1945年8月1日 14日後の世界
この作品はフィクションです、実在の人物や団体などとは関係ありません
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【ゲーム内で関わった人数:約123,900人】
地下の御文庫附属室に設置された50インチの巨大な画面を前に、昭和天皇をはじめとする一同は、これから開かれる未来の記録に対して息を呑んでいた。
モニターの前にいる浩平は、上映を開始する前に、まず畑元帥の手元に向けて一枚のA4用紙を静かに送り届けた。そこには、現代のテレビリモコンの操作方法が分かりやすく記されていた。
『元帥閣下。その黒い棒は、映写の再生や停止を制御するための機器です。基本的な動かし方やボタンに書かれている模様の意味は、あなたが使っていた小型の映写機(ポータブルDVDプレイヤー)とまったく同じです。数字が書かれている部分は今回の再生には無関係ですので、触れる必要はありません。途中の操作はすべて閣下にお任せします。 ――監視者 浩平』
「なるほど、これがあの機械の制御盤か……」
畑元帥は宙から落ちてきた黒いリモコンを大きな手で受け取ると、画面に向けて「一時停止」や「再生」、そして少しだけの「巻き戻し」のボタンをいくつか試しに押してみた。反応を確かめ、小型映写機の操作感覚と同じであることを把握すると、元帥は昭和天皇に向けて深く一礼した。
「陛下、準備が整いました。これより、我らの歩むはずだった『歴史の結末』を上映いたします。……再生を制御する役目は、不肖この畑が務めさせていただきます」
「うむ。頼む、畑元帥」
昭和天皇が静かに頷かれたのを合図に、畑元帥の親指が再生ボタンを強く押し込んだ。50インチの液晶画面が鮮烈に発光し、100分間に及ぶ究極の黙示録が、重低音のナレーションと共に静かに始まった。
◇◇◇
年端も行かぬ乙女たち
◇◇◇
映写の冒頭に映し出されたのは、激戦の地となった沖縄の上陸戦だった。
地獄のような砲撃の応酬がモノクロの記録映像として流れる中、ナレーターの声が、一瞬だけある組織の名を告げた。――『ひめゆり学徒隊』。画面には、泥塗れになりながら凄惨な戦場へと駆け出していく、まだあどけなさの残る女子生徒たちの赤裸々な現実が映し出された。
当時、陸軍の最上層部である阿南陸相や田中大将らは、沖縄の悲惨な戦況を書類の上では把握していた。しかし、宮中への刺激や不敬を恐れるあまり、陛下に対してここまで凄惨な「民間人の動員と犠牲」の詳細を直接奏上した者は一人もいなかった。誰もがその不都合な事実を伏せていたのだ。
昭和天皇は、生涯で初めて目にする「沖縄戦の真実」の映像を前に、言葉を失って画面を凝視されていたが、やがてその目から大粒の涙をハラハラと零された。
「……こんな、年端も行かぬ女子までが戦場に散ったというのか……。すまぬ……朕の不徳の致すところだ、本当に、すまぬ……」
元首としてのあまりにも深い悲痛な呻きが、薄暗い部屋に響き渡る。
モニターの前でその様子を見ていた浩平は、学校の教科書でしか知らなかった歴史の当事者の生々しい反応に、胸が締め付けられるような感覚を覚えていた。
(……そうか。この方は、自分の意思で本気で世界を侵略しようとした狂気の独裁者なんかじゃない。当時の止められない世論や、軍部の大波に押し流され、最後にすべての破滅の責任を一人で背負わされようとしている、哀れな『象徴』なんだな……)
「陛下っ……! 皇国をここまで追い詰め、年少の民にまで塗炭の苦しみを舐めさせましたるは、すべて統帥の末端にある我が陸軍、そしてこの阿南の罪にございます! どうか、どうかお許しくだされっ……!」
耐えかねた阿南陸相が、畳の上に勢いよく両膝と額を突き、声を上げて土下座を捧げた。その巨体が、激しい後悔と涙でガタガタと震えている。
「阿南、控えよ。陛下をこれ以上お悲しませするな」
すかさず畑元帥が前に進み出、阿南の太い肩を強く掴んで強引に引き起こした。
「陛下、どうかお心を強くお持ちください。この先には、さらに直視せねばならぬ現実が待っております。阿南、もう過ぎ去った過去を悔やんでも詮は無い。我らには今、これからの未来をどう救うか、監視者殿の知恵を借りて共に考えるための『頭脳』が残されているはずだ!」
