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1945年7月29日 チートの力

この作品はフィクションです、実在の人物や団体などとは関係ありません

このエピソードは物語の需要でプログラムのコードも掲載されていますが、読まなくでも物語への理解は妨げないので、興味のない方は飛ばしてOKです

SF空想科学日間ランキング1位、SF空想科学週間ランキング1位、本当にありがとうございました!

※内容を反映する為、タイトルを「チートの力」に変更しました

ゲーム内クレジット残額:145,610ゼニ

ゲーム内で関わった人数:21人(すずと周辺家族) + 5人(呉市避難家族) + 31人(黒田藤堂の謀略関係) + 10人(及川院長関係) + 631(陸軍病院治療患者) + 4人(巡洋艦救出人員) + 126人 + ????人(今までの呉の負傷者治療) = 818 + ????人


◇◇◇

地獄の三丁目から立ち上がろうとする人々

◇◇◇


1945年7月29日、午後3時00分。

横転した巡洋艦からの決死の救出劇を終えた浩平は、息つく間もなくカメラの視点を移動させた。向かった先は、事前に「お気に入り地点」へ登録しておいた、呉市中心部の臨時収護所、あの「地獄の三丁目」である。


そこに広がっていたのは、文字通りの阿鼻叫喚、人間の尊厳が文字通り焼け落ちた焦土の縮図だった。


「おい、そっちの男はもう動かん! 息がない!」


「こっちへ運べ! まだ若いやつを優先するんだ!」


炎天下の泥の上に、煤と血にまみれた被災者たちが隙間なく並べられている。現場で立ち働くのは、白いたすきを巻いた地元の警防団の男たちや、臨時の搬入係を名乗り出た民間人たちだけだった。彼らは皆、すでに限界を迎えた顔で、涙と鼻水にまみれながら、生きる見込みの薄い者を冷酷に選別する「泥と血のトリアージ」を強いられていた。


「水……水をくれ……」


「痛い、熱い、お母ちゃん……っ」


あちこちから上がる、この世のものとは思えないうめき声と、肉が焦げた悪臭。警防団の一人が、空っぽの水桶を地面に叩きつけて男泣きに泣いた。


「クソッ、水すらない! これじゃ、薬を塗る前にみんな干からびて死んじまうぞ……!」


画面越しにその地獄絵図を突きつけられた浩平は、一瞬、吐き気に襲われそうになった。だが、奥歯をガタガタと震わせながら、自らの両頬を強く叩く。


(地獄だとは分かっていた。だけど、現場を直視して問題を分析し、解決しないとどうにもならない。……ここは感情を殺せ。パフォーマンスの最適解だけを導き出すんだ)


浩平は冷徹なプログラマーの目になり、収容所全体をシステム上で一括クリックした。表示されたのは、目を覆いたくなるようなステータス一覧表だ。

ここの収容人数約200人のうち、物資が完全に途絶えたこの二日間だけで、死者はすでに70人。生き残った140人のうち、実に9割以上が『重度熱傷』『極限脱水』『ショック状態』の瀕死のステータスを示していた。


「とにかく、手を動かせ! 治療よりも、まずは脱水死にさないための水分、スポーツドリンク(ORS)を体内に流し込むのが最優先だ!」


浩平は家庭用ショップを叩き、スポーツドリンク2Lを10本(1,500ゼニ)と、100mlの透明プラスチックカップ100個入りを2袋(600ゼニ)購入した。購入量が少ないため、割高な市販価格だが躊躇している時間はない。


続いて『購入品組み合わせ機能』のウィンドウを展開し、2Lのボトルから100mlのカップへ、均等に液体を注ぎ分ける作業を試みる。


(チッ、やっぱりスポーツドリンクの『液体だけ』の状態で均等に空中分割することはできない仕様か。受け皿になる容器を一度噛ませないと、小分けのオブジェクトとしてUIが認識してくれないんだな)


