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1945年7月30日 都市インフラ運営は想像以上難しい その1

この作品はフィクションです、実在の人物や団体などとは関係ありません

ゲーム内クレジット残額:27,032,580ゼニ

ゲーム内で関わった人数:26人(すずと周辺家族) + 31人(黒田藤堂の謀略関係) + 10人(及川院長関係) + 631(陸軍病院治療患者) + 4人(巡洋艦救出人員) + 4750人(海軍病院救助患者) + 667(浩平一時救助患者) + 260(水配給関係) + 35000人(自動運用ORS+薬関係) = 41379人


◇◇◇

第146章:インフラ運営という重責

◇◇◇


1945年7月30日、午前7時00分。

浩平は「責任」と呼ばれる無慈悲な目覚まし時計の音によって、強制的に意識を引き戻された。


この謎の「ゲーム」を始める前、フリーランスのプログラマーとしての彼は、平日に7時間、休日には8時間の睡眠時間を規則正しく確保する生活を送っていた。しかし今となっては、たとえ5時間半でも細切れに眠れれば御の字という有様だ。だが、彼の冷徹な理性は、感傷に浸る贅沢な時間など1ミリも与えてはくれない。浩平は目脂めやにを擦りながら、すぐに稼働し続けているパソコンモニターの前へと這い寄った。


【現在のクレジット残額:27,032,580ゼニ】


「寝る前より、約50万ゼニ強が減っているな……。深夜1時の広域運用開始から6時間。バックグラウンドで走らせてこれか」


浩平がゲームUIの出力ログを詳しく展開すると、ORS(経口補水液)の自動調合・生成コストで約37.5万ゼニ、8時間間隔で設定していたペニシリンの一斉胃壁投与で15万ゼニが確実に引き落とされていた。

そしてその対価として、システムが「救助中(生存維持)」としてカウントした脱水状態および感染症状態の呉市民の総数は、一気に約35,000人にまで跳ね上がっていた。


ログの内訳は、浩平の想定を寸分の狂いもなく裏付けていた。

米軍の大規模空襲から2日、ライフラインが完全に途絶した呉市内(人口約20万人)で、真夏の猛暑による熱中症、急性脱水、不衛生な井戸水を口にしたことによる下痢症を発症していた「潜在的脱水患者」が約35,000名。同時に、熱傷の傷口へのウジ虫感染、土壌細菌による破傷風リスク、密集した避難所の劣悪な環境による戦時肺炎を発症しかけていた「潜在的感染症患者」が約15,000名。


概算すると、呉市の都市規模であれば、この自動救助システム(dignity_for_life_ver_kure_global.py)を24時間ノンストップで回すだけで、1日に約240万ゼニの維持費ランニングコストが発生することになる。


「予算はかかる。だけど、35,000人の命がかかっているんだ。一度システムを組んで助けると決めたなら、最後までやり通すべきだ。……しかし、これでもまだ、生きるための『必要最低限の治療』に過ぎない。本格的な水配りも、食糧配給のコストも、この中にはまだ入っていないんだよな」


呉市に限らず、1945年7月末の日本の都市間における配給食糧は、平均して1日に1200キロカロリーにも満たない。成人男性が日常活動を行うために必要なエネルギーの概ね半分という、過酷を極めた飢餓状態がすでに長く続いていたのだ。


「実際に都市規模のインフラ運営に手をかけてみてよく分かったけれど、ゲーム内でもお米(主食)のバルク購入って意外と高い。カロリーベースで一番コストパフォーマンスが良いのは砂糖や油、次に小麦粉だな……。だけど、そもそも俺のメインミッションは全広島市や呉市の市民を養うことなのか? それは少しこのシステムの設計思想ゴールが違う気がする。だが、少なくとも目の前で餓死・病死しかけている状態を検知したなら、動けるうちに救うべきだ」


