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1945年7月30日 帝都東京へ

この作品はフィクションです、実在の人物や団体などとは関係ありません

【現在のクレジット残額:6,281,580ゼニ(自動運用分を含む)】

【ゲーム内で関わった人数:123,500人】


◇◇◇

元帥の決断

◇◇◇


1945年7月30日、午後7時00分。

呉での大規模な配給や給水インフラの構築を見届けた藤堂中将と黒田少将を乗せた軍用トラックが、広島の第2総軍司令部へと滑り込んだ。二人が車から降りるや否や、待機していた副官から「畑元帥が至急お呼びです」と告げられ、そのまま元帥執務室へと案内された。


扉を開けると、そこにはすでに旅装を整え、厳めしい表情で立ち尽くす畑俊六元帥の姿があった。


「戻ったか、藤堂、黒田。呉の様子は金沢から電信で大枠を聞いている。天の監視者殿の御力、まさに驚天動地の手際であったな」


畑元帥は二人を促してデスクの前へ立たせると、一枚の軍令状を机の上に置いた。


「猶予はない。私はこれより、直ちに帝都東京へ向かう。監視者殿から授かったあの『原爆の写真集』と、あの映像が映る『小さな映写機』を携え、天皇陛下へ直々に拝謁し、終戦の直訴を行うつもりだ」


元帥の口から出た「直訴」という極めて重い言葉に、藤堂中将の背筋が震えた。


「元帥、あまりにも危険です。今の上層部は徹底抗戦の熱に浮かされている。東京へ行けば、どのような妨害に遭うか……」


「分かっている、藤堂」


畑元帥は穏やかに、しかし断固とした口調で藤堂の言葉を遮った。


「だが、誰かがこの狂った流れを止めねば、我が広島は一週間後に灰神楽となるのだ。たとえこの身が逆賊として討たれようとも、元帥陸軍大将としての最後の職責を果たしてみせる。……もしも、私が8月6日までに広島へ戻れぬ事態となった場合のことを考え、二人に新たな布陣を命ずる」


畑は軍令状を藤堂へと押し出した。


「第二総軍の指揮権を、お前(藤堂)に一時的に預ける。そして、お前が司令を務める第59軍の副司令に、黒田少将を任命する。私が不在の間、広島の防衛、そして監視者殿が進めておられる武田山への住民避難計画のすべてを、お前たち二人に一任する。頼めるか」


藤堂中将は深く息を吸い込み、隣の黒田少将と視線を交わした。黒田の眼鏡の奥の瞳には、冷徹な覚悟が宿っていた。


「……ハッ。この藤堂、命に代えましても、元帥が命じられた広島の盾の役割、果たしてみせます」


「この黒田、拝命いたします。広島の防衛に、全力を尽くします」


二人の力強い返答に、畑元帥は深く満足そうに頷いた。


◇◇◇

おやじとの直通回線と、未来の供物

◇◇◇


畑元帥が素早く私物を鞄に片付け、随行する副官や将校ら5、6名が廊下で慌ただしく準備を進める中、畑がふと足を止めて虚空を見上げた。


「……時に、監視者殿。これから東京へ向かうのだが、手前味噌ながら、あちらの要人たちを動かすための『手土産』が欲しくてな。今の東京は物資が完全に枯渇しており、まともな贈答品一つで役人の態度が激変する。何か、あちらの連中の度肝を抜くような品を融通してはもらえんだろうか」


