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1945年8月2日 First Kill

この作品はフィクションです、実在の人物や団体などとは関係ありません

【現在のクレジット残額:1,077,708,380ゼニ デイリーボーナス1.2億ゼニを含む】

【ゲーム内で関わった人数:約123,900人】


◇◇◇

旅立ちの支度とちひろの選択

◇◇◇


1945年8月2日、午前6時00分。


現代の自宅にいる浩平は、普段よりも早い時間に目を覚ましていた。目的は一つ、これから遥か北の地へと過酷な長旅に出る橘兄妹の身の回りの世話をするためだ。


浩平はまず、二人への旅支度のアイテムを支給することにした。昨夜、届けられたアパレルの商品目録を前に、妹のちひろはほぼ一晩をかけて真剣に服や鞄、靴を選び抜いていた。その目録には男性用の衣類や靴も豊富に掲載されていたため、彼女は自分のものだけでなく、兄の誠一郎の私服も含めて多種多様な品を選び出していた。


当時21歳という年頃の女性であるちひろが、北国での生活と少佐の妻としての品格を考えて選択したアイテムは、現代の機能性を持ちながらも、どこか大正から昭和初期の雰囲気を残したクラシカルな意匠のものばかりだった。


樺太の厳しい寒さに備えた上質なウール製のロングコート、落ち着いた黒や紺のフレアスカート、仕立ての素晴らしい長袖のブラウス。特別な場にも対応できるモスクリーンの上品なワンピースドレスに、歩きやすさと機能性を両立した革製のショートブーツやレースアップシューズ。さらに、活動しやすい現代的なスポーツ下着一式や、日差しを遮るための小振りのウールハット。


鞄類も充実しており、普段使いの小振りな牛革のハンドバッグから、着替えをしっかりと詰め込めるクラシカルなトランク型のスーツケース。極めつけには、細身の革ベルトがあしらわれた上品な腕時計まで、実用性とささやかな華やかさを兼ね備えた品々が揃っていた。ちひろはさらに、誠一郎のためにも仕立ての良い開襟シャツやツイードのジャケット、頑丈な歩行用の革靴を多数選択していた。


浩平がこれらの一式をゲーム内ショップで購入したところ、総額は十万ゼニほどになった。すぐさまこれらすべての荷物をまとめ、橘家のちゃぶ台の横へと転送した。


午前8時00分。


誠一郎とちひろは、いつも通りの静かな朝食を終えていた。誠一郎の手元にあるタブレットへ、浩平からの連絡が届く。


『お二人が留守にする間、お母親のことは黒田家のけいこ夫人にすべて頼んであります。食料品や必要な物資も、これまで通りに私がこの家へ直接支給し続けますので、何も心配はいりません』


画面の文字を読み上げた誠一郎と、その傍らに立つちひろは、虚空に向かって深く頭を下げた。「監視者殿、重ね重ねのご配慮、心より感謝いたします」と誠一郎が言えば、ちひろも「監視者様、お兄ちゃん共々、必ずや役目を果たしてまいります」と健気に微笑んだ。


二人はその後、高齢の母親に向き直り、誠一郎が少佐として北方の樺太へ赴任すること、そして留守の間は陸軍の中将である黒田家の夫人が定期的に様子を見に来てくれることを丁寧に説明した。

母親は、最愛の子供たちが揃って遠い北の地へ旅立つことに少し寂しそうな表情を浮かべたものの、日本の未来を背負う二人の決意を察し、「誠一郎、ちひろ。身体にだけは気をつけて、しっかりとお務めを果たしてくるのですよ」と、温かく二人を送り出してくれた。


◇◇◇

夫婦の証明

◇◇◇


午前9時00分。


荷物を手にした誠一郎とちひろの二人は、出発の挨拶を兼ねて広島の第二総軍司令部に立ち寄った。

今朝早く、既に黒田中将からタブレットを用いた往復通信で事情を聞いていた藤堂中将は、橘兄妹が赴くことの重大さを深く理解していた。


藤堂中将は、まだ若いちひろを緊迫する樺太の前線へ同行させることに少々の心配の念を抱いていたが、天の監視者がそれを望み、守護を約束している以上、そこには深い考えがあるのだと見ていた。藤堂中将は直ちに、第二総軍代理司令官としての権限を行使し、必要となる書類一式の作成を完了させた。


