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瑞華国白家奇譚〜理系令嬢は恋より発明がしたいのに、王弟殿下に執着されています〜  作者: ぶるどっく
第二章 知恵の芽吹きと絡繰の塔

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第六話



 真っ暗な闇の奥より、微かな風の流れ。


 その風に乗って流れてくる香り。


「(……何だろう、この匂い……?

 肉乾が真っ黒に焦げた時の匂い……に、まだ何か混ざってるような……?)」


 真っ暗な地下室への入り口を前に、明葵は首を傾げる。


「炭と水の匂いがしますね」


「炭と水……?」


 スンスンと鼻を動かした華乃が、明葵の考えを補足するように呟く。


「……よし! 行ってみよう!」


 この暗闇の先には何があるのか?


 昔の天文学者達が残した星図?


 炭の匂いは……大きな炉?


 水の匂いは……水運儀象台?


「(……考えただけでも、楽しくてたまらないっ……!)」


 女が一人通るのがやっとの狭い階段。


「明葵さま、小鬼達が先ですからね!

 小鬼達が先に降りて、危険な毒虫とか居ないかを確認してから行きますよ!」


「うに!」「ぴぴ!」「しゅー!」


 華乃の言葉が終わる前に、小鬼達が一斉に地下室へと駆け下りていく。


「……そんな大袈裟な……」


「大袈裟じゃないです!

 ものすっごい大きな百足が居て、お互いに悲鳴を上げた夜を忘れたんですかっ?!」


「あ……うん、あれは普通に驚いちゃった……」


 霊山という山育ちの明葵でも驚いた男の掌程の大きさの百足。


 毒はこりごりだと明葵は苦笑する。


「(……もしかしなくても……地下室で生まれ育った奴だったり……?)」


 百足の大きさを思い出しただけでも、ぶるりと震えてしまう。


「でも、小鬼さんたちは大丈夫かな?」


「……可愛くても小鬼ですから、そこら辺の毒虫には負けませんよ」


 逆に、ちょうどいいオヤツとばかりに食べていそうな気がするが……。


「ぴ! ひーしゃま! も、へーきなのぉ!」


 明葵の下へ黄色い小鬼が戻って来た。


「ありがとう、黄色の小鬼さん」


 ぴ!と返事をする小鬼の可愛らしさに、明葵の頬が緩む。


「……真っ暗ね……何だか、他にも仕掛けがありそうな気がするわ」


「まー……人間は、妖と違って夜目が利きませんから不便ですよねぇ……」


「そうなの!

 だから……何か仕掛けを作ってそうだなって思うの……」


 真っ暗な狭い階段。


 小さな明かりを頼りに、明葵は一段一段、慎重に降りて行く。


「(……壁に……一定間隔で窪みがある……)」


 ゆっくりと歩きながら、階段の壁を観察すれば……等間隔に有る小さな窪み。


「(……何の目的も無く、わざわざ等間隔に窪みを作るかしら……?)」


 何の目的で作ったのか……?


 蝋燭の明かりを近付ければ、微かに光を反射したような……?


 持っていた布切れで、窪みの突き当たりの壁を拭う。


「……鏡……?」


 青銅製だろうか?


「……っ……そういうこと、ね!」


 窪みを作った目的を理解した明葵な顔が輝く。


「ふふ……まずは地下室を確認するのが先ね。

 あとで、一階も確認しなきゃ……予想が当たっているなら、採光用の鏡が有るはずだもの……」


「うにゅ? ひーしゃま!」


「しゅー!」


 周囲を観察しながら降りていけば、円塔の地上部分と同じか、それ以上に広い地下室。


「……広い……」


 小さな蝋燭の明かりだけでは、すべてを見通すことは出来ない。


「……これは……炉?」


「ただの炉にしては、大き過ぎる気がしますけど……?」


 明葵や華乃よりも大きな炉。


 明葵には小さな明かりが届く範囲でしか見えず、その全貌を把握できない。


「……でも、もし炉だったら……煙を出すための管があるはず……」


 火を燃やすならば、必ず発生する煙や熱。


 外ならば兎も角、地下室で火を燃やせば、忽ち煙で一杯になってしまう。


 だからこその煙突や煙道。


 そういった物が炉には、必ず一緒に有るはずなのだ。


「しゅ? 道、ある!」


「え……それは、何処にあるの?」


 明葵の呟きを拾った小鬼がぴょんっ!と飛び上がる。


「しゅー!こっち!」


「うにっ!そっち!」


「ぴっ!あっち!」


 小鬼達が左右や上、色んな方向を指し示す。


「華乃ちゃん……」


 明かりが届かない場所は、明葵には見えない。


 明葵は眉をハの字にして助けを求めるように、華乃の名を呼んだ。


「んー……壁の表面には何もありませんよ。

 でも……炉から出ている管の一部が壁の裏側に入って行くように見えます」


 大きな炉から出ている太い青銅製の管。


 華乃の目には、壁の裏側へと続いているように見えた。


「……つまり……そっか…………もしかしたら……?」


 華乃の言葉を聞いて、一つの可能性が仮説が浮かんだ。


「……真夏や真冬でも観察する夜空。

 地下に設置された大きな炉。

 石壁の裏へと入って行く青銅の管。

 小鬼さんたちが指し示した管の道の場所……」


 そう……暖められた空気は下から上へと登っていく!


 明葵の瞳が、確信を持って輝く。


「……小鬼さんたち……お願いごとを、宜しいでしょうか……?」


「しゅっ!」「ぴっ!」「うにっ!」


 普段の優しい微笑みとは違う明葵の自信に満ちた笑顔に応えるように。


 小鬼達が元気よく飛び跳ねるのだった。



ここまでお読みいただき、ありがとうございます!


明葵の発明と瑞華国の行く末、そして彰玄との関係が「続きも読みたい!」「面白い!」と思っていただけましたら、ブックマークや☆☆☆☆☆評価で応援していただけると嬉しいです!


皆さまの応援を励みに、明葵たちの物語を最後まで描いていきます!!

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