1945年7月29日 信頼を勝ち取る未来の力
この作品はフィクションです、実在の人物や団体などとは関係ありません
ゲーム内クレジット残額:2,234,010ゼニ
ゲーム内で関わった人数:21人(すずと周辺家族) + 5人(呉市避難家族) + 5人(黒田の謀略関係) + 5人(及川院長関係) + 631(陸軍病院治療患者) + ????人(呉の負傷者治療) = 667 + ????人
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9.5インチの魔法
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「これを『未来からの贈り物』などという妄言で済ませるつもりか?」
冷徹な畑元帥の声が執務室に響く。精巧なクオーツ時計も、鮮明なカラー写真集も、畑元帥の強固な現実主義と軍人としての警戒心を打ち崩すには至っていなかった。
その様子をモニター越しに見ていた浩平は、激しい焦燥感に駆られていた。
(やばい! 畑元帥レベルになると、静止画や時計だけじゃ決定的な信用を勝ち取れないのか……! どうしよう、何か一発で『未来の圧倒的な技術』を証明できるものを示さないと!)
浩平の脳細胞が猛スピードで回転し、コスパ良く未来を証明する手段を検索し始める。
(テレビ? いや、あり得るけど設置が面倒すぎる。そもそも当時のコンセントと現代のコンセントの形状(タイプA)が同じか確証がないし、戦時下の電圧で動くかも怪しい……そうだ! 一昔前に流行っていた『ポータブルDVDプレイヤー』だ!)
浩平はキーボードを叩き、ゲーム内ショップを検索した。
『9.5インチLCD液晶付きポータブルDVDプレイヤー(6000ゼニ)』
しかも都合の良いことに、単三電池駆動に対応しており、コンセントによる充電問題もクリアできる。浩平は迷わずこれをカートに放り込んだ。
(説明書によると、単三電池6個で4時間ほど再生できるのか。なら、替えの電池も買っておけば外部電源なしでも長期間運用できるな)
浩平はネットスーパーで『単三電池8本パック(150ゼニ)』を追加購入した。
(しかし、中身のDVDはどうする? アニメや映画じゃ意味がない……できれば、終戦前から戦後の復興までを一通り示す『ドキュメンタリー』が最適だ)
浩平は「終戦 ドキュメンタリー」のキーワードで検索し、セール品になっていた『終戦特集:太平洋戦争の終わり(800ゼニ)』というDVDディスクを購入した。
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3Dパズルゲーム
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FPVカメラの小窓に視線をやると、藤堂中将が畑元帥の追及を受け、いよいよ後がなくなっている様子が見えた。
(時間がない!)
浩平は、今朝方橘家への配給でも使った『購入品組み合わせ機能』のウィンドウを即座に起動した。
画面中央に、ポータブルDVDプレイヤーの高精細な3Dモデルが浮かび上がる。マウスカーソルを電源ボタン、操作ボタン、電池カバー、ディスクトレイのスイッチにホバーさせると、それぞれがハイライトされ、クリックで操作できることがわかった。
「保冷ボックスの時よりかなり複雑な操作だけど、やるしかない!」
浩平はマウスを素早く動かし、DVDプレイヤーの裏返して電池カバーを外す。次に、買ったばかりの単三電池の包装フィルムを【初期状態指定機能】で解除し、一本一本をマウスのドラッグ&ドロップでプレイヤーの中へはめていく。
(なんだかリアルな3Dパズルゲームみたいだな……)
幸い、正しい位置に近づけると自動的に「カチャッ」とスナップ(吸着)するため、細かい力加減は必要なく、数十秒で電池のセットが完了した。
続いてディスクトレイを開き、包装を解いたDVDディスクを所定の位置にカチリと固定してカバーを閉じる。
(本当にこれで再生された状態で出せるのか……?)
