55 血で濡れているのか
「まず、市民局職員レイミが発見された地点、皆さんが今、立っておられる、ずばり、その場所です」
ハッとして、多くの者が目を剥いて地面を見つめた。
濡れていた。
地下水系の水がここまで跳ねているのだろうか。
「死体はすでに警察署の方へ運んであります」
イコマも地面を凝視した。
水で濡れているのか、血で濡れているのか。
暗くてよく分らない。
血の臭いはない。
「殺害現場かどうか。いずれにしろ、この場所以外に血液反応はありませんでした」
それほど遠方まで証拠収集したわけではないが、と言う。
「たまたま、ここでよろしくやろうとやってきたカップルが人が倒れているのを発見し、通報してきました。私たちが駆け付けた時にはすでに死んでいました」
「発見時には?」
「後ほど、個別に事情を聴かせていただきます。ご質問はその時にお願いします」
ボニボニは自分が語る内容を聞いて、各人がどんな反応をみせるか、見ているのだ。
「被害者はあおむけに倒れていました。ナイフを胸の真ん中に突き立てて」
ゴーダがヒュッと音をたてて息を吸い込んだ。
「これです」
ボニボニが足元に置いたカバンからビニール袋を取り出した。
血の付いたナイフ。
かなり大ぶりなもので、万能タイプの包丁のようだ。
「珍しいものではない。資材庫にたくさん備蓄されているし、皆さんもよく見かけられるものでしょう」
ボニボニはそのナイフの柄を袋越しに掴んで、刃を下に向けた。
「柄のところまで、深々と突き刺さっていました」
誰かが溜息をつくのが聞こえた。
「被害者には争ったような跡は見られませんでした。目を見開いてはいましたが」




