表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/15

メニュー12 喫茶店マスターの正体


今回、宮部のマシンガントークが半分を占めます。若かりし頃の宮部の話がチラッと出ます。宮部のやんちゃな青春時代を笑顔で受け入れてあげてください。


*犯罪すれすれ(?)アウトの描写があります。ご注意ください。








 なんなんだろ………この状況………………?



「貴女の的確かつ容赦の無い攻撃は惚れ惚れするほど美しくはありますがだからといってその美しさですべて許される訳では無いのがこの世の中なのです………いえね? 私個人としては是非とも実来さんにこの愚かで哀れな連続傷害者兼元生者に華麗なる幕引きをお贈りするのを見届けるなんて、なんて素敵なご褒美と思うのですが止めなくてはならないこの苦悩を判って頂きたいとも我が儘にも思う訳でして…………何が言いたいのかというと私は非常に、非常に本当にもう大切なので三回言いますが非常に心苦しく感じておりますが実来さんの苛烈にして優美にして烈火の如くに繰り出されるその行為を一旦、鎮めて欲しいのです…………」



 ………実来の手を包むように長々と説き伏せているのか口説いているのか単に持論を述べているのか解らない言葉の羅列を聞かされる。



 喫茶店 ~彩~ の従業員である男性が変質者幽霊女にトドメを刺そうとする実来を止めたのはつい先ほど。トドメを刺されそうになった幽霊女はどうやってか? 従業員の人が注連縄のような……呪府がところどころに付いた縄で縛り上げてその辺りに転がしていた………。



 幽霊女は、逃げ出すことが出来ないのであろう………呻き声を出しながら必死に縄から抜け出そうとしていた………。



「明らかに死者と解っていても尚怖れず突き進んでいくその胆力。次の被害者を出さない為に確実にトドメを刺すと決めた判断力と行動力。幽霊女あいての事情を一切無視して容赦の無く踏みにじろうとする冷徹さ加減………断罪に一切の躊躇をしないなんて………貴女は本当に私の大親友そっくりです………。流石は、あの人の自慢する妹ですね………」




「─────────え?」



 妹?


 呆然と見上げる実来に、喫茶店の従業員は優しく微笑んだ。



「改めて自己紹介させて戴きます。私の名前は宮部ヨシト。貴女の姉君である手塚実彩の同級生クラスメイトにして親友だった者であり、現在は喫茶店のマスター兼冥府の協力者をしております」


「………………………………………………………」



 よし。まずはツッコミを二、三個を入れさせてもらおう…………か? ん? 宮部?? 宮部ヨシト………………………?



 あ?!



「まさか………昔、お姉ちゃんが言ってた人の話を聞かない言わせないマイペースクソ野郎の疫病神、宮部ヨシト?!」



 実来の脳裏にかつて行方不明になる前の姉・実彩が愚痴っていたクラスメイトの存在を思い出した。



『なぁ、実来。聞いてくれ………。私のクラスにな? 宮部ヨシトっつー下衆ゲス野郎がいるんだよ……。人の話を敢えて聞かなくて然も倫理観やら道徳観やらを屑籠に笑いながら捨てる奴でね? 私が嫌だと言っているのに人を勝手にバックにヤーさんが付いているような不良の抗争を潰しに引きずって行ったり、学校内で密かに付き合っていた教師二人の間に割り込んではそれをPTA役員に秘密裏に流したり、仕返しに来た不良グループを逆に叩きのめして警察に何時調べたのか余罪の情報やら証拠と一緒に引き渡したり、いちゃもん着けて来た中年男の言動を録音した物をその男を雇ってる会社に送りつけたり…………別にね、良いんだよ? それらすべてをアイツが『一人』でやんなら………………なんでそれに私を無理矢理巻き込むんだあの野郎は!! 今日だって『ちょっと人手が足りなさそうなので来てくれますね?』つってドンパチやってる隣町の不良の抗争を参戦させやがりやがった………!! なんでわざわざ割り込むんだよ!? 関係ないんだから首を突っ込むなよ!! お陰でその手の輩に危険人物ブラックリスト認識《入り》される私の身にもなれよ! 中でも一番納得いかないのがあの屑野郎より私の方が狂暴鬼畜凶悪犯《頭のイカレた奴》扱いされんだよ!? おかしいだろ!? んでもって(以下省略)』



 と、実彩《姉》が言うぐらい個性的なクラスメイトの話を延々と聞かされたことが、あった。


 良家のお嬢様雰囲気を漂わせながらも中身は短気な武道派の実彩をなんだかんだ言いつつ連れまわして巻き込んで制裁を受けずに済んでいるある意味珍獣並みの人、その人の名が、確か宮部ヨシト!!



