35 ピンクのハートマーク
「おい! お前、どれだけ儲ければ気が済むんだ!」
という声には、
「分かっちゃいないな! 俺はアンドロ。忘れたのか! アンドロは人類のために働くんだ。儲けるなんてこと、これっぽっちも考えちゃいないぞ!」
「しかし、お前がここでそう宣言してしまうと、俺がやるから邪魔するな、って聞こえるぞ」
ガハハハハ!
アホなことをぬかすな!
俺がやらずに、誰がやる!
わずか一万五千という人口で、そんな施設が成り立って儲かるってんなら、やってみろってんだ!
俺は、この今のユーペリオンの空気が心配なんだよ!
このままじゃ、みんな、心が腐っちまうだろ!
チョットマは、イエロータドが正しいと思った。
わずかに生き残った人々が暗闇で暮らしているのだ。
しかも、不自由に。
それぞれが悲しい思いを胸にして。
地球人類、元パリサイド、アンドロといった多様な人々が、まだ互いに牽制しながら暮らしている街なのだ。
陽の当たらない地下の洞窟で。
将来の希望さえ持てないまま。
息が詰まる。
いがみ合っているとは言わないが、まだ融合しきれていない人々の間に、何かが勃発するという気配は、誰もが感じていること。
イエロータドが提案する「娯楽の殿堂」は、早急に必要なのかもしれない。
「お前の言いたいことはわかる。しかし、それはお前がやることなのか?」
と、慎重な意見が出るのも、分かる気がする。
きっとそれは、将来、人口が数十倍になった時、大きなビジネスになることだろう。
しかし、イエロータドの反論はさらりとしたもの。
「言っとくが、俺はレイチェルにも構想を話して、了解を得ているぞ。ほれ!」
と、懐から出した紙をピラピラさせる。
そこには、ピンクのハートが記されてあった。
「証文ってわけか? それが?」
「まあ、そういうなよ。昔、レイチェルが書いてくれたハートマーク。俺は大事にしてるんだ」
イエロータドと客との言い合いは収まりそうにないが、所詮、仲間内でのじゃれ合い。
ミフューが歌い出したのを機に、バーの空気は一気にパーティらしくなった。




