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エルフの王女にフラれたので、辺境の荒れ地を最強の要塞都市にしてみる 〜日本刀と行政チートで始める他種族スローライフ〜  作者: 神楽坂 響


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第34話:十二歳児、開拓初日に最初の移住者と出会い、元公務員の本気で温かなセーフティネットを構築する

『エルフの王女にフラれたので、辺境の荒れ地を最強の要塞都市にしてみる 〜日本刀と行政チートで始める他種族スローライフ〜』第34話をお届けします!

「エスペランサ(希望の地)」と命名された不毛の荒れ地で初期インフラ開拓を始めたアラン。その開拓の最中、過酷な差別に追われて行き倒れかけていたウサギ耳の亜人少女・リルとの運命的な出会いが描かれます。前世の公務員として「救えなかった悔恨」を胸に、誰一人排除しない温かなセーフティネットをゼロから構築していく初期開拓編をお楽しみください!

【年齢:12歳(少年期・エスペランサ初期開拓編)】

「よし、地下水脈からの浄化用水路の掘削は、このルートで完璧だな。土壌の酸性度も、魔導石の粉末を適切な割合で中和配合すれば、一週間後には根菜類が育つレベルまで改善できるはずだ」

私は手元に広げた『エスペランサ第一期土壌改良および水利計画書』に特製の万年筆を走らせ、シャキシャキと小気味よい音を立てながら最終確認を行った。

周囲には、ゴゴゴゴ……と地響きを立てながら魔導クワを振るうガロウ師匠の豪快な作業音が響いている。師匠が外周の魔物や害獣をまとめて吹き飛ばし、私がその内側で緻密なインフラの設計と魔導回路の敷設を行う。この分業体制は、想像を絶するほどの爆速で荒れ地の環境を塗り替えていった。

地平線の向こうまで茶色く乾ききっていた荒野のあちこちに、今や清らかな水が流れる用水路が走り、仮設の魔導防壁がうっすらとした青白い光のドームを形成しつつある。

まさに「ゼロからの国家・都市デザイン」。前世の行政官としての血と、すべての他種族を愛するオタク的熱量が最高のシナジーを生み出し、私の胸の高鳴りは最高潮に達していた。

(――ふふふ、順調すぎる。この調子なら、予定よりも早く最初の居住区画が完成し、モフモフ系……もとい、他種族の移住者を受け入れるインフラが整うぞ!)

心の中で満面の笑みを浮かべながら、私は次の区画の測量へ向かおうと、愛用の『霊刀・虚空』の柄に手をかけた。その時だった。

「――おい、アラン。防壁の外側の境界線付近に、何か変な影が転がってるぞ。……人間か、あるいは小動物の亜人か……かなり衰弱している様子だ」

少し離れた岩の上から周囲を見渡していたガロウが、ピクリと狼の耳を立て、低く声を張り上げた。

私の脳内ネットワークは、一瞬にして最高レベルの警戒態勢へと切り替えた。

「魔物ではありませんね? 人間、あるいは亜人……?」

「あぁ、少なくとも戦闘態勢じゃねぇ。だが、この荒野のど真ん中で行き倒れかけてやがる。息がかなり浅いな」

私は即座に作業の手を止め、全属性同時圧縮エンチャントの出力を探知用に微弱展開しながら、ガロウが指し示す防壁の外縁へと全速力で駆け出した。

そこに倒れていたのは――小さな、あまりにもか弱い影だった。

灰色のふさふさとした長い耳を持ち、ボロボロの衣服を纏った、ウサギ系の亜人の少女だった。年齢は十代前半くらいだろうか。しかし、その全身は過酷な旅路と飢えによって泥まみれになり、手足には人間たちから受けたであろう鞭の跡や、不当な扱いの生々しい傷痕が痛々しく刻まれていた。

「……っ……!」

私は思わず足を止め、前世の記憶が脳裏のスクリーンにフラッシュバックした。

前世の相原湊だった頃。公的な支援からこぼれ落ちていく人たちを私は何人も見てきた。

助けを求める声を、予算の枠組みや制度の壁を理由に、申し訳なく断らざるを得なかった絶望の数々。

(――あの時の無力感が、私の胸を激しく締め付ける。だが、ここは違う。ここは、私が創り上げる『エスペランサ』の土地だ。誰一人として排除されず、誰もが笑顔で生きられる場所と決めたはずだ……!)

