女子18人、オカマ1人、俺1人
翌朝。登校初日のホームルーム。
俺はサポート科1年A組の教室に入った瞬間、己の運命を呪った。
(……ウソだろ)
教室を見回して絶望する。
全20席の教室に集まっているのは、キラキラした制服に身を包んだ女子生徒たち。そして、男子は後方の窓際席に座る俺ただ一人。
男女比、1対19——と思いきや。
「ちょっとぉ〜! 新入生でいきなりそんな死んだ魚の目してる男がいるなんて、学園の将来が思いやられるわねぇ!」
「……は?」
教室の後ろから、朗らかで妙にノリの良い声が飛んできた。
声をかけてきたのは、華やかなメイクに完璧な制服の着こなしをした、スタイル抜群の美少女——いや、よく見ると喉仏がうっすらとあり、声のトーンが独特な人物だった。
「初めましてぇ! アタシは蓮見 薫ちゃんよ! 戸籍は男だけど心は乙女! 美容とスタイリングのスペシャリストを目指してサポート科に入ったの。よろしくね、久瀬ちゃん!」
「……薫ちゃん。あ、どうも、久瀬です……」
「あら、引かないの? 嬉しいわぁ〜! 正直、男子枠がこんなアンニュイイケメンでアタシ大歓喜よ! アタシたちでこの『女子の園』を生き抜きましょうね!」
俺は子役生活のおかげかポーカーフェイスは得意だ。
バシバシと力強く背中を叩かれる。
蓮見薫。見た目は完全に可愛い女の子だが、中身はサバサバしたオネエのオカマちゃんだった。
周りの女子たちも「薫ちゃ〜ん、また始まった〜笑」「男子が入ってきたと思ったら、薫ちゃんの餌食じゃん笑」と笑っている。
(……なるほど。男子1人だけど、実質『女子18、オカマ1、俺1』か)
友達作りは絶望的かと思っていたが、思わぬ形でサバサバした「オカマの親友枠」が爆誕してしまった。
それにしても、もうこんなに暮らすメイトと仲良しなのは素直に尊敬する。おかまパワー恐るべし
「ちょっと、薫。あんたまた変なのと絡んでるの?」
呆れたような声とともにやってきたのは、ショートカットのボーイッシュな少女だった。
「私は鳴海 凪。実家が映像制作会社で、監督を目指してサポート科に入ったの。……久瀬くん、あなたさっきからやる気ゼロに見えるんだけど、なんでサポート科に入ったの?」
開口一番のストレートな質問。目つきと同じく鋭い。
「……いや、別に深い理由はないよ。単位取って静かに卒業できればそれでいいかなーって」
「はあ!? サポート科は今年から一般募集された狭き門なのよ!? そんな適当な気持ちでいられると迷惑だわ!」
「まあまあ凪ちゃん、落ち着きなさ〜い!」
即座にイライラし始めた凪の間に、薫がひらひらと手を振りながら割り込んでくれた。
「久瀬ちゃんは省エネモードなだけよ〜。プロ目指してカリカリするのもいいけど、こういう抜け感のある子もクラスに一人は必要じゃない? ね〜久瀬ちゃん?」
「……助かる、薫ちゃん」
「ふふん、アタシに任せなさい! ランチ奢ってくれたら何でも庇ってあげるわよ!」
凪は「……はぁ、薫がそう言うならいいけど。足を引っ張らないで頂戴ね」捨て台詞を残して自分の席へ戻っていった。怖い。これが意識高い系というやつだろうか。
「ありがと、薫ちゃん。助かったよ」
「いいのよ〜! アタシ、嘘偽りのない素直な子が大好きなの。あんた、変にカッコつけないから気に入ったわ!」
早くも心強すぎる「壁」を手に入れて、俺は少しだけホッとした。