その様子を傍らで見ていた黒田少将が、一歩前に出た。


「元帥。今後の緊密な連携のためにも、畑元帥ご自身が監視者殿と直接の連絡手段を持たれるべきかと存じます。我々と金沢長官らのように、手帳による通信を試みられては」


画面の向こうでこのやり取りをモニタリングしていた浩平は、

「頑固オヤジの割には、根回しの重要性をよく分かっているな。よし、畑元帥専用のアカウントを開設してやるか」

と呟き、ゲーム内のインベントリのプリンターで一枚のA4用紙を印字。それを畑のデスクの上へと滑り込ませた。


フッ。


「おお、これが噂の……」


畑元帥がデスクの上に物質化した純白の紙を手に取る。そこには丁寧な文字が並んでいた。


『畑元帥へ

以降、藤堂や黒田さん、金沢中将と同様に、手帳を用いた文字のやり取りを行います。連絡したい当日の日付と、少し先の時刻を自身の持つ手帳の最後のページに大きく手書きで記入し、続けて以下の【識別コード:OYAJ>FTKH】と内容を書き込んでください。

記入例:1945年7月30日、午前9時00分 OYAJ>FTKH 天皇陛下への土産を頼む』


「……お、や、じ、だと?」


畑元帥はその文字列を口の中で呟き、普段の厳しい表情を少しだけ崩して苦笑いを浮かべた。


「天の監視者殿からは、私はそのように見えているわけか。まあよい、これほど親しみを込めた暗号もなかろう」


畑元帥はすぐに自らの手帳を取り出すと、最後のページに5分後の時刻を記入し、万年筆で力強く書き込んだ。


『OYAJ>FTKH 土産はそれぞれ「東京の要人用」と「天皇陛下用」に相応しいものを乞う』


モニターの前の浩平は、手帳の文字がプログラムに検知されたのを確認し、すぐにゲーム内のショップ画面を展開した。


「東京の要人は高齢で激務続きだ。なら、現代の最高峰の酒と健康食品が一番効くだろう。そして、昭和天皇への供物は……歴史のネタバレ本と、陛下のご趣味に刺さる最高峰の専門書だ」


浩平は迷わず購入ボタンを連打した。


要人用アセット:

高級ジャパニーズウイスキー「響 21年」 × 10本(550,000ゼニ)

総合ビタミン剤「アリナミンEXプラス」 × 20缶(110,000ゼニ)


天皇陛下用アセット:

新訂原色植物大図鑑(上/中/下 全集) × 1組(20,000ゼニ)

現代の日本地図・世界地図帳 × 1冊(4,000ゼニ)

令和の皇室百科 × 1冊(8,000ゼニ)

【総支出:692,000ゼニ】


フッ、フッ、フッ、フンッ!!!!


激しい空間の歪みと共に、元帥執務室の大型デスクの上が、目も眩むような物資の山で埋め尽くされた。

煌びやかな21年もののウイスキーボトルが10本、現代の鮮やかな黄色いプラスチック製のビタミン剤缶が20缶。そして、現代の最高峰の印刷技術で刷られた、ズッシリと重い豪華な図鑑や書籍の束。


そこには浩平からのメモが添えられていた。


『アリナミンEXプラスは疲労回復のための極めて強力な栄養剤だ。高齢の要人に数粒飲ませれば一晩で劇的に効く。その他は良しなに使ってくれ。地図や皇室の本は未来の出来事を完全にネタバレする劇薬だが、陛下を説得するにはこれくらいの確証が必要だと判断した』


「……す、素晴らしい。これが未来の、我が国の印刷技術か。この色彩の鮮やかさは何だ」


畑元帥は『植物大図鑑』の美しいカラー写真の頁をめくり、そのあまりの精巧さに手の震えを止められなかった。生物学者としての側面を持つ昭和天皇が、これを見ればどれほど驚かれ、喜ばれるか、畑には容易に想像がついた。