「マイペースクソ野郎の疫病神ですか………。まったくあの人は。親友に対してなんたる言いぐさですか。仮にも実の妹に言うことではありませんよ」



やれやれといった風情で首を振る宮部ヨシト。



「時に若さ故に道を誤ってしまった同い年の方々を一緒に更正するお手伝いをして差し上げたり。教師でありながらも単に気に入らないという理由で冷たい言葉やワザとクラスで孤立するよう誘導するという………人としても社会人としても公人としても褒められない方の目を覚まさして差し上げたり。私達が更正のお手伝いをした方々が御礼をしてくださるという時も共に騒ぎあったというのに…………しかしあまりに騒ぎ過ぎて警察の方にご迷惑を掛けてしまいましたが…………あの時、元不良の方々が私達をその身を呈して守ってくださったので私達は警察のご厄介にならずに済みましたけれど。ああ……それに、私の態度が悪い、と指導をかって出てくださった某会社員の方の御弁舌があまりにも素晴らしかったのでその方の会社に、御礼として是非とも新人教育の一端に貢献いたしたいと会社員の方の言葉を録音したメモリーを感謝文を着けて一緒に渡しに行ったりとしたというのに……………」



 その人達全員社会的には死んでるよね。



 実来は喉元まで上がってきた言葉を呑み込んだ。実彩の言うとおり。この人、倫理観と道徳観を屑籠に捨ててるわ。



「懐かしき青春の日々………。彼女が居なくなってしまった後、私はしばらくの間、立ち直ることが出来ませんでした…………」



 ふと、寂しそうに力無く笑う宮部の姿に実来は息を呑んだ。



「私と、共に居られる方は非常に少ないのです……。貴女のお姉さんは、その数少ない人達の中の一人でした…………。私は、もう一度、彼女にお会いしたい。そんな私は声を掛けてくださった方々がいらっしゃいました───────それが、冥府の役人です」



宮部は静かに実来を見た。



「彼らに出会ったのは偶然でした………しかし私は彼らと出会ったことで親友が何故、行方不明になったのか原因を知ることが出来た…………。私は、その時決意したんです。どんな手を使っても、どんなモノの手を借りでも、必ず、彼女にもう一度会いに行こうと」


「……………」



 宮部という人間にとって、親友の存在はとても大切な者であったのだろう。


 彼の言葉から実彩に対する恋情の類は感じないが、それでも隠しきれない執着の念を強く感じた。



 どこか、自分と似ている。実来はそう思った。



「ですから私は冥府の役人に『誠心誠意』頼み込んで彼女に会える方法を探して頂くことと少しばかりの依頼料を貰うことと引き換えに。この世で表立って動けない彼らに変わって実来さんが惚れ惚れする業で倒した幽霊女のような存在を探したり、『説得』したり、彼らに引き渡したりしているのです」



 『誠心誠意』の言葉が、若干他の意味に聞こえたような気がするけれども…………それでも、宮部が諦めず実彩に会う方法を探していることに驚いた。


 …………実来は、もうどうしようも無いと。実彩を連れて行ってしまった異形の類を憎んで、恨むしかしなかったのに…………。



「─────冥府とやらの人達を手伝って、会えるんですか? 姉に………お姉ちゃんに…………」



 気付けば、そんなことを実来は呟いていた。


 宮部は実来に、穏やかに答える。



「それは分かりません。彼らと私が交わした契約は、確実なものではありませんので………見つからない可能性も、十分にあります」



 それは暗に、見つからない可能性の方が高いということだ。無駄に終わるかもしれないことを………この人はどうして続けられるのか。その答えを、宮部はあっさりと言った。



「決まっているでしょう? 私が、納得出来ないからですよ。親友が居なくなったことも。その彼女と二度と会えないことも。せっかく冥府という何とかなりそうな人達に出会えたんです。利用しない手はないでしょう?」



 まるで悪戯っ子のような笑顔に、思わず実来から笑顔がこぼれた。










何だか良いことぽく言ってますが。宮部は基本、気に入った人(物)に対する執着心が異様に高いヤバい奴です。


そして忘れ去られている幽霊女………。彼女は宮部が縛り付けた縄を必死で解こうと転がっております。彼女が、何故このような凶行に走ったのか……その理由すら語られず放置されるとは……哀れなり。(-_-;)




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