浩平はFPVカメラの視点を、昨夜遅くまで粘り強く救助活動をしていた市街地の臨時収容所へと回した。

画面の向こうでは、民間の警備団員たちが不眠不休の徹夜で、ポリ袋に小分けしたORSという、彼らにとっての「命の水」を配り続けていた。急造の組織ゆえに簡易的な帳簿しか付けられておらず、1家庭への重複受領も防げていない簡易な配給計画だったが、それでも一つの収容所あたり追加で1,000家庭、五つの収容所合わせて計約5,000家庭へ、「救命の水」を届けることに成功していた。


浩平はさらに、各収容所の全体的なステータス情報をチェックした。

朝を迎えるまでに、合わせて30名ほどの名前が「死亡」フラグへと切り替わり、ログから消えていた。浩平は奥歯を噛み締め、その人間らしい落胆と「これは仕方のない事だ」と無理矢理に受け入れつつも、そっとステータス画面を閉じた。


◇◇◇

海軍病院の朝と、不審な物資

◇◇◇


ちょうどその頃、朝霧に包まれた呉の海軍病院の院庭では、灰色の空の下で朝の炊き出しが始まっていた。


昨夜の緊急処置の直後、陸軍医療班から真っ白な食パンがふんだんに配られたため、浩平が前日支給した1,000kgの米と750kgの小麦粉は、手付かずのまま倉庫に眠っていた。

朝の病院内には、薪の煙の匂いとともに、かすかな塩の香りが漂う。歩行可能な軽症の負傷兵や病院職員には、「塩むすび」が一つずつ配られ、爆風の熱気で気道を熱傷した中等症の患者たちには、喉を通りやすいように細心の注意で炊かれた「塩入りのお粥」が慎重にスプーンで運ばれていた。さらに、固形物を一切受け付けない重症患者たちの口元には、生命維持のための貴重な「砂糖水」が染み込ませたガーゼを通じて与えられていた。


この1,000kgの純白の米という、現在の日本において宝にも等しい巨大な備蓄を頼りに、呉市の既存の海軍組織や鎮守府の周辺機関へも、病院側から米や小麦粉が緊急で小分けに融通され、それぞれの拠点で一斉に炊き出しが行われていた。昨日までの絶望的な飢餓の空気は、この圧倒的な「兵站の出現」によって、じわじわと形を変えつつあった。


そんな中、すすのついたロビーの片隅で、少し冷めた塩むすびを一個、無造作に口へ運んでいた橘中尉は、周囲の喧騒の隙を見計らい、海軍病院長の元へと歩み寄った。昨夜、天の監視者から自分の太ももの上へ直接落とされた、あの不思議なメッセージの件を報告するためだ。


「――院長閣下。橘にございます。少々、個人的に、告知せねばならぬ事項がございまして」


白髪の海軍病院長は、徹夜の手術で真っ赤に充血した目をしばたたかせながら、橘を振り返った。


「橘中尉か。陸軍との合同医療班の立ち回りは見事だった。して、告知とは何だ?」


橘中尉は、懐から大切に保管していた浩平の印字ペーパーを取り出し、声を潜めてやんわりと言葉を選びながら説明した。


「実は、昨夜の午前1時過ぎ、監視者殿より私個人へ直接、連絡がございました。……海軍病院の倉庫へ、今後の治療に十分な量の医療物資、ならびに医薬品、ORSの材料一式を『追加補充』した、と。朝になったら院長へ報告せよとの指示にございます」


「何だと……!?」


病院長は塩むすびを握った手を止め、橘の手の手帳の紙片をひったくるように見つめた。そこには確かに、独特の書体で物資の補充完了と、橘の身体を気遣う文言が並んでいる。


「待て、橘中尉。昨夜の午前1時といえば、海軍病院の周囲は我が警備兵と憲兵が厳重に包囲していたはずだ。物資を積んだ陸軍の大型車両など、一台も正門を通っておらんぞ! 一体、いつ、誰が、どのようにして暗闇の地下倉庫へ侵入し、物資を運び込んだのだ!?」


