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瑞華国白家奇譚〜理系令嬢は恋より発明がしたいのに、王弟殿下に執着されています〜  作者: ぶるどっく
第二章 知恵の芽吹きと絡繰の塔

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第五話



 皇帝の自室で黎陽と彰玄達が悪どい笑みを浮かべている頃。


 円塔にいる明葵は、外した青銅製の格子の枠を磨いていた。


「明葵さま、そろそろ一旦休憩したらどうですか?

 その枠を外してから根を詰めすぎだと思いますぅ」


「う……あ、あともうちょっと……」


「さっきもそう言いましたよね?

 明葵さま、休憩している間は小鬼たちが引き受けますから問題ないですよ」


 猫の姿から人の姿に化けた華乃が困ったように微笑む。


 根を詰めているのが明葵でなければ放っておくけれども。


「うにぃ!お任せなの!」


 桃色のもちっとした小鬼がコロコロと転がりながら笑う。


「でも、何もお礼を返せないから申し訳なくて……」


「ぴ? ひーしゃまのお役にたてる、うれしー!」


 黄色の小鬼もくるくると回る。


「しゅしゅ?

 コレ、みがく、する?」


 水色の小鬼がペシペシと尻尾で青銅の枠を叩きながら、小首を傾げる。


「手伝ってもらってばかりで、ごめんね……」


「うにっ!」「ぴ!」「しゅっ!」


「「「ひーしゃまのためだから!」」」


「ほんとに……良い子達ばっかりだわ……!」


 ギザギザの小さな歯が見える可愛らしい笑顔。


「(……癒し系の可愛い外見だけど、小鬼なんだよねー……)」


 可愛い、可愛いと撫でている明葵を見つめつつ、華乃は複雑な気持ちになる。


「(鬼族の長でもある鬼星さまの手下だからさぁ…………ふっつーに、人間……食べるんだよねぇ……)」


 確かに、小鬼たちは可愛い見た目ではある。


 ……ただし、可愛い姿に化けているだけであることを華乃は知っている。


「(……ちょっと前にも……踊り食い、してたし……)」


 何を、とは言わないが。


「明葵さま、お茶を淹れましたから休憩しましょう。

 あと、小鬼たちに格子の枠を磨くのは任せて……地下室探検へ行きませんか?」


 あの部屋、気になるんですよねぇ……と華乃は微笑む。


「地下室っ……!」


 華乃から手渡されたお茶に口を付けようとしていた明葵の瞳が輝く。


「昔の天文台跡地だと考えれば、色々と仕掛けがありそうだもの!

 春先の今でも寒いのに、この円塔で空を観察していた天文学者達が何の対策も練っていないとは思えないし……!

 それ以外にも、折角建てた円塔を夜空の観察だけの目的で終わらせていたのかしら?

 私だったら、労力と予算を掛けて建てるのだから、それ以外の理由とかも……むぐっ?!」


「はーい、強制終了のお時間ですぅ!」


 楽しそうに頬を染めて語る明葵の口へ、華乃が何かを放り込む。


「んぐ…………うぅ……華乃ちゃん、ひどい……」


 顔を青くし、口元を抑え、涙目になる明葵。


「どうして……梓苑兄様印の薬草団子があるの……」


「明葵さまが霊山にいた頃のように振る舞うならば必要かなって。

 朝一番に鷹の(たま)が、届けてくれましたよ」


「菖兄様の珠が……」


「てゆーか……鷹なのに、珠って名前なのが謎ですぅ」


 菖雲が雛の頃から育てた鷹の珠。


「……私の愛用の工具は助かったけど……この薬草団子は……やだ……」


「栄養と長期保存できることを重視で、味は二の次とは言え…………ヤバい味ですよね」


 私も食べたくありません、と華乃は苦笑する。


「……梓苑兄様には申し訳ないけど、桐兄様の保存食の方が好き……」


「あっちは味と長期保存を重視してますから。

 ……食べたくはないですけど、栄養面は薬草団子の方が上なんですよねぇ……」

 

 同じ食べるならば、美味しい方が嬉しいと明葵と華乃は頷き合うのだった。





 円塔の一階。


 中央部分は吹き抜けとなり、各階の踊り場に沿って各階に小部屋が幾つかある円塔。


 一階部分にもまた小部屋があり、その中の一つに窓の無い倉庫のような部屋があった。


「……階段の影の窓もない、倉庫代わりに使っていたとしか思えない部屋よね……」


 小部屋の天井には、小さな滑車が一つ。


「この塔を建てた頃の人間たちの動向なんて、興味も欠片も有りませんでしたからねぇ?

 生きてはいましたけど、この塔を作っていることすら気にも留めていなかったです」


 明葵が持つ蝋燭の火が揺れる。


「……此処から風が流れているのね」


「しゅ!ここ!」


 蝋燭の炎が揺れる場所と小鬼が指さす場所が合致する。


「ぴぴっ!あけるよぉ!」


「うに!よーしょっ!」


 小鬼達が石造りの床の一つ。


 小さな凹みがある石に、小鬼達がワラワラと集まり持ち上げる。


「……そっか……石の小さな凹みに何かを引っ掛けて、天井の滑車と縄を使って開閉していたのね」


 明葵は天井に取り付けていた滑車の意味を理解する。


「天文台としての機能を失って、この塔を使っていた人間たちが死に絶えて……。

 誰もが隠し扉の存在を忘れ去ってしまった……」


 人々の記憶から忘れ去られてしまった隠し扉……そして、地下室。


「……何が、眠っているのかしら……?」


 土埃を落としながら、真っ暗な入り口が……長い時を経て、再び開いたのだった。


ここまでお読みいただき、ありがとうございます!


明葵の発明と瑞華国の行く末、そして彰玄との関係が「面白い!」「続きも読みたい!」と思っていただけましたら、ブックマークや☆☆☆☆☆評価で応援していただけると嬉しいです!!


皆さまの応援を励みに、明葵たちの物語を最後まで描いていきます。

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