1945年8月5日 樺太防衛戦 その2
この作品はフィクションです、実在の人物や団体などとは関係ありません
◇◇◇
氷壁から滑落するソ連兵
◇◇◇
1945年8月5日、午後1時30分。北緯五十度線北側・日ソ国境氷壁の麓。
戦車砲による力づくの破砕が完全に失敗に終わった直後。
ソ連軍ハンダサ警備要塞の正面には、冬期迷彩用の白い外套を羽織り、革ベルトにアイゼン(氷雪用登山爪)とピッケルを装着した第79狙撃師団の歩兵一個中隊――約百名のソ連兵が集結させられていた。
「登れッ! 命令だ、遅れる者は銃殺にするぞ!!」
政治将校の怒号と拳銃の威嚇に背中を押され、兵士たちは決死の形相で氷の絶壁へと取り付いた。
壁の高さは三十メートル。ビル十階建てに相当する垂直の青白い氷塊の連なりである。
工兵が投げ縄で引っ掛けたワイヤーロープと、氷に打ち込んだハーケン(氷杭)を頼りに、十数名の先遣隊が息を白く吐きながら、ミリ単位でツルツルの氷壁をよじ登っていく。
真夏の陽光が照りつける中、氷の表面からは絶え間なく溶け出した水が滴り落ちていた。
足場の氷が体重でパキリと割れ、滑落した兵士が悲鳴を上げて地上へ叩きつけられる。それでも三十分の血みどろの苦闘の末、約十名の兵士が、幅五十メートルもある氷壁の最上段の平坦地へと辛うじて這い上がった。
「上がったぞ! ロープを垂らせ! 迫撃砲を引き上げろ!」
凍える指でロープを手繰り寄せ、下から担ぎ上げられたのは、赤軍が誇るPM-37 八十二粍迫撃砲二門と、数箱の砲弾であった。
「よし……南側の縁へ前進し、日本軍の陣地へ撃ち込むぞ!」
下士官が号令をかけるが、足を踏み出した瞬間、兵士たちの体がツルリと激しく泳いだ。
最上段の氷の床は、溶け出した水が水深数センチの浅いプールのようになっており、鏡のようにツルツルと滑る極上のアイスバーンと化していたのだ。
何より、三十メートル先にある「南側の縁」――日本軍が小銃を構えて待ち構えているはずの崖の向こうへ近づこうものなら、身を隠す遮蔽物が何一つない氷の上で、格好の標的にされて撃ち倒されることは火を見るより明らかであった。
「縁まで行けません! 滑って近づけないし、顔を出せば即座に狙撃されます!」
「クソッ、それならここからだ! 射角を高く取れ! 勘でいい、南の平原へ向けて一発ぶち込めッ!!」
下士官の怒声を受け、二人の砲手が震える手で八十二ミリ迫撃砲を氷の上に据え付けた。
底板を氷に密着させ、砲弾を砲口へ落とし込む。
スコンッ――ボシュゥッ!!
甲高い発射音とともに、砲弾が南の空へ向けて飛び出した。
だが、その直後であった。
ズシャアァァァァッッ!!
迫撃砲が地面へ叩きつけた猛烈な発射反動。
土や泥の大地ならば衝撃を吸収してくれるはずの反動が、摩擦係数ゼロに近い濡れた氷の上で逃げ場を失ったのだ。
ベースプレートが氷の表面をスケート靴のように滑走。砲身と脚架は激しいスピンを伴って後方――すなわち北側の崖(ソ連側)へ向けて猛スピードで滑り出した。
「うわっ!? あ、危ないッ! 止まれ、止ま――」
砲手が手を伸ばす間もなく、数十キロの鉄の塊と化した迫撃砲は、そのまま北側の縁からツルリと虚空へ飛び出し、30メートル下のソ連軍陣地へと真っ逆さまに落下していった。
ドッガァァァンッ!!