浩平自身も半信半疑になりながら、画面上のDVDプレイヤーの電源ボタンをマウスで長押しした。
——ピピッ。
するとなんと、『購入品組み合わせ機能』のプレビューウィンドウの中で、DVDプレイヤーの9.5インチ液晶が明るく発光し、起動画面が表示されたのだ。
「よし! 本当に動いた!」
浩平はさらに再生ボタンをクリックした。DVD特有の「キュルキュル……」という読み取り音がモニター越しに聞こえ、数秒後、白黒の記録映像を背景にしたメニュー画面が表示された。デフォルトのカーソル位置が『本編再生』になっているのを確認し、もう一度再生ボタンを押す。
さらに、音量ボタンをマウスで連打し、ボリュームを最大(MAX)に設定した。
プレビュー画面の中で、重厚なナレーションと共に、太平洋戦争の記録映像が再生され始める。
(よし! もうこれでいくぞ!)
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机の上のタイムマシン
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浩平がFPVカメラの視点に戻ると、畑元帥の執務室の空気は限界まで張り詰めていた。腕時計と本だけで説得できなかった藤堂中将が、意を決したように、ゆっくりと畑元帥のデスクへ近づいて口を開いた。
「元帥閣下。これから起きる事は、決して手品ではありません。私のような無骨な男が、手品などという真似ができるはずもない事を、分かっていただけると助かります」
そう言うと、藤堂中将は己の人差し指を、畑元帥のデスクのやや中央の、何も置かれていない空間へと真っ直ぐに指し示した。
そのあまりに不可解な行動に、畑元帥の目は再び鋭い警戒の色を帯び、一度は机に置いた南部大型拳銃へと再び手を伸ばそうとした。
(いまだッ!)
浩平は、すでに映像が再生され、最大音量で音声が流れている状態のポータブルDVDプレイヤーを、藤堂が指差したその座標へ向けて「転送」した。
——トンッ。
何の前触れもなく、畑元帥の目の前の空間が歪み、真っ黒なプラスチックの箱(DVDプレイヤー)が突如として出現した。
同時に、現代の鮮明なフォントで印字された紙片がハラリと舞い落ちる。
『静かに映像を見るように。機械のスイッチは絶対に触らないでください。 ——監視者』
「な……ッ!?」
畑元帥が息を呑み、拳銃に伸ばしかけた手を硬直させた。
彼の目の前で、得体の知れない黒い箱に取り付けられた「光る窓(液晶画面)」の中で、人間が動き、見たこともないほどクリアで生々しい音声が執務室に響き渡ったのだ。
『——1945年、夏。大日本帝国は、かつてない絶望の淵に立たされていた。絶対国防圏は崩壊し、本土は連日のようにB-29の爆撃に晒され……』
現代のプロのアナウンサーによる重厚なナレーションと、高音質のBGM。そして画面には、悲惨な防空壕の様子や、焼け野原を歩く人々の記録映像が鮮明に映し出されている。
畑元帥は、ただただ絶句していた。
銃を向けることすら忘れ、デスクの中央に出現した「動く絵画」のような未来の装置を、目を大きく見開いて凝視し続けている。藤堂中将もまた、内心で激しく安堵しながら、静かに直立不動の姿勢を保っていた。
1945年の広島陸軍司令部に、未来からの「絶対的な真実」が持ち込まれた瞬間であった。
◇◇◇
薄っぺらい映写機と、敵のプロパガンダ
◇◇◇
大音量でナレーションが流れる黒い箱(ポータブルDVDプレイヤー)が、何もない空間から突如出現した。
藤堂中将自身、監視者が「何かを出す」とは知っていたものの、まさか映像と音声を放ちながら動く得体の知れない機械が転送されてくるとは想像しておらず、思わず息を呑んで目を丸くした。
畑元帥は、呆然と固まっていた手をゆっくりと下ろし、震える声で言い張った。
「……ふん。驚かすではないか。よくできた小型映写機だ!」
モニター越しにその言葉を聞いた浩平は、ずっこけそうになった。
(映写機? ……いや、さすがに元帥レベルだと博識で冷静ぶってるけど、大外れだぞ。こんな薄っぺらい液晶ディスプレイで、光を投影する距離もレンズもないのに映写機なわけがない。物理知識は少々足りないみたいだな)
浩平は現代の理系エンジニアらしい容赦ないツッコミを心の中で入れた。
DVDの映像は、太平洋戦争の記録ドキュメンタリーだった。
凄惨な沖縄上陸戦のモノクロ映像から始まり、米軍機視点で撮影された東京大空襲のカラー化フィルムが流れる。
それを見た畑元帥の顔が、怒りで赤黒く染まった。
「これは……敵の宣伝だ! 米国の作り物に決まっておる! 藤堂、貴様はやはりアメリカのスパイか! 幻術や奇術でわしをたぶらかす気か!」
再び激昂して立ち上がろうとする畑元帥に対し、藤堂中将は低く、しかし力強い声で宥めた。
「閣下。私がスパイであるかどうかは、どうかこの『続き』を見てからご判断ください。監視者殿は『静かに見ろ』と仰っておられます」
「……ぐっ」
藤堂の揺るぎない態度に、畑元帥は渋々と椅子に座り直し、液晶画面を睨みつけた。
映像は当時の欧米、中国、本土の情勢を克明に紹介していく。そして、米軍による原子爆弾の試験成功(トリニティ実験)、爆撃機の選定、そして『リトルボーイ』と『ファットマン』という二つの悪魔の兵器の製造過程と、標的となる都市の選定へと進んでいった。
(広島が……標的だと?)
