46 きれいごとの話題や、よいしょのトークだけでは
ロームスの話題など、今は似合わない。
イエロータドにとってめでたい一周年記念なのだ。
ジルのそのかわいい唇からは、人が好んで触れたくはない、そんな話題が次々に飛び出してくる。
イエロータドがホステスとして誘っているわけは、こういう面があるからかもしれない。
きれいごとの話題や、よいしょのトークだけでは、バーはつまらないのだ。
「あの星域で消滅したんじゃないの?」
「そう言われてるよ。でもさ、私たちの身体に入り込んだ白い霧は死滅してないんじゃない?」
二人で、あの古代生命体の話題を蒸し返している。
チョットマもそれにやられた口である。
病理的に言えば、完治したということになっている。
つまり、奴らは意識をコントロールすることを諦め、出ていったことになっている。
「それにさ、あの星域以外にも生息していたら?」
「霧みたいなやつだからね。宇宙船スミヨシに隠れてたって、誰も気づかないかもね」
二人は声を潜めているわけではない。屈託なく、言い合っている。
チョットマの意識にロームスが一時的にも入り込んだことは、隊員なら誰もが知っている。
ンドペキやスミソ、そしてアヤに入り込んだことも。
ジルもシルバックも、もう大丈夫だと信じているのだ。
しかし、果たして「完治」したと言えるのだろうか。
チョットマは疑問に思うことがある。
あれから一度たりとも、声を聞いたことはないし、自分の意識が不自然な動きを見せたこともない。
しかし、奴がこの身体から出ていったという証拠は?
ンドペキやスミソはどうなのだろう。アヤちゃんは?
聞いてみたことはないが、もしかすると、人知れず悩んでいたりするのだろうか。
「それって、誰から聞いた話?」
シルバックがジルに話の続きを促している。
別の話題に移っていた。




