48 ふうん セレブって?
想像していたより、はるかにスマートにボニボニに手を引かれ、ホール中央に滑り出していった。
「粗相のないようにな!」と、イエロータドの声が轟く。
「ふん! 悔しかったらお前も誘ってみたらどうだ!」
「呑み助どもの酒や摘まむモノを作らなくていいってんなら、な!」
ボニボニの手は冷たく、少し湿っていた。
「あれ、チョットマ、上手だな。踊ったことなんか、ないんじゃないのか?」
「へへ、そうでもないよ。失礼ね!」
くるりと回されながら、チョットマは思った。
宇宙船スミヨシのオペラ座。
マスカレード。
プリブと踊った仮面舞踏会……。
ボロを着たあの男、あれはプリブだった。
そう信じている。
そのとき、プリブだとは知らず、その男性に自分は恋をしたんだということも。
「ボニボニ署長こそ、とてもお上手ですね」
チョットマはプリブを頭から追い出し、目の前の男性とのダンスに集中しようとした。
「ボニボニと呼んでくれ」
「はい」
近くで見ると、ますますその異相に驚かされる。
唇のない、左右に大きく裂けた口。飛び出さんばかりの巨大な目玉。
毛髪は一本もなく、どことなく緑がかった頭皮。異様に長い腕と脚。
手の平に水掻きはついてないわね、とチョットマはこそっと笑った。
見ると、シルバックとジルも、ダンスに誘われたようだ。それなりに上手だ。
そろそろ、いろいろな呪縛から放たれて、自分らしく生きなくちゃ、とチョットマは思う。
ライラがいたならきっとそう言うだろう。
「これでも昔は、セレブだったんでね」
「ふうん。セレブって?」
「自分で言うのもおかしいが、まあまあのお金持ちだったってこと。まだマトになる前のことだけど」
そんな人がなぜ神の国巡礼教団に従って、宇宙に飛び出していったのだろう。
でも、聞かずにおこう。
きっとボニボニにとって、宗教に嵌った理由なんて、うれしくない話題。
宗教とは関係なく、別の理由であっても、それはそれで秘密にしたいことだろうから。
一曲が終わった。
すぐにミフューが次の曲を歌い始める。
「もう一曲、いいかい?」
「もちろんよ」