エンジニアらしい仕様の把握だ。浩平は画面下の『このレシピ(総額2,100ゼニ)を保存』をクリックし、アセットの構成を『自動給水.recipe』としてローカルに保存した。


しかし、ここで次の、そして最大のボトルネックが立ち塞がる。


「問題は……どうやってこの小さいコップに入った水分を、瀕死の患者たちに飲ませるかだ」


画面の中の被災者たちは、意識を失って顎を硬直させているか、あるいは喉の筋肉が熱傷で痙攣している。


「口が開いているとも限らないし、無理に流し込めばせて肺に入り、誤嚥性肺炎で即死しかねない。かと言って、このコップをそのまま現場の床に大量転送して、警防団の男たちに『飲ませてくれ』と頼むのは不可能だ。彼らは藤堂や黒田と違って、俺(監視者)の存在なんて1ミリも知らないんだから、怪しまれてパニックになるのがオチだ」


浩平は、FPVカメラによる『観測』と、アイテムの『転送』しかできない、ただの幽霊に過ぎない。目の前に命を繋ぐ水があるのに、物理的な肉体がないせいで、それを昏睡する人間の喉に一滴すら通してやることができない。


カメラ越しに見つめる浩平の指が、悔しさでキーボードの縁に白く食い込む。


(くそ、俺が幽霊じゃなけりゃ……待てよ。俺のインターフェースは、手足じゃない。キーボードと、コード(論理)だろ!?)


暗転しかけた浩平の脳裏に、強烈な閃きが走った。


「そうだ、Pythonコードを書こう……! それなら、人間の手による介護なんていう不確定要素をすっ飛ばして、もっとスマートで完璧な『物理介入』ができる!」


◇◇◇

プログラミングは力

◇◇◇


浩平はまず、プレビュー画面の中で、先ほど小分けにしたスポーツドリンク入りの紙コップの『パック状態』を右クリックで解除した。

すると画面上では、紙コップだけが消滅し、中身の形を保ったままの「100mlのスポーツドリンクの塊(液体のみ)」が虚空に浮かび上がった。プレビュー中なら時間は停止しているため、重力によって液体が霧散することはない。


「まずは……手動で一回、検証だ」


浩平はFPVカメラのクリッピング(壁透過)機能を使い、意識を失っている一人の少女の体内へと、カメラをダイレクトに視点突入させた。

視界が内視鏡のように真っ赤な生体組織に染まる。食道を抜け、喉から下へ、下へとカメラを潜らせ、ついに胃の内部空間の、胃壁に囲まれた、わずかな空洞へとたどり着いた。


そこへ、先ほどの「液体だけの塊」をドラッグ&ドロップで配置する。


「これ、少しでも座標がズレて胃壁の組織に干渉したら、細胞内に水分が直接埋め込まれて医療事故になるな……めちゃくちゃやばい」


マウスを握る手が緊張で震える。3Dのポリゴンをグリグリと回転させ、液体の塊が胃の空洞内に完全に収まるよう微調整を繰り返す。


2分かかってようやく安全な初期位置を特定し、転送を押した。


シュン。


少女の胃の内部空間に、100mlの無菌のスポーツドリンク(ORS)が、一滴の漏れもなくダイレクトに具現化された。喉を潤すことはできないが、小腸へ流れ込んだORSは瞬時に血液へと吸収され、極限の脱水状態から命を繋ぎ止める最高のブースターになる。


「……できた。けど、こんな手作業、一人一人の体内にカメラを突っ込んでやってられるか!」


事実、浩平がこの下準備と手動のデバッグを行っているわずか数分の間にも、一覧表のステータスから、また一人の患者のバイタルが「ゼロ」になり、静かに息を引き取っていった。

画面を見ずとも、浩平自身の頭の中では、このゲームの「リソース(ゼニ)」と「アセット(人間の命)」が秒単位で目減りしていくタイムリミットが、カウントダウンされていた。