その傍らで、黒田少将が好奇心に満ちた目で『令和の皇室百科』の表紙に手を伸ばそうとした。しかし、その手は藤堂中将の強い力によって遮られた。


「待て、黒田。……それは、我々が今見るべきものではない」


藤堂は厳しい目で黒田を制した。


「陛下がご覧になる前に、泥を這う我々軍人が皇室の将来や行く末を軽々しく知ることは慎むべきだ。それは臣下としての越権行為にあたる」


黒田はハッとしたように手を引き、深々と頭を下げた。


「……失礼いたしました、藤堂閣下。私の知的好奇心が過ぎました。元帥、この物資、直ちに厳重に梱包させます」


未来の奇跡の品々を前に、三人の将官はこれから始まる帝都での命懸けの政治戦に向けて、信じられないほどの勇気と切り札をその手に握りしめていた。


◇◇◇

午後九時、広島からの密使

◇◇◇


午後9時00分。夜の広島駅。


空襲の警戒警報は出ていないものの、灯火管制によって極限まで薄暗く落とされた駅の構内には、不気味な静寂が広がっていた。

一般の乗客の姿は完全に排除され、厳重な警備網が敷かれる中、プラットフォームには一編成の蒸気機関車(SL)が、シュシュシュシュと白い蒸気を低く吐き出しながら静かに待機していた。


畑元帥を乗せるためだけに緊急で仕立てられた、貸切の特別夜行急行列車。広島発、東京行き。


駅の暗がりに、二台の軍用乗用車が音もなく滑り込んだ。

車から降りてきたのは、畑元帥と随行の副官、そして秘密を共有する精鋭の将校5名。彼らの手には、天の監視者から下賜された高級ウイスキーやアリナミン缶、そして陛下への供物である図鑑や未来の地図が、厳重に二重の木箱と風呂敷で梱包されて大切に抱えられていた。


「元帥、すべての準備は整っております。発車後、明日の午前中には帝都東京駅へと到着する見込みにございます」


副官が周囲を警戒しながら、畑元帥を客車へと促す。


プラットフォームに立つ藤堂中将と黒田少将は、これより日本の運命を背負って暗黒の東海道を駆け抜ける老将の姿を、直立不動の姿勢で見つめていた。


畑元帥は客車のステップに足をかける前、静かに振り返り、二人の忠実な部下に向けて鋭く、しかし温かい眼光を向けた。


「藤堂、黒田。広島を頼むぞ。一週間後、この街の空にあの悪魔の雲を絶対に躍らせるな」


「ハッ! 元帥も、どうかご道中、ご無事で!」


二人の割れんばかりの敬礼の声を背に受け、畑元帥は引き締まった面持ちで特別客車の中へと消えていった。


ピーーーーッ!!!!


鋭い汽笛の音が、深夜の広島の街に低く響き渡る。

機関車が激しく火花を散らしながら車輪を回転させ始めると、黒い巨体はゆっくりと、しかし確実な足取りで暗黒のレールを滑り出し、帝都東京という未知の審判の地へ向けて加速していった。


その列車の軌跡を、現実世界のモニター越しに静かに、祈るような目で見送りながら、浩平はキーボードのEnterキーを静かに叩いた。


【現在のクレジット残額:5,589,580ゼニ(自動運用ORSコスト・土産購入含む)】

【ゲーム内で関わった人数:123,500人】


◇◇◇

要注意人物

◇◇◇


1945年7月30日、午後8時30分。


特別急行列車が広島駅を発った後、モニターの前に座る浩平はハッとして画面を凝視した


「待てよ……。列車が広島市の境界線を出ちまったら、俺のカメラから追跡できなくなるんじゃないか?」


現在の仕様では、浩平が干渉できるのは広島市と呉市を中心とした特定のエリアに限られている。もし移動する列車がそのエリアの外へ出てしまえば、画面の向こうの畑元帥を見失ってしまう。焦った浩平は、列車がまだ市街地を走っているうちに、ゲームUIの画面から必死にカーソルを動かした。


「頼む、これでお気に入り地点としてピン留めできてくれ……!」


祈るように列車のアイコンを右クリックし、お気に入り登録を実行する。すると、画面に『移動オブジェクトを登録しました』という見慣れない通知ログが表示された。


「動いている車両でもピン留めできるのか。初めて知ったな……」


それからしばらくして、列車は夜の闇を突き進み、完全に広島市の境界線を越えて地図の未探索エリアへと突入した。浩平は半分諦めながら、画面の隅にピン留めされた「列車」の項目をクリックしてみる。