畑元帥の厳しくも温かい叱咤に、阿南陸相は涙を拭いながら、ようやく頭を上げて再び画面へと視線を戻した。
続いて画面に映し出されたのは、米軍機の視点から撮影された、あの『東京大空襲』の鮮烈なカラー化映像だった。
数ヶ月前に自らの足で焼け野原を視察された昭和天皇にとって、それはすでに脳内で消化された悲惨さであり、沖縄ほどの衝撃は受けなかった。しかし、天皇はふと画面の構図に違和感を覚え、口を開かれた。
「元帥。この映像は……もしや、我が国を焼き払う米軍の飛行機から撮影された映写ではないか?」
鋭い着眼点だった。畑元帥は即座にリモコンのボタンを押し、画面を一時停止させた。そして、まだ昨夜の段階でこの映像を観ていなかった近衛師団長の森中将の反応を気にかけつつも、陛下に向けて正直に告白した。
「御意にございます。これはまさに、我が国を爆撃した米軍の記録映像にございます。……しかし陛下、どうかご安心ください。この映写を作ったのは、まぎれもない『未来の日本人』にございます。つまり、米国は戦後、我が国にとって敵国ではなくなるのでございます」
「戦後に、敵ではなくなる……?」
昨日からこの場に合流した森中将は、その信じられない言葉に一瞬だけ身体を強張らせ、険しい表情を見せた。しかし、目の前で流れる圧倒的な未来の事実を前に、暴れ出したり否定したりするような無駄な抵抗を見せることはなく、ただただ黙ってその真実を胃に収めていた。
◇◇◇
長崎の特使
◇◇◇
番組のナレーションが、ついに「新型爆弾(核爆弾)」の基本原理と、米国によるマンハッタン計画の実験映像へと移り変わった。
何もない砂漠が一瞬にして文字通りの太陽のような白光に包まれ、すべてを融解させて吹き飛ばす強烈な原爆実験(トリニティ実験)のカットが流れると、昭和天皇の御尊顔は目に見えて不安の色に染まっていった。
そして、画面から冷酷な未来の音声が響き渡る。
――『1945年7月25日、米軍の最高指令により、広島、小倉、新潟、長崎のいずれかの都市へ、気象条件が整い次第、一刻も早く原子爆弾を投下せよとの命令が下された』
「なっ……我が国の主要都市へ、あの化け物のような爆弾を落とすというのか……!」
木戸内大臣が恐怖に顔を歪める。昭和天皇もまた、居ても立っても居られないといった様子で、身を乗り出された。
画面が「八月六日、広島」の歴史へと突入する直前、畑元帥はすかさずリモコンを押して映像を止めた。そして、不安に駆られる一同に向けて、力強い声で説明を付け加えた。
「陛下、どうかご安心ください。すでに『広島』におきましては、天の監視者殿の多大なるご協力の元、現地を統括する藤堂中将が、爆発圏外にあたる『武田山』の北側へ向けて、全住民の完璧な強制避難計画を構築しております。たとえこの予言通りに敵の巨弾が投下されようとも、広島の民の犠牲者は……一人たりとも出させはいたしません!」
「そうか……藤堂たちが、すでに手を打ってくれているのか」
昭和天皇はそれを聞き、胸の動悸を抑えるようにして少しだけホッと胸を撫でおろされた。しかし、その直後に再生された、未来の歴史における「本来の広島原爆」のキノコ雲と、一瞬にして消滅した広大な市街地のカラー映像を前に、室内は全員が絶句し、凍りついたように動かなくなった。
続いて、番組は「八月九日、長崎」の歴史へと進む。
再び立ち上る不気味な黒いキノコ雲の映像をご覧になった昭和天皇は、たまらず畑元帥に向けて問いかけられた。
「元帥、広島は藤堂たちが守ってくれている。ならば……この『長崎』の民はどうなのだ? こちらへの備えは出来ているのか?」
畑元帥は再び画面を一時停止させると、苦渋の表情を浮かべて弁明した。
「不躾ながら……我ら第二総軍の管轄はあくまで西日本であり、長崎の行政や現地の軍(第十六方面軍)を一気に動かすだけの権限が、現状のわし達にはございません。一応、解決のための『考え』はございますが……それもひとえに、陛下の直々の御聖断がなければ、動かすことは叶いませぬ」
そのやり取りを現代のモニター前で見つめていた浩平は、自宅のキーボードを激しく叩いていた。