遥か下方のツンドラの泥の中に、激しい金属音を立ててめり込んだ迫撃砲の残骸を見下ろし、氷の上のソ連兵は頭を抱えて絶叫した。
「こんな場所で……こんな滑る氷の上で、作戦などできるわけがあるかッ!! 一体何を考えているんだ、上層部の馬鹿野郎どもはッ!!」
◇◇◇
孔明の罠:氷の上に降り注ぐ悪魔の津波
◇◇◇
迫撃砲の砲弾は、日本軍の古屯主陣地から遥か手前の湿原に落ち、泥飛沫を上げただけであった。
日本側に死傷者は出なかった。
しかし――現代の自室でモニターを睨みつけていた浩平の目には、その着弾の黒煙が危険なシグナルとして映っていた。
「……やっぱり、登ってきたか」
浩平は冷え切った麦茶のグラスを置き、苦い表情で唸った。
「放っておけば、奴らは氷壁の上に何十門もの迫撃砲を並べる。反動対策で木材を敷く知恵くらい、いずれ現場で思いつくだろう。そうなれば、古屯の町や誠一郎たちの陣地へ無差別に榴弾が降り注ぐことになる」
壁を作って進軍を阻めば諦めてくれる――そんな淡い期待は、狂信的な独裁国家の軍隊の前には通用しなかった。
「仕方ない……。少し荒っぽいけど、『水責め作戦』で行くか」
浩平はキーボードを叩き、急造したスクリプトを走らせた。
対象:北緯50度 氷壁最上段エリア
トリガー:ランダムインターバル(60〜300秒)
実行内容:高度+10mより、摂氏1度の清水コンテナ(容量約38トン)を投下・展開
氷壁の真上10メートルの座標に、インベントリ内で注水された20フィートコンテナ分の「摂氏1度 氷点寸前の冷水」を、ランダムな間隔で無警告投下するトラップである。
そして、スクリプトが最初にトリガーされた、まさにその瞬間であった。
ドォォォォォォンッッ!!!!
氷壁の頂上、幅五十メートルの虚空から、突如として数十トンもの巨大な水の固まりが、滝壺のように一気に叩きつけられた。
「な……ッ!?」
氷壁の上で次の迫撃砲を組み立てようとしていた十数名のソ連兵は、逃げる暇すら与えられなかった。
氷点直前の激流が、津波のような質量をもって氷の床を薙ぎ払う。
人間の脚力など、三十トンの水圧の前には枯れ葉同然であった。
「うわああああっ!!」
「助けてくれ、流さ――ッ!!」
悲鳴を上げるソ連兵たちは、弾薬箱や残る迫撃砲ごと、容赦なく氷の縁へと押し流された。
水飛沫とともに、彼らの身体が三十メートルの高空から放り出される。
ある者は北側のソ連軍要塞前の泥炭地へ、ある者は南側の日本側緩衝地帯へ。
垂直落下した兵士たちの多くは、地面に激突して即死した。後から落ちた二、三名は、先に落下した仲間の肉体や泥がわずかな緩衝材となり、奇跡的に即死だけは免れたものの、全身の骨を粉砕されて泥の中で呻き声を上げるのが精一杯であった。
下で見上げていたソ連軍歩兵中隊の兵士たちは、天から降り注いだ水飛沫と、血まみれになって降ってきた戦友たちの無残な姿を前に、完全に恐慌をきたして後ずさった。
「悪魔だ……! 氷の山が水を吐き出したぞッ!」
「登るな! 登れば全員叩き落とされるぞ!!」
阿鼻叫喚の狂乱が、ハンダサ要塞の前を覆い尽くした。
◇◇◇
モニター越しにその凄惨な光景を見つめていた浩平は、奥歯をギリリと噛みしめ、拳を固く握りしめた。
自分の組んだコードによって、生身の人間が四肢を折られ、命を落としたのだ。エンジニアとしての浩平の心に、冷たい鉛のような罪悪感が重くのしかかる。
だが、浩平はすぐに頭を振った。
「……仕方ない。仕方ないんだ」
浩平は乾いた声で、自分に言い聞かせるように呟いた。
「目の前に、物理常識じゃ絶対に説明できない超常の氷壁が現れたんだぞ……? それを見てもなお、銃を持って侵略を諦めないなら、こうなることくらい予想しろよ……! 一つの手を打った後に、もっと奥の手が隠されていることすら予見できないのかよ……!?」
モニターの中の泥と氷を見つめ、浩平は自嘲するように息を吐いた。
「……戦争で、敵も味方も誰一人死なせないなんて……最初から甘すぎる理想論だったんだ。俺がためらえば、今度は誠一郎や、古屯にいる何千人もの日本の兵士や住民が殺されるんだからな」
◇◇◇
午後1時40分。ソ連軍ハンダサ警備要塞・望楼。
双眼鏡を取り落とした要塞司令官ミーシン大佐の顔は、死人のように青ざめていた。
氷壁から叩き落とされ、全滅した先遣小隊の無残な末路。
そして、今なお数分おきに、氷壁の頂上から無差別に轟音とともに叩きつけられる無慈悲な瀑布。
大佐は震える手で受話器を掴み、叫んだ。
「総員へ通達……! 氷壁への登攀を、直ちに全面中止せよ!!」
傍らの政治将校が怒声を上げようとしたが、ミーシン大佐はその胸倉を掴み返して押し黙らせた。
「政治将校同志、見ろ! あれは自然の雪崩でも、偶然の融解でもない! 我々が登った瞬間に、ピンポイントで水が降り注いできたのだ!