「一瞬の遅れが命取りになる。自動化だ!」


浩平は画面右側の『Py』のアイコンを叩き、ゲーム内のプログラミングインタフェースを呼び出した。

以前、すずの家に魚を自動配給するために組んだサンプルスクリプト『buy_fish_for_suzu.py』のテキストを全選択し、Ctrl+Cで丸ごとコピー。新たに『dignity_for_life.py(命の尊厳)』というファイルを作成してベースコードを貼り付けた。


そこからの浩平の指の動きは、神懸かっていた。

現在38歳の浩平は、小学4年生の10歳の時に、親に買ってもらったパソコンでBASICのコードを打ち始めて以来、28年間をプログラミングと共に生きてきた。

これまで数々の高負荷システムを修復し、数多のバグを叩き潰してきた彼の指先が、人生で最も速い、残像の残るスピードでキーボードの海を爆走する。


打鍵音が、夜の自室にドラムの連打のように鳴り響いた。


浩平が構築したコードの論理構造は、極めて冷徹で、かつ圧倒的な慈悲に満ちていた。


【プログラムの内部処理ロジック


1. 救護所(カメラの現在場所)にいるすべての「人間」のオブジェクトをポーリング(走査)する。

2. その中から、ステータスが「死亡」ではなく、かつ「危篤・脱水・ショック」のフラグが立っている要救護者を自動で抽出。

3. 患者の3Dモデルから「胃の三次元空間ポリゴン」の形状データを取得し、その空間の完全に真ん中(重心)の座標を算出する。

4. 保留中アイテムのORSドリンクの紙コップをアンパック(消去)し、中の液体だけのオブジェクトを、先ほど算出した胃の重心へと無音・静止状態でテレポート(send)させる。

5. もし、液体のサイズが縮小した胃の壁にぶつかる(コリジョンエラー)場合は、胃のキャパシティに合わせて液量を10%ずつ自動でスケールダウン(縮小)させ、胃壁の破裂を防ぐ安全マージンを確保する。

6. 以上を、命のタイムリミットに間に合わせるため、120秒(2分)の間隔で無限にループ実行し続ける。


「よし! できた! これで行けるはずだ!」


浩平はコンソール画面のプロンプトを見つめ、震える指でコマンドを入力した。

初めて、この過去の歴史のタイムラインへ、人間の英知である「論理コード」を直接走らせるコマンドを。


『kouhei@hiroshima1945:~$ python dignity_for_life.py』


エンターキーが、鋭く室内に鳴り響いた。


◇◇◇

法律違反への自嘲

◇◇◇


スクリプトが『Run(実行)』された瞬間、画面下のターミナルウィンドウに、白いログメッセージが滝のような速度でスクロールを開始した。


***

[15:10:12] 【救命転送成功】 橘サト (女/32歳) | 胃内へのORS注入完了。

[15:10:13] 【救命転送成功】 鈴木栄治 (男/19歳) | 胃内へのORS注入完了。

[15:10:15] 【救命転送成功】 中村吉兵衛 (男/54歳) | 胃内へのORS注入完了。

***


その瞬間、FPVカメラが映し出す救護所の地獄絵図が、目に見えて「変転」を始めた。


さっきまで脱水で白目を剥き、唇を土色に変えて今にも呼吸を停止させそうだった重症患者たちが、ゴクッ、ゴクッと、何もないはずの喉を突然鳴らし、大きな「生唾」を力強く飲み込み始めたのだ。

