61羽 「あははははー」①
できる人って本当にできるんだなって思いました(まる)
みたいな気持ちで、今、僕は、軍事会議に出席しています(まる)
知らない人がたくさんいるでかい横長の会議室。席の配置は、結婚披露宴みたいに数人で島になっている感じ。たぶん僕はヴェルク=シーヴィ的上座の、出入り口から左側奥の席。いっしょにいるのはタルクとドルツさん。
ファシリテーターはキャラヤ。長辺の壁側に3人の書記の方といっしょに座っている。議題はもちろん、これからのことなんだけれど、僕がしどろもどろになりながら伝えた内容は、キャラヤの中でとんでもない醸成をされて具体化されていた。
「——さらに、各地の賤当民へ再び叛意を起こさせる手段について」
「——すでに現地にいる人員へ」
「——協力を求めるにあたり」
どんどん内容が詰められて行く。それに、みんなガンガン意見を述べていく。ドルツさんとかすごい。僕は端っこで小さくなっているだけだ。口を挟める内容じゃないもん。
「——については、鑑別師、意見は」
「はっ⁉」
思いっきり意識が逸れていたところを狙ったようにキャラヤが指してきた。一斉に僕へと視線が集まる。冷や汗をかきながら「い、いいと思います!」となにがいいのかもわからずに言った。ダメじゃん。キャラヤは「そうか」と言っただけで引き下がって、もう次の人を指している。
その後もちょいちょい僕への確認作業みたいのが入った。ずっと意識集中してなくちゃいけなくて、しんどかった。
で、3時間コースの会議を終えて、その次は会談と来ました。
はい。趣味国防おじさんこと、テルク=ファルのブラズヴェル防衛卿とです。なんで僕と会談なの。キャラヤとしてよ。
「おひさしぶりです、鑑別師殿。その節は姪がお世話になりました」
「あ、あははははー」
声だけ笑顔でとりあえずごまかした。そうですね、僕とお見合いしためちゃくちゃ豪華な縦ロールのお嬢さん、おじさんの姪っ子さんでしたね。再婚約できたらしいけれど、おもいっきりフッちゃったことには変わりないしな。やっぱ告げ口したんだろうな。あはは。
「まずはあらためまして、私の口からもお礼を。我が国のハルを、助けてくださりありがとう」
そう言って右手を胸にあててくれたから、僕は「お役に立てたなら、こんないいことはありません」と右手をあて返した。ハルシーピちゃんたちのその後のことはブロムから聞いていたから、いい方向に進んでいると知っている。
「そして……このたびは、その救ってくださったハルたちを貸してほしいという。その認識で合っていますかな」
「はい。できることなら」
実際にともに戦ってほしいのではなくて。いつでも動かせる状態の軍隊がほしい。いざというとき圧力になるのは、今目の前にいる敵よりも、将来敵になるかもしれない存在だから。
防衛卿は、長い息をついて、それから僕を見た。そして「ハルのときもそうだった。あなたは私たちの想像も及ばないことを提案してくる」と述べる。そうだよな。火葬とかも勝手に現場に導入しちゃったし。必要な過程だったけれども。
「どの程度でしょうか」
「多ければ多いほど。できればヴェルク=シーヴィ内……ムルナヴェンか、そのあたりにいてほしいとは思っています。でも、難しいようでしたら東ハルナシーヴの国境線のあたりで問題ないです」
「キャラヤンはこのことを承知しておられるのですか」
「はい。そうすべきだとの考えも共有しています」
じっとお互いを観察し合う。腹の探り合いとかはぜんぜん得意じゃないから、こうやってはっきりと聞いてくれるのはありがたいな。
「それと、それとは別にもうひとつお願いがあります」
「伺いましょう」
「グラ=ゾルムとつなぎを取っていただきたいのです」
そう言われることを想定していなかったんだろう。防衛卿は少し身構えて、それから「理由をお伺いしても?」と言った。
「僕がテルク=ファルに滞在していたとき、陸送騎乗用ハルシーピをグラ=ゾルムに都合していると聞きました。それに、カイラントに発生したハルシーピへ寄生する虫は、グラ=ゾルムに頻繁に生じる虫との知見を外務卿が持ち帰ってくれたこともありました。そうしたハルシーピに関する機密をやり取りできるほど、グラ=ゾルムとは仲がいいんですよね? ヴェルク=シーヴィが働きかけるより、ずっと話が早い」
グラ=ゾルムは南方にあって、ヴェルク=ライナの東側に位置している。テルク=ファルとは海を挟んで隣国、とギリ言える位置関係。きっと船でハルシーピを移動させているんだと思う。すごくたいへんだろうな。
「どうしてグラ=ゾルムにも? 我が国が協力をするとしても、それは必要なのですか」
協力してくれるんだ、やった! 僕はずっと考えていたことを言った。
「僕は、グラ=ゾルムを、ヴェルク=ライナの王様の亡命先として開いておきたいのです」






