27 今夜くらい、休めばいいのに
ヘルシードがエリアREFにあった頃、呪術師ライラに会うために、初めてこういう店に入ったあの夜。
あの夜のことを忘れたことがない。
装備をすべて取り上げられた。ニューキーツの将軍が飲んでいた。聞き耳頭巾の布にライラは何度も触れた。フライングアイのパパと一緒だった……。
そしてライラの部屋に行き、そこで叱られた……。
あの日のヘルシードより、今の店はかなり広い。
どこに座ってもよさそうだが、チョットマにはこだわりがある。
私の席は、ここ。
そして、ソーダ水を飲み、フリーズドされたイチジクを齧る。
「チョットマ! おいでよ!」
レイミがまた誘ってくれる。
後でね、と返しながら、ライラのことを思い出してしまう。
お婆さん……。
ライラは死んだ。
ロームスの襲撃から人類を救うため、三百年後の世界からやってきた女性、だった……。
エーエージーエスのオーエンも、プリブも……。
この店に来ると、どうしてもそれらのことを思い出してしまう。
もう、あれから二年近く経つというのに。
大好きなライラ……。
とても可愛がってくれた。
サキュバスの庭の女帝なんて呼ばれていたけど、未来から来た人だったんだね……。
だから、物知りだったんだ……。
呪術師ライラが使っていた部屋は、エリアREFの深部にあって、この避難フロアから近い。
いわばユーペリオンの入り口に当たる。
地下水系を渡れば目と鼻の先。
でも、ここに来てから行ってみたことはない。
行けないから。
エリアREFは、もちろん地上も、空気中の汚染物質の濃度が髙く、しかも超高温の大気。
特別な用のある者以外、立ち入り禁止となっている。
ライラの部屋に行ってみたい。
時々そう思う。
そこにライラはいない。でも、思い出を探しに……。
フー、とチョットマはカウンターに頬杖をついた。
パパも来ればよかったのに。




