57 ホームズの時代に逆戻りってこと
「解決できるかな」
「さあ。あやふやな解決は困るな」
コリネルスの立場ではそうだろう。裁かねばならない。
「科学的捜査なんてできるはずもないし」
かつて地球では、マトやメルキト、アンドロの行動はすべて監視されていた。
GPSを切っていたとしても、その行動はすべて政府に筒抜け。
記録に残る。
殺人を犯せば、たちどころに割り出され、厳しい罰を受けた。犯人探しなど、必要なかったのだ。
パリサイドの社会ではどうだったのだろう。
昔ながらのDNA検知や指紋照合などが行われていたのだろうか。
そうだとしても、このユーペリオンにそれらの機器は持ち込まれているのだろうか。
宇宙船のスミヨシにはあるはずだが。
あるいは資材庫に?
「きっとできないんだろう。聞いたことがない。血液反応を見るくらいのものはあるんだろうが」
「じゃ、昔ながらのやり方だな。ホームズの時代に逆戻りってことだ」
「ローテク。探偵の出番だ」
探偵の出番。
コリネルスにそれを示唆されたような気がして、イコマはげんなりした。
確かにこれまで、ニューキーツで、サントノーレで、宇宙船スミヨシの中で、推理は披露してきた。
しかしそれは好き好んで、ということではない。
すべてが、チョットマのため、だった。
ふう!
ようやく警察官がひとり来て告げた。
「お待たせをいたしました。イコマさん、署長がお呼びです」
立ち上がると、コリネルスが、
「さっさと終わらせてくれ。ボニボニにそう言っておいてくれ」
と、疲労を滲ませて微笑んだ。
「あ、ユウさんは後ほど」
立ち上がりかけたユウを警察官はやんわりと押し留める。
一人ずつ、ということ。
警察官は、アヤにはやさしく微笑んだ。
久しぶりにイコマはアヤと手を繋いだ。