詰め寄る院長の猛烈な剣幕に、橘中尉は視線を落とし、困惑の表情で首を振るしかなかった。


「……申し訳ございません。私自身も、その具体的な手法の詳細は一切存じ上げないのです。ただ、私の直属の上官である黒田閣下からは、『監視者殿のなされることに、常識の枠を当てはめて詮索するな。配られた刃をただ研ぎ澄ませ』とだけ伝えられております。私に言えるのは、それが事実であるということだけです」


「バカな、軍の倉庫に幽霊が荷物を置いたとでも言うのか――」


院長が信じられないというように声を荒らげた、まさにその瞬間だった。


「い、院長閣下!! 大変にございます! 病院長閣下!!」


中央廊下の奥から、地下の物資管理を担当していた海軍の兵站兵ら数名が、顔を真っ白に変え、軍帽が脱げるのも構わずにドタドタとロビーへ駆け込んできた。彼らは院長の前で派手に転びそうになりながら、息を切らせて絶叫した。


「そ、倉庫が……! 昨夜、完全に空になっていたはずの地下の第2倉庫が、見たこともない白い箱(滅菌ガーゼ)やエタノールの一斗缶、そしてうずたかく積まれた上白糖の袋で、天井に届くほど埋め尽くされております!!」


「水です! 空だったはずの折りたたみタンク600個すべてに、キンキンに冷えた綺麗な水が、並々と満ちております! 誰の指図で、いつの間に搬入されたのか、台帳にも一切の記録がございません!!」


「な……何だと……!?」


病院長は手に持っていた塩むすびを床へ落とし、橘中尉の顔と、届けられたばかりの紙片を交互に凝視した。

常識が完全に崩壊していく衝撃のなかで、老院長はガタガタと膝を震わせ、ただ地下倉庫の方向を呆然と見つめることしかできなかった。


◇◇◇

広島陸軍病院の台所

◇◇◇


パソコンのモニター越しに、海軍病院長が腰を抜かしている様子を眺めていた浩平は、ハッと自分の頭のコンソールを叩いた。


「あ、そうだ。呉のインフラ運営に夢中になりすぎて失念していた。広島の陸軍病院だって、昨日の時点で食糧の在庫が底を突きかけていたじゃないか。こっちを悠長に構えている時間はないな」


浩平は最速でFPVカメラの視点を広島の陸軍病院へと切り替えた。


ちょうどこちらでも朝の食事の時間を迎えていた。調理場から配られたのは、戦時下でお馴染みの「すいとん」だ。しかし、昨日の朝、浩平が転送した段ボール箱の中に、新鮮な卵やキャノーラ油が含まれていたため、陸軍病院の朝食は当時にしては例外的なほど豪華な「卵入りすいとん」にアップグレードされていた。汁の表面には、ほんの少しの黄金色の油と、刻んだ瑞々しい青ネギが浮かんでいる。


なお、広島陸軍病院の奥の病床に横たわる、約30名の重篤な熱傷患者たちの前には、すいとんの代わりに、浩平がバルク購入した現代のスポーツドリンクや特製の砂糖水が、スプーンや布を通じて静かに与えられていた。


パチパチと薪が爆ぜる音が響く暗い食堂の片隅で、陸軍病院の医師や看護婦、職員たちが、患者たちと全く同じ「卵入りのすいとん」の器を両手で包み込み、交互に汁をすすっていた。