「橘少佐。これが宮城からの大命を反映した樺太赴任命令書だ。そしてちひろさん、これがあなたの軍属としての身分証明書と、同行許可書である」


藤堂中将の手から手渡された重みのある書類を、二人は恭しく受け取った。

その身分証明書の続柄の欄には、明確に『夫婦』の文字が墨書されていた。

初めて自分と兄との関係が公的に夫婦として記されたその書類を目にしたちひろは、頬を微かに赤らめて恥ずかしそうに俯きながらも、その胸の奥にはどこか抑えきれない嬉しい感情が込み上げていた。


午前10時00分。


司令部から手配された軍用車に荷物と共に乗り込んだ二人は、広島に最も近い軍用飛行場へと運ばれた。

ここから二人は、午前11時30分に発つ「東京飛行場」行きの軍用輸送機に乗り、まずは最初の経由地である帝都を目指すことになる。


現在の日本の制空権を考慮し、二人が樺太の現地へ無事に到達するための最短かつ安全な乗り継ぎ便のタイムラインを以下のように飛行のサポート体制を整えていた。


8月2日 11:30 広島発 ──> 14:00 東京着(経由・給油)

8月2日 14:30 東京発 ──> 17:30 北海道・千歳着(現地にて一泊)

8月3日 08:00 千歳発 ──> 09:30 樺太・大泊着


本来であれば、B-29や米軍の機動部隊から放たれた戦闘機が飛び交う日本上空を、プロペラ輸送機で移動するなど正気の沙汰ではない。しかし、そこには監視者である浩平の、目に見えない絶対的な防衛網が敷かれようとしていた。


◇◇◇

大空の防衛コード

◇◇◇


午前11時20分。


双発の軍用輸送機の機内へ乗り込み、座席に腰を下ろしたちひろは、生まれて初めて体験する飛行機の独特な構造と窓の外の景色に、大興奮の様子で目を輝かせていた。

その微笑ましい様子を画面越しに見ていた浩平は、二人の緊張をほぐすため、ショップから冷たいペットボトルのコーヒーと、出来立ての温かいシュウマイ弁当をふたつ購入し、二人の膝の上へとそっと転送した。


「わあ……! 温かいお弁当と、この不思議な筒に入った黒い飲み物は……珈琲かしら。お兄ちゃん、これならまるで、本物の新婚旅行のようですね!」


ちひろは弁当の蓋を開け、美味しそうな匂いに声を弾ませながら楽しそうに笑った。誠一郎は「これ、滅多なことを言うな。私たちは任務で行くのだぞ」と生真面目に嗜めつつも、妹の嬉しそうな顔を見て自然と目元を緩めていた。


しかし、モニターの前にいる浩平の表情は真剣そのものだった。


「日本の周りの空は、完全にアメリカの制空権下にある。いくら内陸の安全なルートを選んで飛ぶと言っても、軍用機で移動すること自体がまさに命懸けだ。二人の命を守るために、俺の側で完璧な防衛ラインを構築しなきゃいけない」


浩平はまず、以前畑元帥に施したのと同様の個人保護プログラムをバックグラウンドで実行した。これは、二人の身体に銃弾や破片が届く寸前、弾道上に透明なシールドを自動出現させて突進を弾き、直後にその破片ごとシールドを回収する防御コードだ。


しかし、航空機そのものが空中から敵機の機銃掃射やドッグファイトに巻き込まれた場合、機体そのものが大破してしまえば墜落の危険がある。そのため、浩平は飛行機全体を覆うように守るための、新たな迎撃プログラムを構築し、実行に移した。


【防衛迎撃コードの機能概要】


1. 指定された対象(橘誠一郎および乗船する航空機)の現在座標を中心に、半径10キロメートルの球形監視エリアを設定し、リアルタイムでループ監視を行う

2. 監視エリア内に進入したすべての飛行物体をスキャンし、所属が「アメリカ」または「ソ連」であり、かつカテゴリーが「飛行機」「爆撃機」「偵察機」「雷撃機」に該当する敵機を自動で検知する

