77 動機は十分にあると思います
ボニボニは言った。
「なんでも、ニューキーツの街に起きた数々の難事件を解決されたとか」
「いやいや、それは」
そんなこともあったが、さすがに名探偵は言い過ぎだ。
アヤも脇腹をつつき、
「お父さん、ニューキーツの分だけじゃなくて、六百年前のいろんな事件のことも話したら?」と、笑った。
「いや、あれはやな」
ほとんどユウの手柄、と言おうとしたが、ボニボニが手を差し出してきた。
「よろしくお願いします」
「はあ。まあ、こちらこそ」
ということで、ボニボニが加わって一気に狭苦しくなった部屋で、いわゆる捜査会議、ユウに言わせれば推理合戦の最初の第一歩を展開したのだった。
ボニボニの話はこうだった。
分科会でレイミにコテンパンにやられ、自尊心さえ傷つけられたタァーレルが自身の名誉を掛けて、レイミを亡き者にした。
「動機は十分にあると思いますが、いかがでしょう」
ボニボニは半身に構え、巨眼を細めて、聞いてきた。
イコマがどんな反応をし、どんな意見を吐くか、見てやろうという態度に見えなくもない。
蛙の目には冷たいものが見えるだけ。
イコマは幾分むっとしたが、だからと言って、今、これ以外に思い当たることはなにもない。
「タァーレルはどう言ってるんです?」
それが、とボニボニは言葉を濁した。
「言っていただかないと、協力のしようがないですね」
イコマは幾分この蛙署長が嫌いになっていた。
面識はあるし挨拶程度はするが、これまで話したことなどない。
そして、生理的にも感情的にも、こいつとはうまくやっていけそうにない、という気がし始めていた。
蛙の巨大な頭部には、警察官の被る帽子が乗っかっていたが、ずり落ちないように無理やり被っているせいで、いびつに変形している。
そこからかすかな生臭ささえ発散されているような気がし始めていた。