美味い、と誰かが小さく呟いたが、その表情は一様に暗く、険しい。


「……美味いが、この美味い汁も、これが最後かもしれんな」


一人の軍医が、器の中のすいとんを見つめながらぽつりと漏らした。


「ああ。米の在庫は、もう、今日のお昼か夜の『あと一食分』くらいしか残っていません。職員の分を削っても、患者たちに粥を回せばそれで完全に底を突きます」


配膳を担当していた若い看護婦が、困惑に声を震わせる。


「医薬品は昨日のおかげでまだ辛うじて持っているが……患部を保護するワセリンや、一部の必須の消耗資材の在庫は、すでに昨日一日の戦いで完全に使い果たされてしまった。今日、もしまた広島に新たな負傷兵の波が押し寄せたら、我々は今度こそ、文字通り素手で地獄に立ち向かうことになるぞ……」


誰もが、卵の優しい味を感じながらも、目の前に迫る「物資の欠乏」という恐怖に、胸を締め付けられていた。


モニターの向こうで、器を抱えたまま静まり返る陸軍医療班の絶望的なバイタルデータを見つめながら、浩平はマウスを力強く握り直した。


「待たせたな。今、そっちの倉庫の在庫も、俺が残さず書き換えてやる」


午前7時30分。

2700万ゼニの予算を抱えた浩平による、広島・呉を股にかけた次なる大規模な「物資の支給」が、静かにその実行命令を待っていた。


◇◇◇

兵站に化ける元帥の執務室

◇◇◇


1945年7月30日、午前7時30分。

広島陸軍病院のピンチを救うべく、次なる物資配給の「段取り」を組むため、浩平はFPVカメラの視点を第2総軍司令部、畑俊六元帥の執務室へと切り替えた。


(まだ朝の7時半だし、さすがにまだ出勤はしてないだろう。とりあえず誰もいない部屋に米や小麦粉や薬をドカッと積み上げて、俺に8,500ゼニの古書を買わせたあの頑固オヤジに『至急病院へ配達せよ』って紙片を残しておけばいいか……って、あれ。居た!)


モニターに映し出された広々とした元帥執務室のデスクの後ろには、すでに軍服のボタンまで厳格に留め、背筋をピンと伸ばして椅子に腰掛けている畑元帥の姿があった。


「まあ、居てくれた方が好都合か。お年寄りの朝が早いのは、現代も昭和20年も関係ないってことだな……」


浩平は画面越しに少しいたずらっぽい笑みを浮かべると、陸軍病院の運営を向こう数日間にわたって支えるための物資一式をインベントリから選択。畑元帥の目の前にある来客用スペースの座標へ向けて、一括転送を実行した。

広島の陸軍病院に収容されている呉からの避難者は600人強。規模としてはそこまで膨大ではないため、医療物資の全体量は呉海軍病院に送り込んだ分の概ね5分の1に調整してある。ただし、米、小麦粉、上白糖といった主食・カロリー源のボリュームは意図的に多めに設定した。これは病院の患者や職員らの食事であると同時に、広島の陸軍司令部という巨大な組織をこちらの意図通りに動かすための、最も効果的な「吊り下げニンジン」でもあった。


フッ、フッ、フッ、フッ、フンッ!!!!


静まり返っていた執務室の空気が、連続して激しく爆ぜた。

次の瞬間、畑元帥の目の前にあった広々としたソファーや来客用のガラステーブルが、凄まじい質量を持った物資の山によって一瞬にして埋もれ、視界から消失した。


精米(業務用20kg袋)/ 50袋(総額250,000ゼニ / 計1,000kg)

業務用小麦粉(25kg袋)/ 30袋(総額75,000ゼニ / 計750kg)

業務用 上白糖(20kg袋)/ 30袋(総額120,000ゼニ / 計600kg)

業務用 食塩(25kg袋)/ 5袋(総額10,000ゼニ / 計125kg)

消毒用エタノール一斗缶(18L)/ 10缶(総額60,000ゼニ / 計180L)

医療用滅菌ガーゼ(大容量1000枚入カートン)/ 20箱(総額60,000ゼニ / 計2万枚)

トラマドール錠(25mg/1箱1000錠)/ 2箱(総額17,600ゼニ / 計2,000錠)