「そうだ。俺の今のゲーム画面の操作範囲は、まだ広島と呉の周辺、そしてここ東京までしか届かない。だけど、もし俺の存在を完全に理解している『繋がり』のある人間が長崎の現地に飛び込んでくれれば、カメラの探索範囲が解放されて、長崎へ直接介入できるようになるはずだ。……だけど、現地の頑固な役所や軍を一瞬で従わせるには、やっぱり昭和天皇の『絶対的なお墨付きの特使の権限』が必要なんだよ!」
そう考えた浩平は、昭和天皇の手元にあった連絡用のタブレット端末の画面へ向けて、直ぐにテキストを書き換え、再転送した。
『長崎の悲劇の回避について、私にも確実な用意がございます。陛下、私のその存在をよく知っている信頼できる一人の将官を、陛下の『特使』として大至急長崎へ派遣してください。その者が現地へ到着した瞬間、私は今この宮城で行っているのと同様に、長崎の地でもすべての未来の力(物資の転送や影響)を行使できるようになります。我が存在を理解し、かつ陛下の終戦の意図を完全に汲んだ十分な権限を持つ特使であれば……長崎の悲劇も、十分に回避可能と考えております。 ――監視者 浩平』
「……! 監視者殿から、新たな提案が届いた」
画面の文字を読み終えられた昭和天皇は、すぐさまそのタブレットを木戸内大臣や4人の将官たちの前へと差し出された。
一同が未来の文字を凝視し、長崎を救うための条件を精査する。
「監視者の存在を完全に知っており、かつ、長崎の現地軍や県知事を力ずくでお指図できるだけの、相応の軍的な階級を持つ者……」
田中大将が顎に手を当てて呟く。
その条件を満たす適任者は、現在の日本に、実質的に数人しか存在しなかった。
畑元帥は即座に居住まいを正すと、昭和天皇に向けて一人の男の名を推薦した。
「陛下。なれば、現在広島の第二総軍司令部におり、すでに監視者殿からの直接の物資補給や協力を何度もこなしている、59軍の副司令の【黒田少将】を長崎への全権特使としてお遣わしください。彼ならば階級も申し分なく、藤堂中将との連携や監視者殿の避難計画も熟知しております!」
「黒田か。うむ、分かった。木戸、大至急、黒田少将を長崎へ向かわせるための、朕の直々の全権委任状を手配せよ!」
「ハッ! 直ちに!」
昭和天皇の即座の聖断により、長崎の地獄の運命を覆するための、臨時の特使派遣が決まった・
◇◇◇
極東国際軍事裁判の理不尽
◇◇◇
長崎の議論が一段落し、畑元帥が再びリモコンの再生ボタンを押すと、画面は未来の歴史における『運命の御前会議』のシミュレーション映像へと移り変わった。
一九四五年八月九日。鈴木貫太郎首相を中心に、政府三権の長や軍のトップが集まった会議の様子が映し出される。
画面の中のナレーションが、当時の意見の完全な決裂を冷酷に解説していく。
【終戦派】:鈴木貫太郎(首相)、東郷茂徳(外相)、米内光政(海相)
【徹底抗戦派】:阿南惟幾(陸相)、梅津美治郎(参謀総長)、豊田副武(軍令部総長)
「……阿南。君は、未来の歴史においては、あくまで徹底抗戦を主張する『抗戦派』の頭目であったのだな」
昭和天皇が静かに画面から目を離し、阿南陸相を見つめられた。
阿南陸相はハッとして恐縮し、深く頭を下げた。
「……滅相もございません! 陛下、決してそのようなわけではございませぬ! 畑元帥閣下からこの未来の地獄の惨状を教えられた今、この阿南、一刻も早くこの無益な戦争を終わらせ、皇国と民を救いたいと心から考えておりまする。……ただ、」
阿南は湯飲み茶碗を持つ手に僅かに力を込め、恐る恐る言葉を続けた。
「ただ……天の監視者殿のこれほどの強大な御力があれば、我らがアメリカに対して、単純な『無条件降伏』以外にも、何かもう少々我が国にとって有利な終戦の条件を、交渉によって引き出す道が残されているのではないか……と、不肖ながらそのように考えてしまうのも事実でございます」
未来を知り、和平の必要性を100%理解しながらも、なお「大日本帝国陸軍の大臣」としての最後のプライドと条件闘争の執念が、阿南の心の中に僅かに残っていた。
現代のモニターの前で阿南のその複雑な表情を見ていた浩平は、少しだけ腕を組んで悩んだ。