3. 敵機を検知した瞬間、インベントリ内にあらかじめ確保してある500リットルのウォータータンクへ無料の水を満たし、内部温度をマイナス5度まで急速冷却して巨大な氷の塊を生成する。

4. 生成された氷の塊をタンクから取り出し、敵機の現在位置の真下10メートルの座標へ瞬時に転送。真上方向へ向けて秒速8500メートル(約マッハ25)の超高速ベクトルで射出する


射出された氷塊は凄まじい運動エネルギーで敵機の機体を物理的に粉砕し、その後地上へ落下する過程で摩擦熱によって元の水へと戻るため、地上の民間人への二次被害(氷の落下)を防ぐ。


撃墜が完了した際には、対象のカテゴリー、位置座標、パイロット名、高度のデータを現在時刻とともにシステムログへ出力する。


輸送機は広島の飛行場を離陸し、順調に高度を上げて関東方面へと向かっていた。敵機との接触を避けるため、極力山々が連なる内陸寄りのルートを選択して飛行していたが、山梨と愛知の県境に差し掛かった上空で、不穏な事態が発生した。


史実において、1945年8月7日に予定されている豊川海軍工廠への大規模空襲を控えたアメリカ軍は、事前の偵察工作のために、数機の艦上偵察機(F-6Fヘルキャット)を愛知県周辺の上空へと巡回させていたのだ。


そのうちの一機が、日本の輸送機からおよそ十一キロメートルの距離を飛行中、偶然にもその機影を目視で捉えた。

米軍の偵察機パイロットは、ニヤリと冷酷な笑みを浮かべて操縦桿を握り直した。


「こんな時間に日本の軍用機が飛んでいるとはな。間違いなく本国の重要な要人を乗せているはずだ。制空権は完全に我々の手にある。機関銃の射程距離に捉え次第、蜂の巣にして墜としてやる」


ヘルキャットは方向舵を大きく切り、橘兄妹の乗る輸送機の背後へ向けて急速に接近を開始した。


しかし、その敵機が浩平の設定した半径十キロメートルの絶対防衛ラインへと足を踏み入れた、まさにその刹那だった。


背後から迫りつつあった米軍偵察機F-6Fヘルキャットの真下十メートルの空間に、突如として五百リットル分の巨大な氷の塊が出現した。それは重力の法則を完全に無視し、マッハ25という人間の肉眼では到底捉えられない超音速の質量兵器として、真上に向けて突き上げられた。


ドガァアアンッ!!!


空中に、激しい金属の破壊音すら掻き消すほどの強烈な衝撃波が破裂した。下部から猛烈な速度で直撃した巨大な氷塊は、ヘルキャットの頑強な主翼とエンジンブロックの結合部を紙細工のように容易く粉砕。凄まじい物理的エネルギーによって、機体は前後に真二つへと一瞬で分断された。


パイロットの乗った前半部分は、すべての動力を喪失したまま黒煙を上げてきりもみ状態となり、成す術もなく愛知県郊外の鬱蒼とした林の向こうへと真っ直ぐに墜落していった。超高速で激突した氷の塊は、機体を破壊した直後の空気摩擦によって瞬時に霧と水飛沫へと還り、真夏の青空の中へと無害に溶けて消え去った。


浩平のモニターの端には、静かに一行のシステムログが出力された。


【2026-07-13 12:56:47 : KILL 偵察機 at [Coordinate] | pilots=James.A | altitude=4500m】


日本の輸送機のパイロットも、座席で仲良くお弁当を食べていた誠一郎もちひろも、十キロメートル後方の遥か彼方で起きたその一瞬の出来事には、音すら届かず何一つとして気づいていなかった。機体は何の振動もなく、ただ穏やかな大空を東京に向けて順調に飛行し続けている。


