79 奪われたものがあるようです
このような話を聞いたところで、推理が進展することはない。
ボニボニの反発をくらうだろうことは分ったうえで、質問してみた。
「レイミの交友関係というか、個人的な繋がり。こっちの方面はいかがです?」
事件発生からまだ数時間しかたっていない。
そこまで警察の捜査が進んでいるとは思えなかったが、タァーレルから視点を外す方向性も提示しておきたかった。
案の定、ボニボニの顔が険しくなった。
言われなくても分っているが、まだこれからだと、妙に胸を反らせた。
そして、思いがけないことを言った。
「奪われたものがあるようです」
「ほう」
「被害者は立派なネックレスを身に着けていたようです」
「ネックレス?」
「そうです。分科会の参加者が証言しています。イコマさんは覚えておられませんか?」
完全な嫌味を言われてしまった。
全く記憶にない。
同じ列に並んで座っていたので……、などとつまらない言い訳が口から出かかったが、スゥが救ってくれた。
「ああ、あれですね。緑色の大きな石が盛大に連なった」
ボニボニが小さく鼻を鳴らして、「そうです」と言った。
「なくなっていたと」
「そのようです」
ボニボニとの立ち話はここで終了。
また何か進展があれば相談に伺います、という言葉を残して帰っていった。
疲れ果てていた。
とんだお誕生日会になってしまった。
早々に寝ることにしたのだが、部屋を出たチョットマが、少し先の自分の洞穴には戻らなかったことをイコマは見ていた。
サキュバスの庭の入り口に向かったのだ。
あるいはボニボニを追っていったのか……。




