45 溶けていく時間
バーの中を見回した。
それなりに混雑してきて、さんざめいている。
見知らぬ顔も多い。
隆とした御仁もあれば、陰気な顔の者もいる。
シュッとした美男美女もいるが、どちらかというと異形の顔を持つ者の方が多い。
一つ目のミフューや蛙顔のボニボニ始め、タスマニアンデビルそっくりのアニマルフェイス、顔の左右がどこから見てもアンバランスな者、凍り付いたように表情を変えない者……。
白銀の髪を持つ集団や小人の集団。
肌の色も様々。
その中を巨漢イエロータドが動き回っている。
こういう雰囲気が好きだった。
いろいろな人が混じり合ってそれぞれに楽しみ、バーのホール全体にエネルギーが満ち溢れている瞬間。
熱を帯びた空気が徐々に溶けていっては、また熱くなっていくような大きな波長の時間。
レイミの声も聞こえてくる。
地球の思い出話。
六百年以上前、まだマトになる前に南の島で過ごしたバカンスでの出来事。
タイのサムイ島は、欧米人に人気のリゾートでね。長期滞在が一般的だったんだけど、私も半年は一歩も島から出なかったわ……。
たくさん恋もしたけど、みんな忘れちゃった……。
聞き役は武闘派を誇示しているかのようなスキンヘッドの男たち。
イペはキャンティとゴーダら相手に静かに話し込んでいるが、どことなく浮かない顔。
本当にパパも来ればいいのにな。
と、ボニボニと目が合った。
目を合わせたまま、ボニボニが立ち上がった。
ジルが話題を転換してくれる。
攻撃隊の女の子だけができる話題は中断。
ボニボニが加わった。
「小耳に挟んだんだけど、あのロームスの意識、まだ体内に持っている人がいるみたいね」
さすがはジル。
そんな重い話題を平気で出してくる。
ボニボニの眉間に一瞬、皺を寄せたが、ジルは意にも介さない。
シルバックも、
「そんな湿っぽい話、ここでする? パーティなのよ」
と言いつつも、やめさせようとしないばかりか、うんうんと頷いている。




