表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/10

5、人間パッケージ

 

 作業員の指先が、遥斗の鼻先で止まった。

 焦げたゴムのような生ぬるい臭いが漂う。


 足音が遠ざかった。

 遥斗は扉の陰からそっと出た。

 作業員たちの後を追う。


 大きな金属扉が音もなく左右に開く。

 閉まりきる直前、遥斗は滑り込んだ。

 そこは白い光に満ちた巨大な部屋だった。


 天井全体が発光しているかのようだ。

 部屋を埋め尽くすのは、無数のレーン。

 その上に、人間が等間隔に並べられていた。


 全員、胴色の薄いフィルムで、つま先から頭まで真空パックされている。

 筋肉の隆起や歪んだ表情が、膜越しに生々しく浮かび上がっていた。

 誰も動かない。ただの肉塊だ。


(……人間の保管庫か)


 遥斗は壁際に張り付き、息を殺した。

 一人のパックされた顔と目が合った気がした。

 膜の内側で眼球が激しく震えている。

 まだ、意識がある。


 レーンがガタンと動き、次の工程へ進む。

 白い作業員たちが喉元に機器を当て、「プシュッ」と音を立てる。

 タグが浮かび上がり、番号を記録していく。


 レーンのフィルムの色が、ランクごとに違っていた。

 一番奥のレーンは、白銀に輝いている。


 そこに、葵がいた。

 遥斗の息が止まった。

 完璧なプロポーション。喉元にタグが光っている。


(ここでも……あっち側か)


 ◇


 新たな人間たちが、作業員に連れられて入ってきた。

 その中に夏目がいた。

 まだ制服を着ているが、足取りは完全に機械的だ。

 喉の黒いタグが鈍く明滅している。


 夏目は白銀から二つ隣の、鉄色のレーンに立たされた。

 カシューという音とともに、衣服を剥ぎ取られ、フィルムで包まれる。

 遥斗は柱の陰から見つめていた。


(夏目ですら……この位置か)


 クラスで一目置かれていた夏目でさえ。

 ここでも順位は変わらない。

 遥斗の口の端が、わずかに歪んだ。


(あの時、声をかけていたら……)


 いや。

 どうせ自分も、同じだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