浩平は、自分が構築した防衛コードが、初めて明確に人間の命を奪った瞬間のログをじっと見つめていた。

喉の奥が少しだけ渇くような、冷たい感覚が胸を過る。しかし、しばらくログを注視したのち、浩平は静かにマウスから手を離した。


「かわいそうだけど、仕方ない。俺はあのアメリカ兵を憎んで倒したわけじゃない。だけど、俺の大切な仲間と、日本の未来を背負うあの二人の命を守るためなら、俺はどんな手段を使ってでも、邪魔する壁をすべて排除する」


その胸中には、命を奪ったことへの微かな痛みを置き去りにするほどの、確固たる強い信念の光が宿っていた。

輸送機は夏の太陽の光を浴びながら、日本の大空を遥か北方に向けて、静かに、そして確実に進み続けていた。


◇◇◇

暁の帝都東京

◇◇◇


時間が少し遡って

1945年8月2日、午前5時00分の皇居。


東の空がようやく白み始めた薄暗い早朝、帝都東京はこれまでにない静かな熱気に包まれていた。宮城の地下で下された絶対的な決断を受け、森赳中将率いる近衛師団と、田中静壱大将率いる東部軍の将兵たちは、すでに一斉に行動を開始していた。


この日、まだ眠る都民のために動き出した兵士や職員たちの朝食として、特別な食事が配られた。それは、混ぜ物の一切ない純白の精米だけで固められた大きな塩むすび二個と、つるりと殻の剥けたゆで卵一個である。


この食料は、都民向けに用意された東庭の集積所から差し引かれたものではなかった。現代の自室にいた浩平が、午前4時に目を覚まして急遽追加で購入し、直接転送したものだった。現場で動く人員を多く見積もり、計三万人分が手際よく用意されていた。


精米(業務用20kg)/150袋(3トン)/単価5,000ゼニ/総額750,000ゼニ

たまご(10個パック)/3000パック/単価250ゼニ/総額750,000ゼニ

【総支出:1,500,000ゼニ】


「……美味い。信じられん、これほど白い飯が食えるとは」


皇居の片隅や各部隊の駐屯地で、出動を前にした将兵たちは配られた塩むすびを口にし、その圧倒的な米の甘みに身体を震わせていた。外側はかすかに塩が効いており、噛み締めるたびに豊かな水分と米本来の旨味が口いっぱいに広がる。添えられたゆで卵も、栄養に飢えた身体に力強く染み渡っていった。


大豆や雑穀、果ては芋の蔓まで混ぜ込んだ配給食に慣らされていた彼らにとって、混じり気のない真っ白な米飯は、それだけで何よりの活力となった。将兵たちは黙々と、しかし凄まじい勢いでその糧食を胃袋へと収めると、民を救うという前代未聞の任務に向けて、引き締まった表情でそれぞれの持ち場へと散っていった。


◇◇◇

宮殿東庭からの奔流

◇◇◇


普段であれば静寂に包まれている早朝の皇居は、今や驚くべき活気に満ち溢れていた。

長和殿の前に広がる宮殿東庭には、昨夜浩平が転送した千トンの米、七百五十トンの小麦粉、六百トンの砂糖が、見上げるような山となってそびえ立っていた。


「急げ! 荷崩れを起こさぬよう、手際よく積み込め!」


森中将の指揮のもと、近衛師団の兵士たちが一糸乱れぬ動きで麻袋や段ボール箱を次々と抱え上げ、庭園に並べられた軍用トラックの荷台へと次々に運び出していった。整然と積まれていく物資の波は、まるで皇居の奥底から湧き出る尽きることのない泉のようだった。


一方、皇居の各門では、東部軍の将兵たちが東京都の既存の配給担当部署の職員たちと合流し、密接な連携体制を整えていた。今回の物資輸送は、天皇陛下から直々に下された「勅命」である。一切の遅滞も妥協も許されない最速の兵站工作として、物資を帝都の隅々まで届けるべく、全員が必死の形相で動き回っていた。


東部軍が誇る多数の軍用トラックは、うなるようなエンジン音を響かせながら皇居の各門を飛び出し、都内各所に点在する配給拠点や主要な病院へ向けて物資をピンポイントで直行輸送していった。そこからは、農商省や東京都の配給組織が、網の目のように張り巡らされた既存の流通ルートをフルに稼働させ、各家庭への分配作業へと順次移行していった。