「阿南さんの気持ちは分かる。だけど、俺がこのゲームの権能で介入できる時期も、場所も、使えるリソースの総額もすべて限られてるんだ。アメリカの圧倒的な物量と世界戦略から、日本をこの先何年も全面的にガードし続けるなんて不可能なんだよ。仮に今の米軍を撃退したところで、戦後の世界市場から日本が永久に排除されたら、それこそ未来のあの豊かな繁栄は絶対に訪れない」
アメリカが史実通りのタイムラインで動くなら、彼らには日本を「滅ぼす」意思まではない。ただ、軍国主義を解体したいだけだ。ならば、その敗戦の苦痛だけは、この時代の人間たちが耐え抜くしかない。
「……だけど、ただ無条件にすべてを差し出すだけじゃ芸がないよな。せっかく俺がここにいるんだ。未来の知識を使って、史実の『理不尽』をいくつか、事前に排除してやることはできる」
そう決めた浩平は、A4の用紙に自らの論理的な建言をプリントアウトし、作戦机の中央へと転送した。
ストン。
「手紙だ! 監視者殿からの直々の建言にございます!」
田中大将がその紙を素早く拾い上げ、昭和天皇の御前へと恭しく捧げた。全員が息を潜めて、未来の技師が提示した「終戦の権限」を読み進める。
『阿南陸相、そして皆様へ。
私が介入できる時期も場所も限られており、アメリカの攻撃から全面的に日本を守り抜くことは不可能です。敗戦という結末そのものを覆す手段は、私の手元にはありません。そこはどうか耐えてください。
しかし、私がいた未来の歴史から、一つだけ皆さんに強力なアドバイスがあります。
戦後、連合国によって開かれる『東京裁判(極東国際軍事裁判)』において、A級戦犯として非情にも処刑される【広田弘毅元首相】という人物がいます。未来の多くの法学者が、彼は事後法によって不当に裁かれた無罪の人間であると主張しています。
あらかじめ、日本側から「この人物たちは絶対に処刑してはならない」という正当な名簿を作成し、その内容が妥当かつ人数が少なければ、米国も交渉の席で受け入れる可能性が極めて高いです。
あと、これは私個人の強い願いですが……。
戦後、台湾、朝鮮、そして満洲国の主権は諦めなければなりませんが、特に【台湾】については、ただ放棄するのではなく、アメリカの監視の元で「民族自決による建国か、あるいは中国(中華民国)への回帰か」を決定する、公正な住民投票を行わせてください。その選挙結果が出るまで日本が見届けてから主権を放棄することができれば、戦後に台湾の民が被るはずの『凄惨な弾圧の歴史(228事件)』という悲劇を、完全に防ぐことができます。もちろん、現地の中国政府からは激しい反発が予想されますが、あくまで一人の未来の日本人の意見として、お聞き届けくだされば幸いです。 ――監視者 浩平』
「広田弘毅を、守る……。そして、台湾の民に自決の道を与える、か」
木戸内大臣は手紙に書かれた冷徹かつ極めて具体的な未来の政治建言に、背筋が震えるような感覚を覚えていた。
浩平は、戦後の台湾において、国民党政権によって数万人の凄惨な知識人や民間人が虐殺される歴史(二二八事件)を知っていた。もし日本が主権を放棄する前に「住民投票による正当な手続き」という国際法上の保護を仕掛けておけば、米国もそれを無視できず、戦後のアジアの悲劇を大きく塗り替えることができる。
「……ありがたい。未来の我が臣民は、ただ戦いを止めるだけでなく、戦後の我が国の大切な名誉と、関わった地の人々の命の守り方まで教えてくれるのか」
昭和天皇は手紙を深く抱きしめられると、阿南陸相を真っ直ぐに見据えられた。
「阿南。朕の意思は決まっている。無駄な条件闘争でこれ以上民の血を流してはならぬ。だが、浩平殿の言う通り、不当に命を奪われる者たちの保護と、台湾の民への最後の責任。これだけは、我らの最後の意地としてアメリカに突きつけようではないか」
「……ハッ! 大御心のままに、この阿南、すべてを受け入れまするっ!」
阿南陸相は、ついにその心の中に残っていた最後の抵抗のバグを完全に消去し、涙を流して未来の和平へとその全神経を同期させた。
◇◇◇
十四日後の玉音と、緑の一般参賀
◇◇◇
議論が最高潮に達する中、畑元帥は静かに仕切り直し、リモコンのボタンを押してDVDの再生を続行した。
番組の尺の制限ゆえに、浩平が前夜に叩き潰した「宮城事件(近衛師団の一部の造反)」の描写はカットされていたが、映像はついに、一九四五年八月十五日の『玉音放送』の瞬間へと突入した。