細胞の隅々にまで未来の水分が行き渡り、浅くかすれていた彼らの呼吸が、目に見えて深く、安定した排気へと変わっていく。


「おい……! おい、しっかりしろ! ――って、おい、この人、脈がはっきりと戻ってきたぞ!?」


「こっちのお婆さんもだ! 唇に、急に赤みが差してきた!」


何が起きたのか全く理解できない警防団の男たちが、目の前の瀕死の被災者たちが次々と自力で息を吹き返す奇跡を前に、驚愕の声を上げた。


「まだ助かる! みんな、生きようとしてるぞ! 諦めるな、次の患者を中に運ぶんだ!!」


絶望と死臭に支配されていた臨時収容所に、一転して、人間たちが泥を這ってでも命を繋ごうとする「戦う活気」が爆発的に燃え広がっていく。


しかし、その感動の最中、浩平の画面には冷酷なエラーログが赤く点滅した。


『警告: ORSのストックが底を突きました。補給を要求します』


「うお、もう無くなった!? 140人以上の規模だと一瞬か!」


浩平は慌てて、先ほど保存したレシピ『自動給水.recipe』をまとめて9セット(18,900ゼニ)再購入。ストックを強制充填し、システムを再びフル稼働させた。


「ふぅ……これで平均的に一人あたり1400ml近くは胃袋に直接流し込めたはずだ。当面の脱水死の危機は回避できるな」


画面のログを見つめながら、浩平は少し財布の紐を引き締める。


「しかし、スポーツドリンクを単品の市販ベースで買い続けるのはさすがにコストが高すぎるな。次からはウォータータンクと無料のRO水を使って、自分でゲームUIの中に調合式を組み込むか……」


浩平はさらに、彼らの容態をより確実に安定させるため、プログラムコードを数行追加した。


大口窓口から「自分用」として一時的に購入し、ゲームUI上に保留スタックさせておいた強力な医療アセットを、コードの自動判別によって一人一回きりで胃内へダイレクト投与するロジックだ。


トラマドール錠(25mg)1,000錠(8,400ゼニ):火傷による脳が狂うほどの劇痛を遮断する。

ペニシリン 1,000カプセル(10,000ゼニ):傷口からの細菌感染(敗血症)を内側から根絶する。


次々とデプロイされる未来の特効薬。

重傷者たちの顔からみるみる苦悶の表情が消え、穏やかな寝息へと変わっていく様子を見届けながら、浩平はキーボードから手を離し、背もたれに深く体重を預けた。


「……これ、もし現代世界だったら、れっきとした犯罪だよな。医師法違反に、薬機法(旧薬事法)違反……うん、文句なしの『役満』だ…でも、以前すずさんに薬を渡した時点でもうアウトだもんな」


誰もいない部屋で、浩平はポツリと自嘲の笑みを漏らした。医師の免許も持たず、処方箋のプロセスも無視し、1945年の患者の胃袋へ直接、現代の劇薬を流し込んでいる。現代の法治国家の基準から見れば大罪人そのものだ。


「だが、ここでは俺のコードこそが法律だ」


画面のステータスを確認する。


【現在のクレジット残額:106,210ゼニ】


残り10万ゼニ。

夜12時のリセットが来る前に、やるべきことはまだ山積みだった。浩平は自嘲の笑みを消し、冷徹な神の目へと戻ると、次なる凄惨な臨時収容所へと、幽霊のカメラを静かに回した。


◇◇◇

呉海軍病院の「壁」

◇◇◇


午後4時00分。

浩平は怒濤の勢いで、呉市内の主要な臨時収容所、合わせて五つを巡回し終えていた。

その間にもコンソール画面には、Pythonコードによる『【救命転送成功】』のログが、文字通り滝のように流れ続けていた。


ここで浩平は、エンジニアらしい「コスト削減」を敢行する。


「やっぱり単品のペットボトルを買い続けるのは非効率だ。仕様をよく見たら、一度『アンパック』した後の紙コップや、空になったウォータータンクの空容器アセットは消滅せず、再利用可能ではじゃないか!」


メモリを効率的に解放し、オブジェクトを使い回す。プログラマーには馴染み深いガベージコレクションのような発想だった。


浩平は大口窓口から、40Lのウォータータンク(400ゼニ)、上白糖1kg(300ゼニ)、食塩500g(70ゼニ)、そして現場ごとに利用する分としてコップ100個(300ゼニ)を購入。無料給水サービスから「無料のRO水」を大量に引き込み、システムUI上で即席の『自家製ORS(経口補水液)』を調合した。