画面が暗転し、次の瞬間、FPVカメラの視点は列車の薄暗い客車内部へと滑り込んだ。驚いたことに、移動する車両の内部であれば、エリア外であっても完全に視界を維持できる。さらに、ガタゴトと揺れる車窓から見える外の暗闇の景色が、列車の移動に伴って、浩平の「移動可能エリア」をほんのわずかずつだが広げていることに、彼は後になって気づくことになる。


列車が山陽本線を東へと走り続ける中、車内には重苦しい沈黙が流れていた。

厳かな表情で座席に腰掛ける畑元帥、その傍らで書類を整理する副官、そして周囲を取り囲むように待機している5名の側近の随行将校たち。

しかし、浩平がカメラの暗視モードを切り替えながら彼らの表情を観察していると、どうしても1人の将校の挙動が不審に思えてならなかった。他の者たちとは明らかに違う、張り詰めたような、強張った表情を崩さない男がいた。


「東京へ行って天皇陛下に直訴するんだ、誰だって心臓が飛び出るほど緊張はするだろうけど……。念のため、ステータスをチェックしておくか」


浩平は画面上でその将校の体をクリックし、詳細な個人情報を展開した。


柳瀬やなせ 一真かずま 陸軍中佐 / 陸軍省軍務局所属 ※要注意人物※】


画面に浮かび上がった赤い「要注意人物」の文字を目にした瞬間、浩平の背筋に冷たい緊張が走った。


「要注意人物ってなんだ? 陸軍省軍務局の過激派……。おいおい、それってつまり、何が何でも戦争を続けたいと思っている連中のことじゃないか。まさか、この中佐、畑のオヤジが東京に行く目的を勘付いて、列車の中で亡き者にするつもりか!?」


脳裏に、現実世界で調べた終戦間際の歴史の断片が鮮烈によみがえる。


「やばい、映画でも見たぞ。終戦に反対する若手将校たちが起こしたクーデター事件……何だっけ、宮城事件か!」


浩平はすぐにブラウザの別タブを開いて「宮城事件」を検索し、30秒ほどでその概要を頭に叩き込んだ。陸軍の中枢には、和平に動こうとする重鎮を「国賊」とみなして暗殺をも辞さない過激な一派が確実に存在する。その刺客が、この密室のような列車内に潜んでいるのだ。


「最悪だ。今すぐ畑や副官に文字入りの紙を転送して知らせるか? いや、この暗闇の中で突如紙切れを出しても、驚いている間に撃たれたら終わりだ。だったら、物理的に介入する防衛プログラムを組むしかない!」


浩平はすぐさま開発環境を開き、畑元帥の命を確実に保護するためのPythonコードを猛烈な勢いで書き始めた。


プログラムのロジック

STEP1. 周りの人間や所持物(ポリゴン)の運動方向(速度ベクトル)を畑元帥(ポリゴン)に直撃するかを常に無限ループで計算する(レイキャスティング)

STEP2. その速度ベクトルが一定以上、そして物体のカテゴリが殺傷能力があるもの(例えば、ナイフ、刃先、弾丸、金属、針)かを判定する

STEP3. STEP2がTrue判定の場合、その衝突コースに、予め購入した10枚のポリカーボネートの防護用シールド(盾型・1枚あたり 27,000ゼニ)すぐ転送し、防御させる