テレビの高音質なステレオスピーカーから、紛れもない、今ここに座られている昭和天皇の「十四日後の声」が、厳かに部屋全体へと響き渡った。
『――朕深ク世界ノ大勢ト皇国ノ現状トニ鑑ミ……』
「……あ、ああっ……」
木戸内大臣は、やや悲しみに満ちた何とも言えない表情で陛下のお傍らに立ち、その未来の自分の主の声に深く頭を垂れていた。
当事者である昭和天皇ご自身は、自らの未来の声を耳にし、最初は激しく驚かれた様子だったが、やがて妙な納得感を覚えられたのか、静かに頷かれた。
「……なるほど。朕は近居のうちに、この言葉をマイクに向かって喋らねばならんのだな。事前に自らの声を聴くことができ、大いに参考になった。監視者殿、感謝する」
天皇陛下は未来の自分のスピーチを完全に記憶に焼き付けるようにして、静かにその拝聴を終えられた。
そこから先、100分番組の後半パートは、一切中断されることなく一気に再生され続けた。
極東国際軍事裁判の緊迫した風景、GHQによるマッカーサーの進駐、日本国憲法の策定に伴う皇室や華族制度の抜本的な改革、そして旧帝国陸海軍の解体から『自衛隊』への変遷。
戦後の物資不足と混乱に喘ぐ民の姿に一同が胸を痛めたのも束の間、映像は一九五〇年代から六〇年代の『高度経済成長期』へと一気に加速していった。
白黒から完全なカラーへと移り変わる世界。東京の空にそびえ立つ美しい東京タワー、大地をマッハの如き速度で駆け抜ける白い『新幹線』、アジア初となる東京オリンピックの熱狂。そして、世界中の道を埋め尽くしていく『トヨタ』をはじめとする日本メーカーの自動車の数々――。
「……信じられん。我が国は、全てを失って降伏したはずなのに……これほどまでに、これほどまでに豊かに蘇るというのか……!」
森中将が画面にへばりつくようにして、歓喜の涙を流している。田中大将も、阿南陸相も、自分たちが命を懸けて守ろうとした日本の民が、未来において何一つ飢えることなく、世界一の繁栄を謳歌している姿を目の当たりにし、もはや大声を上げて泣くのを堪えることができなかった。
そして、映像の最後。
画面に映し出されたのは、現代の青空の下、新しく建て替えられた皇居の長和殿のバルコニーの姿だった。
そこには、今上天皇陛下(現代の天皇)と令和の皇族たちが、日の丸の小旗を振って熱狂する何万もの穏やかな笑顔の国民(未来の臣民)に向けて、優しく、穏やかに手を振られている、この上なく幸福な一般参賀の全景が映し出されていた。
音楽が静かにフェードアウトし、100分間のドキュメンタリーが、完全な黒い画面となって幕を閉じた。
「……これは、」
側に立っていた木戸内大臣が、感動のあまり自らの声を制御できず、無自覚のまま言葉を漏らした。
「これは……陛下。画面の奥におられるあの立派な御方は……陛下の、お孫様……にございますか」
事前に未来の皇室百科のデータを熱心に読み進められていた昭和天皇は、巨大な画面から一切の目を離さないまま、深い、本当に深い慈愛に満ちた表情で静かに頷かれた。
「うむ。その通りだ、木戸。……我が皇国は滅びない。民も、皇室も、これほどまでに素晴らしい未来を、確かに生きてくれているのだな」
途中、何度も映像を一時停止し、激しい議論と未来のデバッグの作戦を挟みながら進められた非公式御前会議。液晶テレビの電源を落とした時には、地下の附属室の白い光の向こうの時計は、すでに午後4時30分の時刻を指し示していた。
誰もが、戦い抜いた後のような圧倒的な充実感と、戦後を再建するための絶対的な確信をその胸に宿していた。
おまたせしました
風邪から完全に回復することが出きて、急いで話の続きを纏めました
正直な舐めました「今まで一番重みのあるDVD再生回」
マジでDVD見るだけでも一話が消耗すると思わなかった…こういう意味では東京篇は中々終わってくれないな
少なくとも皇居の出来事が終われば(つまり、まだ終わってない)、他の話にも進もうと思います
黒田少将は重い病気から快復してまた直ぐ長崎出向、うん…彼はそのブラックの世界で生き延びた人間だからまあいいや(笑)
物語中、昭和天皇が言ったことない言葉を勝手に創作したけど
フィクションSF物語なので、物語として楽しんでいただければ幸いです