畑元帥の顔から、次第に血の気が引いていくのが藤堂にもわかった。
◇◇◇
玉音放送と、冷えた珈琲
◇◇◇
そして映像は、米軍視点で捉えられた広島と長崎への原爆投下カラー映像、そして目を背けたくなるような被害の凄惨な様子を映し出した。
続くシーンは、日本が降伏を決断する『御前会議』の再現図、そして、歴史の転換点、昭和20年8月14日の『玉音放送』へと移った。
『堪ヘ難キヲ堪ヘ、忍ヒ難キヲ忍ヒ——』
ノイズ混じりの、しかし確かに天皇陛下の肉声であるその放送がDVDから流れた瞬間。
「……陛下……ッ!」
畑元帥はガタッと立ち上がり、そのままデスクの前で姿勢を正して深く頭を垂れた。彼の全身が小刻みに震えている。当時の軍人にとって、現人神である天皇の生の声は絶対的なものだ。これが米国の作り物などではないと、彼の魂が理解し始めていた。
この動揺を見据えた浩平は、すぐさまゲーム内のショップを開いた。
(ここらで一息入れさせてやるか。この暑さだ、冷たいものがいいだろう)
浩平は『カップコーヒー(ミルク入り/150ゼニ)』を二つ購入し、初期温度を「5度」に設定。
『冷えた珈琲だ。毒などないから安心して飲んでください。 ——監視者』というメッセージを添えて、デスクの上に転送した。
コトッ。
突然出現した、水滴を纏った結露で冷え切った二つのプラスチック製カップ。
「なっ……またか!」
藤堂中将は驚きつつも、一つを手に取った。真夏の司令部室で、氷もなしに指先が痛くなるほど冷え切っている。藤堂は、添えられていたプラスチックのストローをどう使えばいいのかわからず、銀色のアルミ蓋を無理やり指で剥がして飲もうと模索し始めた。
しかし、畑元帥は目の前に現れた奇跡の珈琲すら完全に無視し、玉音放送の続きと、敗戦が決まった日本の姿に釘付けになっていた。
◇◇◇
焼け野原の先の光
◇◇◇
極秘の未来の記録は、東京裁判の生々しい映像、GHQによる統治、マッカーサーと昭和天皇の会見写真、そして日本国憲法の策定へと進む。
旧軍が解体され「自衛隊」となる描写に、畑元帥はギリッと奥歯を噛み締めた。
だが、映像が「終戦後の混乱と復興」から、1950〜60年代の「高度経済成長期」へと差し掛かると、彼の表情は一変した。
焼け野原だった東京に天高くそびえ立つ東京タワー。
弾丸のような速度で大地を駆け抜ける新幹線。
熱狂に包まれた東京オリンピック。
そして、トヨタをはじめとする日本の自動車メーカーが、世界中で大躍進を遂げる姿。
「これが……我らの国、日本なのか……?」
畑元帥の目から、大粒の涙が溢れ落ちた。
完全に滅び、焦土と化すはずだった祖国が、軍事力ではなく、人々の力と技術によって世界有数の豊かな国へと甦っている。
そして映像の最後
現代(令和)の一般参賀で、今上天皇陛下と皇族方が、笑顔で手を振る国民に応える姿が映し出された。
国体(天皇制)は、未来永劫護られていたのだ。
長さ総計100分。
DVDの再生が終わり、液晶画面がメニュー画面へと戻った時、時計の針は午後1時を回っていた。
二人の将軍の目は真っ赤に腫れ、執務室にはただ重い沈黙だけが降り積もっていた。
◇◇◇
8500ゼニの決定打
◇◇◇
畑元帥の態度は、先ほどまでの激昂が嘘のように軟化していた。
彼は深く息を吐き、机の上の冷え切ったままの珈琲をじっと見つめた。
「……藤堂。この映写機のような機械は、確かに今の時代で作ることは難しいと認めよう。あの陛下の御声も、偽造できるとは思えん」
だが、陸軍の頂点に立つ者としての意地と、あまりに巨大な真実を前にした恐怖からか、畑元帥は最後の抵抗を見せた。
「しかし! 未来が本当に『あの映画のように』起きるという保証は、どこにもない! わしはまだ、完全には信用しきっておらんぞ!」
(まだ強がるか、この頑固親父!)