STEP4. 防御後、防護用シールドをゲーム内のインベントリへ自動回収する

STEP5. STEP1からSTEP4を無限ループで常にモニタリング


「これでよし。不測の衝突判定(弾道ベクトル)があれば、システムが自動的に盾を挟み込む。予算は削れるが、畑のオヤジを死なせるわけにはいかない!」

浩平はコードを実行し、画面を食い入るように見つめた。


◇◇◇

闇の中の弾道ベクトル

◇◇◇


深夜、列車が兵庫県の山間部へと差し掛かった頃、客車内でついに浩平が恐れていた事件が発生した。


柳瀬中佐がじりじりと畑元帥の座席へと近づき、押し殺した声で問いかけた。


「元帥閣下。お尋ねいたします。閣下は、この期に及んで東京へ赴き、一体何をなされるおつもりですか。まさか……敵に無条件降伏を乞うような真似をされるのではありますまいな」


その無礼極まる物言いに、副官が「柳瀬中佐、元帥に対して不敬であるぞ!」と一喝した。

しかし、畑元帥はただ静かに柳瀬を見据え、毅然とした態度で言い放った。


「軍務局の中佐が、わしの行動を詮索するな。わしは我が国と国民にとって、今なさねばならぬ最高最善の職責を果たすために往くだけだ」


「……やはり、終戦を直訴されるおつもりか! 国賊め!!」


柳瀬中佐の顔が狂気で歪み、軍服の懐から南部十四年式拳銃を素早く引き抜いた。銃口が、真っ直ぐに畑元帥の胸元へと向けられる。


「皇国の戦を汚す者は、元帥といえども容赦はせん!!」


パァンッ!!!


狭い客車内に、凄まじい銃声が轟いた。副官たちが悲鳴を上げるよりも早く、放たれた弾丸が畑の心臓を撃ち抜く――はずだった。


ガキィインッ!!!


激しい金属音が響き、畑元帥の目の前の空間に、突如として夜の闇を跳ね返すような「頑強な透明の盾」が出現した。弾丸はその透明な壁に直撃してひしゃげ、床へと虚しく転がり落ちる。そして次の瞬間、その透明な盾自体も、まるで最初から存在しなかったかのように、一瞬で消えてなくなった。

車内は暗いが、火花が一瞬だけ照らしたその光景は、あまりにも異常だった。


「な……なにィッ!?」


柳瀬中佐は我が目を疑い、畑が無傷であるのを見て錯乱したように叫んだ。「化け物め!」


パパパンッ!!!


狂ったように引き金が引かれ、さらに3発の銃弾が立て続けに放たれる。しかし、そのすべてが、撃ち出される瞬間に現れる透明の盾によって完璧に遮断され、火花を散らして床へ弾かれた。


「ぐ、軍務局の狂人が! 閣下をお守りせよ!!」


ようやく我に返った副官と残りの4名の随行将校たちが、一斉に柳瀬中佐の体へと飛びかかり、その腕をねじ上げて床へと組み伏せた。拳銃が手元から弾き飛ばされる。


床に押さえつけられながら「離せ! 国賊ども!」と喚く柳瀬の声を遠くに聞きながら、畑元帥は自らの胸元を手で触り、静かに目を閉じた。

目の前で突如として現れ、消えた未来の盾。それが何を意味するのか、畑には痛いほどよく分かっていた。


(……守られたか。天の監視者殿。あなたは、広島から遥か離れたこの暗黒の列車内すらも、すべて見通しておられるのだな。この老骨の命、まだ散らすべきではないと……そう仰るか)


畑元帥は深く息を吐き、虚空へ向けて心の中で深く感謝の頭を下げた。


◇◇◇

深夜の尋問と、帝都の罠

◇◇◇


「元帥閣下! 裏切り者、国賊の身内が出てしまいました! 今回の上京は一旦中止し、広島へ引き返すべきです!」


犯人を床に押さえつけながら、副官が悲痛な声を上げた。


しかし、畑元帥は毅然としてそれを拒否した。


「ならん。ここで引き返せば、それこそ過激派どもの思う壺だ。この男を拘束したまま、列車は予定通り東京へ進める。……だが、そ奴を縛り付けるまともな縄もないな」


その様子を画面越しに見ていた浩平は、「はい、お助け資材デプロイ!」と呟き、ショップから頑丈な『麻縄 10メートル(200ゼニ)』を3本ほど購入。パッケージを解除し、畑元帥の足元の床へと直接転送した。


