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時は変わらず、されど舞台は廻る

僕は、少しだけ息を吐いた。


すぐには言葉が見つからない。


けれど、何も返さないのも違う気がした。


「……変かどうかなんて」


ぽつりと、口にする。


「見たやつが勝手に決めることだろ」


少女の肩が、わずかに揺れる。


僕は続ける。


「それで止まるなら、たぶん——どこにも行けない」


強い言い方にならないように、少しだけ声を落とす。


「俺も、そうだったから」


短く、それだけ。


詳しくは言わない。


言えば、別の話になる。


少しの沈黙。


少女は顔を上げる。


布越しの視線が、こちらを探るように向けられる。


「……行けたの?」


小さな声だった。


僕は、少しだけ考えてから答える。


「さあな」


肩をすくめる。


「まだ、途中だ」


間を置く。


「だから歩いてる」


少女は何も言わない。


ただ、石を抱く手の力が、ほんの少しだけ緩む。


「無理にとは言わない」


静かに言う。


「でも——」


僕は視線を、扉の方へ向ける。


森の向こう、そのさらに先へ。


「外は、ちゃんと続いてる」


それだけ告げる。


少女は、その言葉を受け取るように、ゆっくりと息を吸う。


何かを決めるには、まだ足りない。


けれど——


何も変わらないわけでもない、そんな間だった。


風が、わずかに強くなる。


家のどこかで、軋むような音がした。


ほんのわずかに——


部屋の空気が、変わる。


僕はその気配を追うように、ゆっくりと口を開く。


「……つまり」


少しだけ間を置く。


少女の方を見て、


「君は、旅に出たいんだろ」


問いというより、確かめるような言い方だった。


少女はすぐには答えない。


けれど、否定もしなかった。


その沈黙で、十分だった。


僕は小さく頷く。


「なら——準備をしよう」


淡々とした声で言う。


大げさでもなく、特別なことでもないように。


「結果がどうなるかなんて、わからない」


少しだけ肩をすくめる。


「それも含めて、旅の醍醐味だ」


視線を、机や棚へと流す。


この家にある、彼女の時間の積み重ねへ。


「でも」


一拍置く。


「準備を怠るのは、ただの愚か者だ」


きっぱりと言う。


強くはないが、揺れない声音だった。


少女は、わずかに息をのむ。


その言葉の重さを、受け止めるように。


僕は続ける。


「全部捨てる必要はない」


「持っていくものと、置いていくものを選べばいい」


ほんの少しだけ、柔らかくする。


「その手伝いなら、できる」

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