70 悲しみが湧いてこない……
遅れて参加してきた元東部方面攻撃隊の隊員達が、シェルタに散っても、不審人物の行方は掴めない。
明かりも増強され、シェルタ内はずいぶんと明るくなった。あちらこちらで、白い光が闇を切り裂いている。
チョットマは割り当てられたエリアの洞穴を順番に見ていった。
見つけようという気持ちがないからだめなんだ、とは言ったものの、さすがに成果の見えない捜索ではないかと思えてきた。
もし不審人物がパリサイドだったとしても、水系に飛び込んでしまわれていたら、お手上げ。
それに、粉末状の身体になって、どこかから抜け出してしまっているかもしれない。
しかし、ここにパリサイドがいるとしたら元アギの可能性が高い。
だとすれば、そんな術を既に習得できているのか、怪しい。
だから、まだどこかに潜んでいるはず。
ただ、悔しいかな、探すべき穴倉は無数にある。
いつしかチョットマは、血眼になって探すというより、意識は別のところに向かっていった。
レイミ。
いったいどうしたというんだろ。
タァーレルをアンドロだからといって、罵倒した?
挙句の果てに殺されてしまって。
彼女の死顔。
人の死顔は今までも見たことはある。しかも血まみれになった顔を。
でも、あんな暗い表情の顔は見たことがない。
頬はこけ、目の下にはっきりわかる隈を作って。
どんな思いで死んだのかしら。
苦痛に歪んでいたわけではない。むしろ驚きの表情?
目を閉じているからよくわからなかったけど、諦めの表情?
なんか、そんな顔……。
私、今、悲しい?
友達だと思っていた人が殺されて。
でも……。
悲しみが湧いてこない……。
自分のミスでたくさんの隊員を死なせてしまった時には、あんなに悲しくて、申し訳なくて、そして悔しかったけど。
パリサイドだったスミソの腕に隠してもらって、泣いてばかりいたけど……。
友達とはいっても、親しくはしているけれど、それほどでも、ってことだったのかしら。
日が経てば涙を零す日が来るのかな……。
それとも、攻撃隊の隊員達とは基本的なところで、繋がりの強さみたいなものが違うってことかしら……。
それとも……。
でも、私の心の中にひとつ、大きな塊はある。
レイミを殺した奴を絶対に捕まえてやる、ということ。
そうか。
悲しみを感じないのは、きっと、私の胸に怒りが渦巻いているからなんだ。
でも、なぜ、レイミはあんなことをタァーレルに言ったんだろう。
それって、本心?
信じられないんだけど。
それともタァーレルに個人的な恨みでもあった?
ヘルシードの常連さんとホステス、踊り子……。
お店でなにか……。
そういうこと?
わからない。
でも、きっと、そういうことなんだろうな。