ストン。


薄暗い床の上に突如として現れた3巻の太い縄を見て、副官たちは一瞬ギクリとしたが、「監視者殿からのご援助だ!」と察し、すぐさまそれを使って柳瀬中佐の全身を、指一本動かせないほど強固に縛り上げた。


そのまま車内で行われた即席の尋問は、過激派将校の狂信的な自白によって、事態の深刻さを浮き彫りにした。


「笑わせるな! 陸軍省軍務局の同志たちは、お前のような腑抜けた元帥の動きなどすべて把握している! 広島で出所不明の怪しい物資を動かし、不穏な上京を企てる老害など、生かしておけるか! 東京へ着けば、貴様らを待っているのは憲兵の網だ! 宮城は、我ら徹底抗戦派の手の中にあるのだからな!」


柳瀬中佐は口から血を吐きながら嘲笑ったが、畑元帥はその脅迫をただ冷ややかに見下ろすだけだった。


明けて、1945年7月31日、午前11時00分。

長時間の夜行軍を経て、特別急行列車はようやく終着駅である帝都・東京駅のプラットフォームへと滑り込んだ。


客車の扉が開き、長旅の疲労をにじませた畑元帥、副官、そして随行員ら4名が、縛り上げた柳瀬中佐を中央に挟むようにしてホームへと降り立った。


しかし、彼らが足を一歩踏み出した瞬間、駅の構内に鋭い怒号が響き渡った。


「動くなッ! そこまでだ!」


ホームの柱の影や改札口から、銃身を着けた小銃や拳銃を構えた、数十名におよぶ東京憲兵隊の集団が一斉に飛び出し、畑元帥たちを完全に包囲した。その先頭に立つ憲兵将校が、冷酷な文字の並んだ令状を突きつける。


「畑俊六元帥、ならびに随行員一同。貴様らを『物資の不当隠匿および不正流用、統帥権への著しい越権行為、ならびに国家反逆の罪』を以て、憲兵司令部へ連行する!」


画面の前でこの光景を見ていた浩平は、激しい怒りと共にマウスを握りしめた。


「ふざけるな、軍務局の過激派どもめ、先手を打って憲兵を動かしやがったな! おい、オヤジ! 今すぐその憲兵たちをシステム(物理)の力で全員駆除してやる! 待ってろ!」


浩平が攻撃用アセットの選択画面を開こうとした、まさにその時だった。


画面の中の畑元帥は、まるでモニターの前にいる浩平の怒りを事前に予期していたかのように、毅然とした動作でスッと右手を上方へ掲げた。

それは、憲兵たちへの降伏の合図ではない。虚空にいる「監視者(浩平)」に向けて、『手を出すな、ここで暴れては全てが水の泡になる』と、強く制止するためのサインだった。


「元帥閣下……」


副官たちが悔しさに唇を噛む中、畑元帥は一切の取り乱しを見せず、静かに憲兵たちに連れられ、薄暗い東京駅の地下通路の奥へと連れ去られていった。


歴史を書き換えるための帝都の政治戦は、到着早々、国家中枢の暗黒の罠によって、最悪の局面を迎えていた。


【現在のクレジット残額:????ゼニ】

【ゲーム内で関わった人数:約123,500人】

おまたせしました。

今日は気まぐれ投稿なので、次は月曜日にする予定となります。

どうも畑元帥は死亡フラグ満載ですが死なせないのでご安心ください(笑)。

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― 新着の感想 ―
さて、どないすべかねぇ このタイプのカルティストは写真や映像や動かぬ証拠見せても嘘だといいかねんってか大抵は言うからなぁ、それも声の大きいやつが特に そして取り返しがつかなくなってから態度豹変して君が…
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