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30 若草の姫君

 あそこには、ニニがいる。

 そしてセオジュンやアンジェリナも。


 今も、あの池の底で、ベータディメンジョンの環境を維持するために、シルベスの装置をコントロールしているのだろうか。


 パキトポークも。

 アイーナも。

 どうしているだろう。


 みんなみんな、大好きな人たち。

 お世話になった人たち。

 元気かな……。



「おい! 独り占めはいかんぞ! 若草の姫君を」

 と、聞き慣れた声がした。


「よっこらしょっと」

 ボニボニが、ゴーダの隣に座った。


「姫君って、私のこと?」

「姫君って面じゃないだろ。このアンドロは」


 ボニボニはそう言って、またあの笑い声をあげた。

 クェ、ケッケッ、ケッケッ。


「それにしても、チョットマ、つまらなそうな顔をしてるな」

「そんなこと、ないよ……」



 実際、そう見えたかもしれない。

 パーティがつまらないというのではない。そもそも、まだ始まってもいない。

 後ろの席から聞こえてくる、キャンティの子供っぽい笑い声に合わせて、レイミが楽しそうに話していることが気に障っているわけでもない。

 ライラやプリブのことを思い出してしまうからでもない。


 なぜ寂しいと感じてしまうのか、自分でもわからなかった。



「なあ、チョットマ」

「なんでしょう」

「一度、ゆっくり話したいことがあるんだが……」


 ボニボニが言い難そうに、小さな声で言う。

 ゴーダ越しに。

 誰からも好かれそうにない容姿を持っているが、それは彼の責任ではない。

 たまたま得た身体が巨大カエル風だったわけだ。



 陰口を言う者もいる。

 重責に似つかわしくないと。


 ボニボニは元上官のイッジに心酔している。それを隠そうとしない。

 今の警察署長という職はイッジから縁故で譲り受けたものだと、半ばやっかみで言う者がいるのだ。


 もちろんチョットマは意に介していない。

 むしろ、面白いおじさん、という感覚で接している。



「いつでもどうぞ。お声を掛けてくださいな」

「お。そう言ってくれるとありがたい」


 ボニボニが、ちらりとゴーダに目をやり、「じゃ、明日の晩」

 と、そこまで言った時だった。

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