73 避難地は
「ここしかないだろ」
ささくれだった倒木に座ったンドペキが、傍らに葉を広げているシダを弄びながら言った。
調査の結果、避難フロア・ユーペリオンは当分の間、十分に生活できる空間であることは分った。
少なくとも現時点では。
「選択肢はない、と思う。ユーペリオンしか」
ただ、不安の種もある。
地球から避難した時、同行しなかった者が少し上の層で死に絶えていることだった。
パリサイドへの旅はほんのひと月だったが、地球時間では推定で三年が経過しており、推測では約三百人、多く見積もれば五百人のニューキーツ市民がその間に息を引き取っている。
一人残らず。
その原因は、極大太陽フレアがもたらす有害な宇宙線や大量の熱が原因だったのか、はたまた地上に今なお徘徊する殺傷マシンによるものか、分っていない。
保管されていた物資が大量に手付かずであったことからすると、地下に増殖した未知の細菌などによる大量感染死、という可能性も捨てられなかった。
いずれにしろ、その原因を解明しなくては、おちおちここに腰を落ち着けて、というわけにはいかぬ、という危惧もあるのだ。
調査はまだ満足のいく進捗を見せていない。
殺傷マシンがここまで到達したという証拠は見つからなかった。
人を死に至らしめる細菌が大量増殖したという痕跡も見つからない。
まさか集団自殺、という考えも出されたが、結論は太陽フレアによる環境の悪化が原因であるという結論にはなった。
しかし、確証がない。
「他に行く処がないんだから」
生き残り、宇宙線スミヨシに乗船した他の街の市民の証言や、当時、地球を上空から眺めたパリサイドの証言、そして各地に派遣された「メダカシップ」が持ち帰ったデータを総合しても、今なお地上に住める場所はない。
そして、もう一つ、明白になった事実。
このような事態に備えた地下避難施設は、ニューキーツ以外の街にもあった。
ただ、ニューキーツのものが圧倒的に広く、また気候的にも快適。物資の貯蔵も申し分ない。水のふんだんにあり、かつ海に面しているという地の利。
もちろん、地球の軌道上にたくさん浮かんでいた生産基地は、太陽フレアの直撃により、すべて崩壊している。




