53 警察の事情聴収を受けることになるとは
この地下に移り住んで二年。
レイチェルが急きょ構築した社会構造はそれなりに機能している。
しかし、実現できていないことも多い。選挙もそうだし、民間企業の育成もままならない状態だ。
実に、法でさえ、まだ無いに等しい。
地球人類がアンドロに頼って怠惰に暮らした数百年のつけが、いたるところに現れているのだった。
現在、政府の基幹部はパリサイドが占めているといっても過言ではない。
彼らが地球人類よりはるかに高度な技術を有していたからではない。
あの高度で強靭な肉体を持ちながら、それでいて、本来人類が有していた文化といえるものを、より高いレベルで維持していたからである。
長官はレイチェルだし、人口の八割以上を地球人類が占める。
しかし今、ユーペリオンの社会は、いわば、パリサイドの社会に地球人類が取り込まれたようなものともいえる。
マトやメルキト、そしてアギからパリサイドの身体を経て再び人の身体を得た者、そしてアンドロで構成される地球人類。
彼らのほとんどは、必然的に、いわば社会構造の中・底辺を占めている。
職場というものがほとんどない中、多くの市民が政府に何らかの職を得ているが、幹部クラスはパリサイド。そんな例が多い。
レイチェルもそのバランスに苦労したことだろう。
基本的なルールあるいはレイチェルが発令した指示はあっても、熟成した社会ではない。
行動の指針というべき法さえない。
争いも多い。
揉め事も多い。
それをコリネルスひとりが、なんの法的裏付けもないまま裁いている。
心労も多かろう。
「裁き役の僕が、警察の事情聴収を受けることになるとはね」
なるほど、そういうことになる。
「一年で交代ということになっていたんだがな」
確かに、宇宙船スミヨシで当初、レイチェルが決めた政府幹部各人の役割は、暫定的なものだった。
かつ、一年間という任期付きのはずだった。
しかし実際は、違う。
担い手不足が否めない。
ほとんどの者は、そのまま任を継続している。
今回の選挙がうまく実施されれば、そういった政府の構成も流動化するのだろう。