……あの氷の城には、侵入者を絶対に許さないという、明確で冷酷な『意志』が宿っている! 生身の人間がこれ以上近づけば、我が連隊は戦闘を交える前に全滅するぞ!」
『侵略を止めなければ、命はない』
言葉なき浩平の鉄のメッセージは、現場の叩き上げ指揮官である大佐の骨の髄まで、恐怖とともに刻み込まれていた。
しかし――。
前線の恐怖が、何千キロも離れたモスクワやハバロフスクの官僚たちの冷徹な野心を止めることは、決してなかった。
◇◇◇
秒速八千五百メートルの絶対防空圏
◇◇◇
午後1時50分。極東の空。
地上の侵攻が完全に頓挫した報せを受けた極東軍総司令部は、一切の躊躇なく第二のカードを切った。
沿海州の第9空軍基地から飛び立った爆撃機と攻撃機の大編隊が、雲海を切り裂いて北緯五十度線へと急速に接近していたのだ。
だが、浩平の防衛計画において、空からの脅威に対する手当ては、地上の氷壁よりも遥かに早い段階で完了していた。
【新エリア解放:上敷香、気屯、古屯】
この通知を受け取った午前10時40分の時点で、浩平のコンソール上では、ある極めて凶悪な自動スクリプトがバックグラウンドでループ処理を続けていた。
【防衛迎撃コードの機能概要】
1. 指定されたマップ全域に監視エリアを設定し、リアルタイムでループ監視を行う
2. 監視エリア(解放マップ)内に進入したすべての飛行物体をスキャンし、所属が「アメリカ」または「ソ連」であり、かつカテゴリーが「飛行機」「爆撃機」「偵察機」「雷撃機」に該当する敵機を自動で検知する
3. 敵機を検知した瞬間、インベントリ内にあらかじめ確保してある500リットルのウォータータンクへ無料の水を満たし、内部温度をマイナス5度まで急速冷却して巨大な氷の塊を生成する。
4. 生成された氷の塊をタンクから取り出し、敵機の現在位置の真下10メートルの座標へ瞬時に転送。真上方向へ向けて秒速8500メートル(約マッハ25)の超高速ベクトルで射出する
ロジックは極めてシンプル、かつ絶対的であった。
侵入を検知した瞬間、インベントリ内で500リットルの清水タンク(重さ約500キログラム)をマイナス五度で急速凍結。
包装解除で純粋な「五百キロの氷塊」を取り出し、敵機の真下わずか十メートルの座標へテレポート。
そして、真上へ向けて秒速八千五百メートル(約マッハ25)という、第一宇宙速度をも超える極超音速のベクトルを付与して射出する。
「爆撃機の爆弾倉のハッチを強力接着剤で閉鎖するとか、機関銃の銃身を塞ぐとか……そういう小細工もコードを書けばできなくはなかったが…」
浩平は冷徹に32インチディスプレイのPythonコードを見つめていた。
「私のコードだって万能じゃない、ソ連機に対して配慮ミスや処置漏れが起きてもおかしくない、
そんな不確実な手心を加えて、もし一発でも爆弾が街落とされたらどうする? 爆撃機が古屯や敷香の人口密集地に到達したら、何百人、何千人の民間人が焼け死ぬんだ。
それに……こいつらは、地上の人間を空から一方的に焼き殺すために飛んできたんだ。爆弾を抱えて殺しに来る侵略者に対して、手加減してやる義理なんてどこにもない」
浩平はエンターキーを叩き、迎撃スクリプトのスタンバイを完了させた。
◇◇◇
監視者の怒り
◇◇◇
午後1時55分。北緯五十度線・高度三千メートル上空。
厚い夏の積乱雲を突き抜け、北緯五十度の国境線へと進入してきたのは、ソ連空軍の誇る最新鋭双発高速爆撃機ツポレフ Tu-2の三機編隊であった。
その後方、高度二千メートルには、重装甲を誇るシュトゥルモヴィク(Il-2対地攻撃機)九機が、凶悪な23ミリ機関砲とロケット弾を翼下に抱えて編隊を組んでいる。
Tu-2の編隊長機を駆るソ連空軍大尉は、爆撃照準器越しに眼下を見下ろした。
そこには、地上の僚友たちを震え上がらせているという、信じがたい「氷の長城」が青白く横たわっていた。
「……信じられん。本当に地表に氷山が連なっているぞ」
大尉は操縦桿を握り直し、通信マイクに叫んだ。
『全機、爆弾倉開! 目標、国境南側の日本軍主陣地! 焼き払えッ!』
Tu-2の三番機が、北緯五十度の不可視のラインを、その機首でわずかに跨いだ――まさにその刹那。
ドバァッッッ!!!!
