49 君の手を離したくないがね
巨大なカエルのダンスは滅法上手かった。
次の曲はスローなテンポ。
二人の身体の密着度が高まる。
表情の乏しいパートナーの顔を見ながら、それでもチョットマは楽しいとさえ感じた。
と、ボニボニの足が止まった。
真正面、しかも至近距離から見つめられて、慌てた。
思わず腕を解こうとすると、案外あっさり離してくれる。
そしてその手を、違う違う、というように振った。
「なによ。どうしたの」
ボニボニがまた手を振って、目を宙に泳がせた。
あ、そういうことか。
いきなり妙な告白でもされるのかと思ったが、それは勘違い。
警察署長として誰かと通信しているのだ。頭蓋に埋め込んだチップに緊急の連絡でも入ったのだろう。
カエルは発声しないで口を動かしている。
やはりそうだ。
悪いことをした。
ボニボニと二人でホール中央に突っ立ったまま、互いを見つめあっている。
周囲にはそう見えただろう。
「おまえ達! そこで何している! 邪魔だ邪魔! 違法行為だ! マナー違反、規則破りだ!」
わめきだすイエロータドに、チョットマはボニボニに代わって、
「しっ。お仕事中!」と叫び返してやった。
チョットマを捉えるボニボニの目に、力が籠った。
「残念だ。緊急連絡が入った」
「みたいね」
「レイチェルのシェルタ付近でパリサイドが二人。発見された」
「えっ、パリサイド?」
「とにかく、行ってくる。君の手を離したくないがね」
ボニボニが去って、敵役を失ったイエロータドがつまらなそうに肩をすくめたのだった。