この想定外の大規模配給に対し、実務を担う農商省の官僚や幹部たちは、これほど膨大な物資が一体どこから湧いて出たのか、激しい不審の念を抱いていた。今の日本に、これほど上質な精米や小麦粉が数千トン規模で残されているはずがないからだ。しかし、この配給の背後にあるのは、陸軍の大臣や元帥、そして何より天皇陛下ご自身の絶対的な命令である。どのような疑問があろうとも、彼らにはただ、目の前の命令に全力を尽くして従う以外の選択肢は存在しなかった。


広島で橘兄妹の旅立ちの手助けをしつつ、手元の画面でこの東京の様子を同時に覗いていた浩平は、順調に機能し始めた流通の光景を見て、小さく自嘲するような笑みを漏らした。


「流石に天皇陛下直々の勅命による配給となれば、あの横暴な憲兵も特高警察も、手出しは一切できないな。いくら彼らでも、天皇陛下御自身に向けて『非国民』なんて言葉は、口が裂けても言えないだろうしね」


権威の構造を逆手に取った浩平の冷徹な戦略は、帝都の暗い影を完全に押さえ込んでいた。


◇◇◇

純白の恵み

◇◇◇


朝の光が街を照らす頃、都内の各配給所や町内会を通じて、飢えに苦しむ民衆の手元へと次々に物資が届けられ始めた。


「これが……今回の配給なのか……?」


手渡された配給袋を覗き込んだ衣服の擦り切れた父親は、我が目を疑った。

そこに収められていたのは、砂利や虫の混じっていない、文字通り純白に輝く一級品の精米だった。しかも、ほんの数十グラムというこれまでの飢餓線上のような分量ではない。一人あたり二合という、戦時下では到底考えられないほどの破格の物量が、家族の人数分しっかりと手渡されたのだ。米だけでなく、上質な小麦粉や、長らく姿を消していた真っ白な砂糖までが、山のように人々の手へと握らせていく。


その驚異的な光景に、配給所に集まった人々からは言葉にならない歓声と、あちこちからすすり泣く声が沸き起こった。


空襲によって家を追われ、劣悪な環境の避難所や焼け跡の防空壕で餓死・衰弱死の寸前にまで追い詰められていた多くの乳幼児や老人たちの元へも、この恵みは直ちに届けられた。

親たちは、受け取ったばかりの貴重な白砂糖を、清潔な水に溶かし、息も絶え絶えだった我が子の口元へと恐る恐る流し込んだ。

濃厚な糖分が身体に注ぎ込まれた瞬間、ぐったりとしていた赤ん坊の小さな喉がゴクリと鳴り、その瞳にみるみるうちに生気という名の生きる力が甦っていった。老いた祖父母たちもまた、その甘い水を喉に滑り込ませ、途絶えかけていた命の灯火を力強く繋ぎ止めていた。


家々からは、長らく失われていた飯を炊く香ばしい湯気が、あちこちから立ち上り始めた。

飢えに苦しんでいたある家庭では、炊き上がったばかりの真っ白なごはんを器に盛り、おかずも何もないまま、ただその純白の塊を箸でそっと口へと運んだ。

ふっくらとした熱い米粒が舌の上でほどけ、噛み締めるたびに圧倒的な甘みが口いっぱいに広がる。


「美味しい……、本当に美味しい……」


父親も母親も、子供たちも、ただ白ごはんを口に運ぶたびに、とめどなく目から涙を流していた。明日をも知れぬ地獄のような日々のなかで、初めてもたらされた本物の「満腹」という救いが、人々の傷ついた心を心の底から洗い流していった。


配給が都内全域に行き渡り、街の至る所で歓喜と安堵の涙が流れる中、実務を統括していた農商省の幹部は、現地を視察していた東部軍管区司令官の田中大将の元へと歩み寄った。幹部は未だに信じられないものを見るような目で、恐る恐る尋ねた。


「田中閣下。……不躾ながらお伺いいたします。本日もたらされたこのありがたき恩賜の食料、そしてこの莫大な物量は、やはり……今日限りなのでございましょうか。明日になれば、また元の飢餓の地獄へと戻ってしまうのでしょうか?」