音すらなかった。
機体の真下十メートルに忽然と出現した五百キロの氷塊が、秒速八千五百メートルの運動エネルギーをもって、三番機の胴体底面を突き抜けた。
衝撃波ですら追いつかない超高速の衝突。
Tu-2の全幅二十メートルのジュラルミンの機体は、炎を上げる暇すらなく、まるで巨大なハンマーで叩き潰されたガラス細工のように、一瞬にして微細な破片となって虚空に爆散・消滅した。
「な……ッ!?」
一番機の大尉の視界から、僚機が影も形もなく掻き消えた。
『さ、三番機が消滅! 敵の対空砲火か!? いや、爆発も煙も見えなかったぞ!』
二番機のパイロットの悲鳴が無線に響いた瞬間――。
カァァァッ!!
二番機、そして大尉の駆る一番機もまた、国境線を通過したコンマ1秒後に、下から突き上げられた超音速の氷の杭に貫かれ、機体の輪郭ごと吹き飛んで破片となった。
◇◇◇
後続していた九機のIl-2攻撃機隊は、前方で起きたあまりの光景に戦慄した。
『一番機、二番機、三番機、全滅! 跡形もありません!!』
『日本軍の新兵器だ! 恐るべき超高空対空砲があるぞ! 高度を取れ、急上昇しろッ!!』
Il-2のパイロットたちはパニックに陥り、エンジン全開で操縦桿を引き絞った。
急角度で機首を持ち上げ、高度四千、五千メートルへと逃げ延びようとする。
だが、彼らがどのような高度を飛ぼうと、関係はなかった。浩平のスクリプトは、彼らが「北緯五十度の解放境界」を越えた瞬間、その機体の真下十メートルに氷塊を召喚するのだから。
ドパァッ! ドパパパパッ!!
高度四千メートルに達したIl-2の編隊が、国境線を越えた順に、次々と虚空で破裂していった。
その中の一機――中隊長機のIl-2は、氷塊が機体中央をわずかに掠める形で機体後部を吹き飛ばしたため、パイロットは即死を免れた。
しかし、吹き飛んだキャノピーと座席ごと、大尉は高度5千メートルのツンドラの空中へと放り出されていた。
ゴオオオオオオッ、と叩きつける冷たい突風の中、身体が真っ逆さまに落下していく。
大尉の霞む視界に映っていたのは、地平線の彼方まで伸びる美しくも冷酷な「氷の長城」と、その向こうで安らかに息づく緑の大地であった。
(……ああ……)
落下する数十秒の間、大尉の脳裏をよぎったのは、軍人としての敗北感ではなかった。
人智を超えた圧倒的な神罰の前に立った、絶対的な絶望と後悔。
(我々は……手を出してはならないものに、手を出してしまったのだ……。あれは……神の怒りだ……)
ドスッ、と泥の中に叩きつけられ、パイロットの意識は永遠の闇へと沈んでいった。
◇◇◇
同時刻。南樺太・古屯主陣地。
「……な、何が起きたんだ……?」
陣地の掩体壕から北の空を見上げていた小林連隊長と第2大隊の兵士たちは、全員が小銃を取り落とし、口をあんぐりと開けて空を仰ぎ見ていた。
北の空から轟音を響かせて迫ってきた敵の大編隊。
対空機銃も高射砲も届かない高空を飛ぶ敵機に、誰もが陣地の壊滅を覚悟した。
だが、そのソ連機の大群が、北緯五十度の「氷の城」の真上を通過しようとした、まさにその瞬間――。
まるで空に目に見えないシュレッダーが仕掛けられていたかのように、敵機が火を吹くこともなく、次々と空中で粉々に砕け散り、紙吹雪のような銀色の破片となってオホーツクの風に散っていったのだ。
「全滅……? 十二機の爆撃機と攻撃機が……一瞬で……?」
小林大佐の膝がガクガクと震えた。
もはや恐怖すら通り越し、全身の毛穴から冷汗が噴き出していた。
その横で、泥だらけの軍服のまま、空を見上げていた橘誠一郎は、腰の軍刀の柄を痛いほどに握りしめていた。
誠一郎の瞳には、神の奇蹟を喜ぶ光はなかった。
ただ、自らの胸ポケットにあるタブレット――その向こうにいる監視者・浩平が下した、冷徹で重い決断の重みが、痛いほどに伝わってきていた。
誠一郎はギュッと唇を噛み、低く、重い声で呟いた。
「……これは、戦争なんだ」
◇◇◇
現代・2027年8月5日。浩平の自室。
静まり返った部屋の中で、PCモニターには無情なシステムログが静かに流れていた。
