第三七話
次の日、わたし達は村友茶屋を立ち、都へ向かうことにした。
いつまでも帝を待たせる訳にはいかないしね。
「もう少しゆっくりしていけばいいのに…」
「いえ、十分寄り道しちゃいましたから」
「そっか。辛くなったら無理せず休むんだよ。実質、三人と式神契約しているようなものなんだから」
「わかってます。俊介さん、お世話になりました」
「気をつけてな、嬢ちゃん。遠慮なく埜剛を盾にしてやれよ」
「おいおい…。俺ぁまだ怪我人だぞ」
峨岳は結局、俊介さんに押し切られて怪我が治るまでお世話になるらしい。
帰って来た時にはまた手合わせしようと、埜剛と約束していた。
帝のいる都があるのは『神薙』という島。
神薙に行くには港からまず『火埜』に向かわなければならない。
舟のチケットは埜壬さんが手配してくれた。
また二、三日の船旅なんだよ。
火埜ってどんなところなんだろう。
ちょっとわくわくしてきちゃった。
「それじゃあ行ってきます!」
「気を付けて行ってらっしゃい」
ぶんぶんと手を振って二人と別れる。
途中で八百万屋の前を通ったので、せっかくだから蓮花さんと魅莱さんの二人にもあいさつしていく。
怪我人は何人かいたみたいだけど死者はゼロ。
万々歳ってやつだよね。
トンカツを捕まえられなかったのは、わたしの実力不足。
きれい事を言うためには、それに見合う実力を身につけないと。
まだまだ姫巫女への道は遠そうだわ。
「おお!港が見えてきたでござるな」
「ホントだぁ。なんか大きい船もあるよ」
「早く行くでござるよ」
貨物船かしら、一回りも二回りも大きな船が止まっている。
思わず走り出してしまったわたし達の後ろで、埜剛と埜壬さんのやれやれといった声が聞こえてきた。