結果、一つの収容所あたりにかかる追加費用を、わずか1,070ゼニ程度にまで圧縮することに成功した。あれほど深刻だった「水分補給コスト」を3分の1以下にまで抑え込んだのだ。


【現在のクレジット残額:101,930ゼニ】


「よし、これで大中規模の収容所は一通り命のタイムリミットを引き延ばせたはずだ。……さすがに、路地裏の小規模な救護所や、個々の民家まで全てを俺一人で回すのは、時間的に無理だ」


これ以上のきめ細やかな救助は、やはり現実世界の「人間の手」による組織的な力に委ねるしかない。

幸い、ステータス画面を確認すると、藤堂中将率いる大型トラック8台の車列が、激しい土埃を上げながら呉の「海軍病院」へと今まさに滑り込むところだった。


「陸の王道兵站、いよいよ展開だな。頼んだぞ、藤堂さん」


浩平はゲーム画面の『お気に入り人物リスト』から『藤堂洋治』のアイコンをクリックし、カメラの視点を彼の頭上へと一気にジャンプさせた。


――しかし。

超高解像度のFPVカメラが映し出したのは、浩平の予想とは完全に真逆の、不穏で緊迫した光景だった。


◇◇◇

大日本帝国海軍の「プライド」

◇◇◇


「……何だと?」


トラックの助手席から降り立った黒田少将の顔が、怒りで一瞬にして引きつった。


呉海軍病院の重厚な正門前。そこには、臨時の防空頭巾や軍帽を被り、銃や銃剣を携えた海軍の警備兵、そして腕章を巻いた海軍の軍医や関係者たちが、まるで敵軍を阻むかのように一列に立ちはだかっていた。


トラックの荷台から降りようとしていた陸軍の兵士たちや、同行させた医師・看護婦たちが、その異様な殺気に足を止める。


海軍側の代表である、眼鏡をかけた初老の海軍軍医大佐が、藤堂中将と黒田少将の前に進み出ると、にべもなく言い放った。


「陸軍さんのご厚意、ならびに支援の物資には感謝いたします! しかし、人員の院内への参入は断固拒絶する! 物資だけをそこに残して、陸軍さんはもう、広島へお帰り願いたい!」


「貴様ッ、何を言っているか分かっているのか!?」


黒田が怒鳴り声を上げ、一歩前に出る。


「この呉の街の惨状を見ろ! 病院の中は負傷者であふれ返り、医療物資も人手も完全に底を突いているはずだ! 我々は、一線級の医師と看護婦、そして大量の水と食料を届きに参ったのだぞ!」


しかし、海軍大佐は冷酷な目で黒田を見据え、一歩も引かなかった。


「分かっております、黒田少将。ですが、ここは『海軍』の最高聖域たる海軍病院です。ここはもう三名の陸軍医師を受け入れたんだ!いくら未曾有の戦災とはいえ、さらに陸軍の軍医や兵隊が土足で立ち入り、我が海軍の患者を治療するなど、軍の秩序と統帥権に関わります。これ以上、陸軍が海軍の管轄に容喙ようかいすることは認められん!」


「秩序だと!? 統帥権だと!?」


黒田の額に青筋が浮かぶ。


「目の前で海軍の兵や民間人が、物資がなくて死にかけているんだぞ! メンツや縄張り争いをしている場合か!」


「これはメンツの問題ではない、軍の矜持プライドの問題だ!」


海軍大佐の背後にいる警備兵たちが、威嚇するように銃の床尾で地面を叩いた。


「物資はありがたく接収する! 荷台のパンや水は、我々海軍の手で適切に分配する! だから、陸軍の人間は一人たりともこの門をくぐることは許さん。……藤堂中将閣下、賢明なご判断を」