ジクロフェナク錠(25mg/1箱1000錠)/ 2箱(総額12,200ゼニ / 計2,000錠)

ペニシリン錠(1000mg/1箱1000錠)/ 10箱(総額100,000ゼニ / 計10,000錠)

ステロイド錠(5mg/1箱1000錠)/ 4箱(総額42,000ゼニ / 計4,000錠)

白色ワセリン(500g)/ 200缶(総額100,000ゼニ / 計200缶)

【総額:726,800ゼニ】


「う、うおおっ!?」


老元帥は椅子から飛び上がり、持っていた万年筆を床に落とした。天井に届かんばかりに積み上げられた麻袋の山、そして現代の鮮やかなプラスチック容器や段ボール箱が、強烈な精米の香りと共に執務室を物理的に圧迫している。


畑元帥が呆然と立ち尽くす中、その山の一角から、ハラリと一枚の印字された紙片がデスクの上へと滑り落ちた。


『物資に関して、食糧は司令部の必要分を取って有事の時まで保管して良し。ただし、残りの少なくとも3割以上は今すぐ病院に届けよ。なお、自力で食事ができない脱水患者や重症患者用の経口補水液の調合比率は【水1L:砂糖40g:塩3g】だ。陸軍病院の及川院長へ至急伝えるように ――監視者』


◇◇◇

乾電池と映画と天皇陛下

◇◇◇


「か……監視者殿! ま、待ってつかぁさい!!」


畑元帥は紙片をひったくるように掴むと、虚空に向かって、普段の威厳からは想像もつかないほど必死な声を張り上げた。広島弁が思わず口を突いて出る。


「物資は、物資は誠に有り難いんじゃが……っ! 昨日いただいた、あの、小さい映写機(ポータブルDVDプレイヤー)が、夜中にどうしても動かんようになってしもうたんじゃ! 映らんとです! あの『恐るべき未来の映画(原爆の記録)』は、何が何でも、近いうちに天皇陛下に直接お見せせにゃあいかんのですッ! どうか……どうか、再び映るように手を貸してはもらえんだろうか。頼む、頼みますけぇ!!」


必死に頭を下げる老軍人の姿をモニターで見た浩平は、思わず頭を掻いた。


「ああ、やっぱり電池切れか。そりゃそうだ、もともと単三のアルカリ電池6本で4時間動けばいい方のポータブル機器だもんな。限界までリピート再生してりゃ、あっという間に電池切れになるよね」


浩平はゲーム内のショップ画面を開き、『単三アルカリ乾電池パック(8本入り/150ゼニ)』を3セット購入した。これだけあれば、現地で4回のフル交換サイクルが回せる。

さらに、昨日の開封時にインベントリの一時アイテムリストに残ったままになっていた、DVDプレイヤーの「日本語の取扱説明書」のオブジェクトを選択し。電池パックと共に、畑のデスクの目の前へ転送した。


ストン。


現れた未来の乾電池と説明書に、畑元帥がハッと息を呑む。その傍らには、追記されたメッセージが添えられていた。


『交換用の電池と説明書だ。電池には「向き(極性)」という物理的な規則があり、逆に挿入すれば機器が完全に破壊される可能性がある。よく説明書を読んだ上で慎重に交換作業を行ってくれ。陛下に映画をお見せする件は了解した。映画の内容は他にも種類がある。後日、適切なタイミングで渡すから、まずは目の前の陸軍病院への物資配達を頼む』


「極性……向き、ですな。分かりました、この取扱説明書を熟読いたします! 映画の件も、感謝の言葉もございらん……!」


畑元帥は未来の乾電池を宝物のように胸に抱きしめ、深く、深く虚空へ一礼した。監視者の存在が自分の大いなる目的(終戦への直訴)を理解し、さらなる支援を約束してくれた。その事実が、この老将の背中を強烈に押し上げた。