浩平はモニターの前でため息をつき、ゲーム内ショップの検索バーに『畑俊六』と打ち込んだ。
すると、書籍のカテゴリーに一冊の分厚い本がヒットした。
『元帥畑俊六回顧録』——価格:8,500ゼニ。
(くそっ! なんでこんな古臭い回顧録が8500ゼニもするんだよ! 専門書価格のぼったくりじゃないか!)
浩平は盛大に文句を言いながらも「購入」ボタンを押し、メッセージを打ち込んで転送した。
——ドスッ!
畑元帥の目の前に、分厚く重厚な本が落下した。
そこには、紛れもなく自分の名前が印字されている。
『ご自分で書いた本だ。時間がある時に読んでくれ。
藤堂中将は午後に人命に関わる大事な仕事がある。彼を邪魔だけはしないでくれ。
陸軍でも海軍でも、広島でも呉でも、みんな平等で尊い命だ!
——未来の者より』
「わ、わしが書いた……本……?」
畑元帥は震える手でその本を手に取った。ページをめくれば、そこには自分がこれから経験するであろう苦悩、東京裁判での出来事、そして己の思考のすべてが活字となって綴られている。
パラドックスの極みである「自分自身の未来の回顧録」を突きつけられ、さすがの藤堂中将も「監視者殿の御力は、ここまで底知れないのか」と背筋を凍らせた。
しばらくの沈黙の後。
畑俊六元帥は、すべてを諦めたように深く、長い溜息をついた。
「……藤堂。お前が言いたい事は、よく分かった。だが、あまりに事態が大きすぎる。少し、考えさせてくれ」
畑元帥はそう言うと、デスクの上のDVDプレイヤーを自分の手元へサッと引き寄せた。
「この映写機は、わしが保管・研究する! 藤堂、お前はもう下がれ。午後に病院に行く件は、とりあえず了承する。好きにしろ」
追い払われるように退室を命じられた藤堂は、深く敬礼し、執務室を後にした。
モニター越しにその様子を見ていた浩平は、脱力して椅子に背中を預けた。
(おいおい、DVDプレイヤーの電源の切り方も、リピート再生の操作方法も知らないくせに『保管する』ってどうするんだよ……。まあいい、あとで簡単な操作説明書でも藤堂経由で送ってやるか)
一連の出来事を終え、藤堂中将は自身の執務室へと歩きながら、複雑な思いを抱えていた。
(監視者殿は、呉の海軍にも平等な慈悲を向けられた。そして、あの未来の圧倒的な風景……我々は、絶対にこの国をあそこへ繋げなければならないのだ)
藤堂の胸中には、新たな決意の炎が静かに、力強く燃え上がっていた
お待たせしました
今回はグルメ要素が少なめ(カップコーヒーのみ)で、そして元帥レベルだとグルメに釣られないのは悲しいです(笑)
日間ランキング2位、週間ランキング5位は本当に驚きました
頑張って毎日投稿するが、いずれ限界が来るかもしれない
ただこっちは5000~6000文字ベースで、隣で1万文字以上を平然と投稿している「地球の管理者:異星文明に選ばれた元研究者」と比べて、若干楽?かもしれなません(笑)
そっちは本命作で結構緻密な世界観を構築していますので、良かったら見に行ってください




