41 政略結婚じゃないか
イッジと初めて会ったのは、パリサイドの市長アイーナの部屋。
完全に無視されたのだったが。
アイーナの娘で、パリサイドの社会では警察庁長官の肩書を持っていた。
どこにでもいるような、まあまあのかわいい系美人だが崩れた印象も受けた。
チョットマよりいくらか若いように見えるが眼つきが鋭い。
数日前、話したことがある。
いつものようにきれいにセットしたブロンズの髪に触れながら、オレンジ色の服が好きだと言っていた。
充実した毎日だと胸を張っていた。
少し近寄りがたい雰囲気を持つ人だと感じている。
かつては、がむしゃらに見える性格もあってのことだろうと思っていたし、パリサイドの市長であった母親の威光に負けまいと頑張っているからだとも思っていた。
当時の警察庁長官という危険を伴う重責が彼女をそうさせているのか、とも思っていた。
しかし、それは違っていたようで、生産局長となった今も、雰囲気は変わらない。
性格的なことはさておき、今も彼女が厳しさを纏っている理由。
母親のアイーナが、どんな理由があるにせよ、ひとりベータディメンジョンに居残って帰って来なかったことが多分に影響しているのだろう。
かつて、口にこそ出さなかったが、「パキトポークって誰よ」と、イッジの目が問うていたことを覚えている。
「あくまで噂、なんだけど、政略結婚じゃないかって」
「はあ? なにそれ?」
「つまりさ、食料局トップと生産局トップの結婚よ。いわば市民が必要なすべての物資を、夫婦で握ることができるわけよ」
「なるほど。まあね」
「莫大な利権が転がり込む、とか」