「副官! 誰かおらんか! 秘密を守れる信頼できる者を、今すぐ集めぃ!!」


元帥の怒号のような召集命令を受け、数分もしないうちに、司令部の奥から副官をはじめとする最側近の幕僚や衛兵たち十数名が、血相を変えて執務室へと飛び込んできた。


しかし、扉を開けた彼らは、一様に言葉を失って完全にフリーズした。


「……な、長官。これは、一体……」


いつもなら整然としているはずの、元帥の執務室が、床が見えないほどの「物資の山」によって完全に占拠されていたからだ。漂うのは、配給物資では絶対に有り得ない、混じり気のない純粋な米と砂糖の甘い匂い。


「阿呆、口を開けて呆けとる暇があるなら手を動かせ!」


畑元帥はデスクを叩き、毅然と言い放った。


「天の監視者殿より、直々に兵站の下賜かしがあった! これより、我が総軍司令部の総力を以て、この物資の山を即座に捌く! この米・小麦の山から3割りと厳密に勘定し、全部の医療物資と共に今すぐ大型車両へ積み込め! 陸軍病院の及川が待っとる、広島陸軍病院へ直ちに届けるんじゃ!」


「ハッ……!! 直ちに作業に入ります!!」


副官たちは驚愕のあまり心臓を激しく脈打たせながらも、これが昨日から司令部の上層部を震撼させている「超常の兵站」そのものであると察し、一言の疑問も挟まずに猛烈な勢いで袋の搬出を開始した。


◇◇◇

午前9時00分。

◇◇◇


太陽が高く昇り、広島の街が本格的な朝の熱気に包まれる頃。

畑俊六元帥自らが助手席に乗り込んだ陸軍の大型トラックが、精米300kg、小麦粉250kg、上白糖200kg、そして現代の特効薬やワセリンが詰まったすべての医療物資を荷台に載せ、広島陸軍病院へと向けてエンジンを響かせながら出発していった。


なお、この日の正午。

未だ空襲の影響が生々しく残り、配給の遅れで誰もが飢えに顔を青くさせていた第2総軍司令部の地下食堂では、ある「異常事態」が発生することになる。


「……おい、今日の飯、なんだこれ」


「う、嘘だろ。配給の麦もぬかも入っていない……真っ白な、銀シャリだ」


長年、まともな主食を口にしていなかった頑強な陸軍兵たちが、器に盛られた信じられないほど眩しい純白の白米を前に、箸を持ったままガタガタと震えていた。一口口に含めば、圧倒的な米の甘みが広がり、食堂のいたるところから男たちの嗚咽と、震える歓声が湧き上がった。


浩平が吊り下げた「純白のニンジン(米)」は、飢えた陸軍司令部の末端組織の士気を、これ以上ないほど強烈に、そして完璧に掌握し始めていた。


【現在のクレジット残額:26,124,530ゼニ(※自動運用ORSコスト含む)】

【ゲーム内で関わった人数:約41,500人】

おまたせしました

リアル世界の兼ね合いで、しばらくは二日間隔の投稿になります

別作「地球の管理者」が週1更新になりがちで、ちょっと申し訳なく思っている今頃です

今回は呉市水道局や宮原浄水場の話まで書こうと思ったが、

文字数的に1話だけでは無理と分かった/(^o^)\

救える命への援助をやめずに、ステージは少しずつ広島に戻していきたいと思います

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― 新着の感想 ―
始めまして。初めて貴方の作品を読ませて頂きましたが面白いですね。 一応ですが、星一爆撃についてです。それは『ポイントを入れて作者を応援しよう!』に入れられる星だったりしませんか? もしそうであれば間違…
偽札作れへんのかな?$刷って空港ばらまく飛行機飛べないは稚拙かあ。空港に大量の虫発生させて感染症とかどうだろ?細菌兵器認識で報復毒ガスとかはまずいかあ。
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