37 ちょっとまずいんじゃないの
イペの言うとおりだった。
人が再生され続け、生殖を必要としなくなって、というより、激しい人口減がマトという人造人間を生み出したのだから、男女が恋すること自体、珍しいことになっていたのだ。
何百年も。
それが、にわかに復活している。
まるで、得も言われぬ甘い香りのする桃色の雲の中に放り込まれたように。
実際、赤ん坊が生まれたという噂さえある。
「きっかけ、何だったんだろうね」
チョットマは考えてみる。
自分は、ごく自然にンドペキを好きになった。
しかし、他の人にとっては、誰かが誰かを好きになる、男女が惹かれ合うという当たり前のことを、完全に忘れていたのだ。
アンドロがそんな感情を欲したから?
タールツーの反乱はそれが元になったものだったから?
パリサイドが現れたから?
違う。
パリサイドとて、地球人類と同じようなものだったはず。
ンドペキとスゥが結婚したことが知れ渡ったから?
イコマとユウが夫婦だってことが知れ渡ったから?
それはあるかもしれない。
しかし、きっとレイチェルが仕掛け人なのだろう。
大勢の市民の前で、恋人募集中だと声高らかに言ったのだから。
見ると、イペの目が一点に集中していた。
ハハア、さては。
視線の先にはサスケイ。
見つめられていることに気がつかない美男子は、レイミを横に置いて、腰を浮かせ気味にしている。逃げ出したいとでもいうように。
そんなサスケイに構わず、レイミは半身を乗り出して話しかけ、嫣然とした笑みを送り続けている。
胸の谷間もあらわな赤いドレス姿で。
仕事熱心だともとれるが、何となくあけすけというか、相手の気持ちには目もくれないというか、そんな状況。
レイミ。
食料局職員。
バー・ヘリシードではホステス兼ダンサー。
抜群の容姿で男たちを虜にしていると聞く。
チョットマに新たにできた友である。
ちょっとまずいんじゃないの。