私は一瞬で感情の波を鎮め、外見上の「完璧な紳士のペルソナ」を起動させると同時に、内面では全リソースをその少女の救命へと全振りした。

「ガロウ師匠、すぐに仮設診療所のテントへ温かいスープと毛布を準備してください。魔力医療の応急処置を行います」

「おう、任せな!」

ガロウは私のただならぬ気迫と、そこに込められた底知れない優しさを感じ取り、一瞬で少女を軽々と抱きかかえて拠点の中央へと走り出した。

私は少女の傍らに膝をつき、震える小さな手をそっと包み込んだ。

「……大丈夫です。もう安心してください。ここは、あなたが傷つけられる場所ではありません」

私の静かで包容力のある声に反応したのか、少女はゆっくりと重たげな瞼を開けた。

その潤んだ赤い瞳が、私の顔をぼんやりと捉える。しかし、彼女の脳裏には人間たちから受けてきた恐怖の記憶が染みついていたのだろう。私の姿を認めると、少女は恐怖に震えながら、か細い声で掠れた言葉を絞り出した。

「ひっ……人間……? お願いです……殴らないで……お金なんて、もう何も持ってない……っ……!」

その痛ましい姿に、私の脳内のオタク的保護欲と、元・公務員の徹底したセーフティネット構築への狂気が、マッハの速度で融合して爆発した。

(――っ……! なんて健気で、なんて守るべき尊い存在なんだ……! こんな小さな子を傷つける人間は、今すぐ私の『虚空一閃』でまとめて社会的に、かつ物理的に地獄の底へ叩き落としてやりたい……! だが、今は何よりもこの子の恐怖を取り除くことが先決だ!)

私は表情筋をミリ単位でコントロールし、これ以上ないほど温かく、太陽のような柔らかな微笑みを浮かべてみせた。

「怖がらなくていいですよ。私はこの土地の領主――アラン・クロフォードです。あなたを傷つける者は、私の剣が絶対に許しませんから」

そう言いながら、私はポケットから取り出した、特製の栄養剤とハーブを混ぜた温かな魔法薬を、スプーンですくって彼女の乾いた唇にそっと近づけた。

「まずは、これを少しだけ口に含んでください。温かいスープもすぐに用意します」

少女――のちに「リル」と名乗るそのウサギ耳の亜人は、私の優しさに戸惑いながらも、その言葉に嘘がないことを本能で察したのだろう。トクトクと涙を零しながら、恐る恐るその魔法薬を口にした。

「……あたたかい……人間なのに……どうして……?」

「人間だからではありません。あなたは生きている。それだけで、このエスペランサにおいては十分に歓迎されるべき住民の一人です」

私がそう微笑むと、リルはさらに大粒の涙をボロボロとこぼし、私の衣服の袖をぎゅっと力強く握りしめた。

「私……ここで、生きててもいいんですか……? 追い出されたり、奴隷にされたりしない……?」

「もちろんです。このエスペランサには、あなたを不当に縛る法律も、偏見に満ちた身分制度もありません。誰もが自分の意志で働き、自分の誇りを持って暮らせる街にします。ですから、もう泣かなくていいんですよ」

私のその言葉を聞いた瞬間、リルは堰を切ったように声を上げて泣きじゃくった。

これまでどれほどの恐怖と孤独に耐えてきたのだろう。その小さな体が震えながらも、私の温もりを求めてすがりついてくる。

私はその背中にそっと手を添え、優しく撫で続けながら、心の中で固く誓った。

(――見ているか、前世の私よ。あの時救えなかった命を、私は今、この世界で少しずつ救い上げている。この子をはじめ、世界中で居場所を失ったすべての他種族たちが、胸を張って『ここに生きていてよかった』と言える楽園を、私は絶対に完成させてみせる)

それから数日後。

エスペランサの仮設住宅でしっかりと栄養と休息を取り、見違えるように元気を取り戻したリルは、この土地のあちこちをウサギ耳をピコピコと揺らしながらトテトテと歩き回っていた。

彼女が初めて見せた、太陽のような満面の笑み。

「アラン様! 用水路の周りに、きれいな花が咲いてました!」

その無邪気な声を聞いたとき、ガロウは腕を組んで満足そうに頷き、私もまた、これ以上ないほどの達成感と幸福感に包まれていた。

エスペランサは、ただの要塞都市ではない。

それは、傷ついた魂が癒やされ、すべての他種族が手を取り合う「本当の希望の地」としての第一歩を、確実に踏み出したのだった。

第34話をお読みいただき、ありがとうございます!

「エスペランサ」と命名された荒れ地の初期開拓が進む中、最初の移住者となるウサギ耳の亜人少女・リルとの感動的な出会いをお届けしました。

前世の役所で抱えていた「救えなかった悔恨」を乗り越え、この世界で誰一人排除しない温かなセーフティネットと居場所を創り上げていくアランの姿や、リルの涙が笑顔に変わる瞬間を楽しんでいただけたなら幸いです。

次話(第35話)からも、エスペランサにやってくるさらなる移住者たちとの心温まるふれあいや、領地が少しずつ「希望の楽園」へと姿を変えていく丁寧な開拓ストーリーをじっくりとお届けしていきます!

引き続き、アランの行政チートと優しさに満ちたエスペランサ開拓記をどうぞよろしくお願いいたします!

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