香り立つような甘い色香を感じる微笑み。


「王弟殿下……どうぞ、宜しくお願いします♡」

 

「…………………」


 一瞬にして氷のような空気を纏った彰玄。


「(あちゃー……地雷が来ちゃったかぁ……)」


 表情は変えずに、目だけを死んだ魚のようにした凛が、内心で頭を抱えてしまうのだった。




ここまでお読みいただき、ありがとうございます!


明葵の発明と瑞華国の行く末、そして彰玄との関係が「続きも読みたい!」「面白い!」と思っていただけましたら、ブックマークや☆☆☆☆☆評価で応援していただけると嬉しいです!


皆さまの応援を励みに、明葵たちの物語を最後まで描いていきます!!

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火を見るより明らか→一目瞭然とかの方がいいかもしれません
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