幹部の声には、一時の夢で終わることを恐れる深い悲痛さが混じっていた。

しかし、田中大将はふっとその厳つい顔を和らげ、自信に満ち溢れた力強い声で首を振った。


「いや、決して一度限りのものではない。安心するがいい。明日の分の物資も、すでに宮殿の庭に積み上げられる手はずが整っている。それどころか、恐らく数日後には、この帝都東京だけでなく、日本全国の津々浦々の民に向けても、同じように豊かな食料と薬が配られることになるだろう」


「全国に……でありますか!?」


農商省の幹部はその壮大な展望に息を呑み、同時に、自国を裏から支える「見えない巨大な兵站」の存在に、深い敬意と畏怖を抱いて頭を下げた。


東京の街が劇的な救済の第一歩を踏み出したのを見届けた浩平は、満足そうに微笑みながら、手元のキーボードを静かに叩いた。


「よし、東京の流通システムは完全に回り始めたな。これで財閥たちが金を吐き出し始めれば、さらに物量は加速する」


浩平はマウスを操作し、活気に満ちていく帝都の広域画面をゆっくりと閉じた。

そして、これから中将としての絶対的な大命を帯びて長崎へと旅立つ黒田の動向、そして北の地へと向かう橘少佐たちを確認するため、FPVカメラの焦点を再び広島の第二総軍司令部へと力強く戻していった。


【現在のクレジット残額:1,076,106,180ゼニ】

【ゲーム内で関わった人数:約133,000人 new:東京補給で+10000人】

おまたせしました

やはり二日毎の投稿はリアルの時間の都合上、難しい時がありました

より一話一話の密度を上げ、クオリティを維持するために

今後は二日~四日ほどの不定期投稿にシフトしてまいりますが

読者の皆様にご理解を賜れますと幸いです


付録:浩平が書いた飛行機防衛用のPythonコード

Pythonコードで文字数稼ぎたくないのでここに貼っておきます

# protect_airplain.py

import time

import sys

from datetime import datetime


# 現在の時刻を取得

now = datetime.now()


if len(sys.argv) > 1:

vip_name = sys.argv[1] #人名(ex: 橘誠一郎) or 航空機便名

vip = Environment.search(vip_name)[0]


while vip is not None:

defence_area = Environment.area.get_circle_area(coord=vip.position, radius=10000) #飛行機現在座標から10km以内の範囲


# 監視対象:広島市上空(重要エリアに絞る)

targets = Environment.get_objects(defence_area)


for target in targets:

# 飛行物体で、米軍またはソ連軍の爆撃機・偵察機を検知

if target.category in ['飛行機', '爆撃機', '偵察機', '雷撃機'] and

target.affiliation in ["アメリカ", "US", "ソ連", "USSR"]:


# 既に購入済の500Lウォータータンクをゲームインベントリで無料の水を注入、そして-5度まで凍らせて、タンクそのものを外して巨大の氷の塊だけ残る

water_tank = Environment.inventory.get_objects("500Lウォータータンク")[0]

if water_tank:

Environment.inventory.fill_water(item=water_tank)

Environment.inventory.set_temperature(item=water_tank, -5) # -5度に設定

frozen_water = water_tank.unpack() # 凍った500Lの水だけ残る


if frozen_water:

# 初期位置:対象の真下10m

init_position = target.position.translated(0, -10, 0)


# 速度ベクトル:真上方向にマッハ25(制限内)、氷が落下時、水となって無害化する配慮

speed_vec = [0, 8500, 0] # m/s(約マッハ25)


# 転送実行

send(

item=frozen_water,

place=init_position,

speed=speed_vec,

status=Environment.NoPackaging, # コップなし、液体のみ

message='Gift from Heaven' # 当然、米軍機パイロットはこのメッセージを見る事は叶いません

)


# パイロット情報取得

pilot_names = ", ".join(target.pilots) if target.pilots else "Unknown"


# ログ出力

log_type = "KILL"

log(f"{now.strftime('%Y-%m-%d %H:%M:%S')} : {log_type} {target.category} "

f"at {target.position} | pilots={pilot_names} | altitude={target.altitude}m")

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