プロローグ
美しい月の光が窓から差し込む。
室内の小さな蝋燭の火が揺れる。
その明かりに照らされた白い女の顔。
「……円塔の隅から隅まで調べてもらったけど……一番気になるのは……"隠し扉"と"地下室"かしら……?」
女の側で、小さな影が暗闇の中で蠢く。
「……しかも……この円塔は、外壁と内壁の二重構造になっていたのね」
集まった情報を纏め上げ、女は……明葵は微笑む。
「小鬼さんたち、ありがとう……!」
明葵が微笑みを向けた先。
「うにぃっ!ひーさま!」
まん丸でもちっとした桃色の一本角。
「ぴいっ〜がんばったのぉ」
モコモコとした黄色の毛に二本角。
「しゅ〜……ねがい!おわり?」
尻尾の生えたツルリとした体に水色の三本角。
それ以外にもわらわら、と。
たくさんの小鬼達が嬉しそうに笑っている。
「本当に、ありがとう。
霊山なら渡すものに困らないんだけど……うー……あ!」
お礼として渡すものに困っていた明葵だったが、思いついたように手を叩く。
「明日の私の朝ご飯を……」
「駄目です!」
明葵の言葉に反応して、寝台の上で丸まっていた華乃が瞬時に反応する。
「だーめ!」「め〜なのぉ」「むりっ」
「「「長しゃまがおこる!」」」
小鬼たちの大合唱。
「小鬼たちの言う通りです!
明葵さまはちゃんと食べてくださいっ!」
「ご、ごめんね……華乃ちゃん……」
猫の姿のまま怒る華乃に、明葵が申し訳なさそうに謝る。
「うにゃっ?!
明葵さまっ!怒っているんじゃないんです!
私は、明葵さまがご飯が足りなくて倒れるんじゃないかと心配で……!」
「うん……わかっているわ。
いつも心配してくれてありがとう、華乃ちゃん。
……一応ね、霊山にいた頃よりはお昼ご飯を忘れたりしなくなったし……」
「……この円塔を改造するんですよね?
私は、また食べるのを忘れて作業に没頭しないか心配ですぅ……」
猫の姿で器用にため息を付く華乃。
「ふふ……!
やりたいことは山積みなのっ!
華乃ちゃんに心配を掛けない程度に始めちゃうわっ!」
心の底から楽しそうにウキウキとした笑顔の明葵。
「まずは!
脱出経路の確保と防犯装置から始めましょうっっ!」
「…………とりあえず……桐峻に連絡を取って、明葵さまの口に放り込めるオヤツの確保から始めとこっかな……」
しばらくは作業に没頭して暴走しそうな明葵に、華乃は猫の姿のまま肩を落とすのだった。