彼らの視線が、車列の先頭で腕を組み、静かに佇んでいる藤堂中将へと集まった。


パソコンの前でその会話を盗聴していた浩平は、思わず頭を抱えた。


「嘘だろ……。この期に及んで、まだ『陸海軍の対立』の構図が残ってたのかよ……!」


目の前には、今すぐ救わなければならない無数の命がある。それなのに、この時代の歪んだ「縦割り組織の壁」が、未来の救命物資と医療チームを真っ向から拒絶していた。

藤堂洋治という、陸軍の最高理性が、この海軍の強固な「プライドの壁」をどう打ち破るのか。浩平は息を呑み、カメラのレンズを藤堂の鋭い眼光へと絞り込んだ。


参考:浩平が書いたコード


```

# dignity_for_life.py 呉市内臨時収容所用VER


import time

from datetime import datetime

import numpy as np


# 警防団や搬入係が絶望する中、裏で常駐実行する神の兵站スクリプト

log("救護所自動トリアージシステム 起動")


while True:

now = datetime.now()

# 臨時救護所(カメラの現在座標)にいる全オブジェクト(人間を含む)を取得

targets = Environment.get_objects("カメラ.現在場所")

# 購入済みのORS(スポーツドリンク、紙コップ詰め状態)のストックリストを取得

ors_list = Environment.get_objects("購入品組み合わせ機能.保留中アイテム")


for target in targets:

# ターゲットが「人間」であり、かつ生存、かつ危篤・脱水・ショック状態であること

if target.category == '人間' and any(kw in target.status for kw in ['危篤', '脱水', 'ショック']) and '死亡' not in target.status:


if len(ors_list) == 0:

log("警告: ORSのストックが底を突きました。補給を要求します。")

break


# ストックから1個取り出す(popしてリストから除外)

cup_of_ors = ors_list.pop()


# 患者の胃の内部空間ポリゴンを取得

stomach_polygon = target.get_poly("胃組織")

# 胃の空間の中心(重心)を算出

stomach_centroid = np.mean(stomach_polygon, axis=0)


# 紙コップを消去し、中の「液体だけの塊」にする(アンパック)

liquid_ors = cup_of_ors.unpack()

liquid_ors.position = stomach_centroid


# 胃の壁と液体の衝突判定(胃からはみ出さないように自動サイズ調整)

scale_factor = 1.0

while Environment.check_collision(stomach_polygon, liquid_ors.get_poly()):

scale_factor -= 0.1

liquid_ors.scale(scale_factor) # 胃のサイズに合わせて液量を縮小(安全マージン)

if scale_factor < 0.2:

break # 胃が収縮しすぎている場合は最小量で転送


# 速度ベクトル:完全静止(0m/s)で胃を破破裂させない

speed_vec = [0, 0, 0]


# 胃の内部空間へ、液体ORSのみを無音・ノーパッケージでダイレクト転送

send(

item=liquid_ors,

place=stomach_centroid,

speed=speed_vec,

temperature=25, # 体温を奪わないよう常温(25度)に設定

status=Environment.NoPackaging, # コップなし、液体のみ

message=None # 当然、意識のない患者にメッセージは送らない

)


# ログ出力用患者情報

target_info = f"{target.family_name}{target.given_name} ({target.sex}/{target.age}歳)"

log(f"[{now.strftime('%H:%M:%S')}] 【救命転送成功】 {target_info} | 胃内へのORS注入完了。ステータス: {target.status}")


# 救護所の患者の容態を監視するため、120秒(2分)間隔でループ

time.sleep(120)


```

今回は長めです、浩平の「ずっと俺のターン!」だけでは物語が進まないので

少し藤堂中将の様子を書いてみたら文字数が一気に増えてしまった(笑)

Pythonコードは興味ない人を邪魔しないように最後に移して、コードを除けば7500文字となります


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― 新着の感想 ―
この海軍の上に大量の米でも出して潰してしまいたい……
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