72 メダカシップ
翌朝、局長級拡大会議に参加するため、イコマ達はスミヨシファームへ急いでいた。
十人乗りのシャトルで向かう。
「メダカシップ」と呼ばれる、元々は、宇宙船スミヨシの船外活動用の小型機。
依然として海底深くにその巨体を沈めたままの宇宙船スミヨシとユーペリオンを結ぶために、二十艘ほどが就航している。
宇宙船スミヨシ自体は、ファームとしての機能を担うことになって、沿岸近くの海丘に停泊位置を移動している。
「今日の議題はあれだな」
ユーペリオンへの移住は、正式には未だ「調査」段階にある。
人類がこの先、どこに住まいするか、という課題に向けて、まずは手近で、なおかつ多くの市民が住み慣れたニューキーツの地下を選んだということなのだ。
メダカシップは音もなく深海に落ちていく。
窓はない。
あったところで、深さ百メートルでは真っ暗なだけで何も見えやしない。
イコマは木々の間から差し込む淡い陽の光に目を細めた。
木漏れ陽が苔むした地面に落ちている。
しっとりとした匂いが立ち昇ってくる。
スミヨシファームまでほんの三十分ほどだが、その間、メダカシップでは好きな空間を現出させることができる。
宇宙船スミヨシにあったオペラ座のような大掛かりなものではないし、ちょっとした景観を作り出すだけの稚拙なものだ。
レイチェルはエネルギーの無駄遣いだと言ったそうだが、船長のキョー・マチボリーがこの機能を活用することにこだわったらしい。
それくらいのサービス、してもいいじゃないかと。