【1945-08-05 13:55:04 : KILL 爆撃機 at [50°00'01"N, 142°44'32"E] | pilots=Smirnov.A | altitude=3050m】
【1945-08-05 13:55:05 : KILL 爆撃機 at [50°00'02"N, 142°44'45"E] | pilots=Kuznetsov.V | altitude=3100m】
【1945-08-05 13:55:06 : KILL 爆撃機 at [50°00'01"N, 142°44'18"E] | pilots=Ivanov.S | altitude=3080m】
【1945-08-05 13:55:28 : KILL 攻撃機 at [50°00'03"N, 142°44'50"E] | pilots=Popov.M | altitude=3600m】
【1945-08-05 13:55:31 : KILL 攻撃機 at [50°00'02"N, 142°44'12"E] | pilots=Sokolov.D | altitude=3850m】
【1945-08-05 13:55:34 : KILL 攻撃機 at [50°00'04"N, 142°45'05"E] | pilots=Lebedev.N | altitude=4100m】
【1945-08-05 13:55:37 : KILL 攻撃機 at [50°00'02"N, 142°43'55"E] | pilots=Kozlov.A | altitude=4300m】
【1945-08-05 13:55:40 : KILL 攻撃機 at [50°00'05"N, 142°45'22"E] | pilots=Novikov.I | altitude=4600m】
【1945-08-05 13:55:43 : KILL 攻撃機 at [50°00'03"N, 142°44'38"E] | pilots=Morozov.P | altitude=4850m】
【1945-08-05 13:55:46 : KILL 攻撃機 at [50°00'06"N, 142°45'40"E] | pilots=Petrov.Y | altitude=5050m】
【1945-08-05 13:55:48 : KILL 攻撃機 at [50°00'04"N, 142°43'40"E] | pilots=Volkov.K | altitude=5200m】
【1945-08-05 13:55:51 : KILL 攻撃機 at [50°00'05"N, 142°44'42"E] | pilots=Solovyov.A | altitude=5150m】
浩平はキーボードから手を離し、固く握りしめた拳を自らの太ももへと叩きつけた。
ディスプレイの光に照らされた浩平の横顔は、いつもの気のいいゲーム好きの青年のものではなかった。
敵であっても、命を奪ったという事実から目を背けず、それでも一歩も引かない覚悟を固めた、冷徹な現実主義者の眼差し。
浩平は深く、静かに息を吐き出し、誠一郎と同じ言葉を、誰もいない部屋に落とした。
「……これは、戦争なんだ」
北の空で散った十二機の残骸が、冷たいツンドラの湿原へと降り注ぐ中、昭和二十年八月五日の午後が、血と鉄の匂いを孕みながら更けていこうとしていた。
お待たせしました
今回はおそらく本作一番の残酷描写回と思います
ちひろが恵須取に行く途中の話も書こうとしたが、案の定もう8000文字となってここで一旦区切りさせてください
一話1万5000文字は常連読者にとっては見応えあって楽しいと思いますが、私の負担としても、この作品をもっと人に読ませるためにも、適宜1話の文字数を減らしてやって参ります
次の話の大筋はもう決まってあるのでそこまで時間がかからないと思うが、いつになるかはご期待ください、私もできる限り早く出そうと考えています




