表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
飛ばない僕と、空を行く君と  作者: つこさん。
第三章 ヴェルク=ライナ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

118/120

60羽 「よろしく!」①

 しんしんと、雪が降る。明け方。

 馬がつながれた、堅牢だけれど無個性で、一見して普通の馬車に見える護送車が、ヴェルミトゥラの貴人牢施設の出入り口に停まっている。

 ヴェルミトゥラから、ヴェルンシーヴァへ。より強固な守りの場所への、移送。けれど、この情報はごくごく限られた者しか知らされていない。


 出入り口から、両手に荒縄をかけられた砂色の髪の毛の男性が連れ出されて来る。髪の毛は伸び切っていて、うつむいた顔はちらりとも見えない。

 ただ、固く結ばれた唇が……なにも語らないとの意思を示しているようだった。


 馬車のドアが、護送員の手で開けられて。

 促されて、捕縛された男性は乗り込もうと踏み板に足を乗せる。


 その瞬間。

 砂色の髪がぐらりと揺れた。倒れる、と見えたその体は実際には後ろに身を引いただけだった。護送員は異変を察知しはっと息を呑んでもう一度左手を繰り出す。しかしはたき落とされて御者から羽交い締めにされた。落とされたのは――鋭利なナイフで。


「確保ーーーー!」


 御者の格好をした公翼のドルツさんは、そう叫んで手早く護送員を拘束した。自害されたら困るので猿ぐつわもわすれない。僕は「おつかれさまでしたー!」と言いながら、息を殺していた樹の陰から出て行った。


 捕まえた。

 ルムスを殺すかもしれない、ルムスの同僚の間諜。


「いやー、こんなあっけなく行くもんなんすねー」


 砂色の髪の毛の男性がそう言って、地面に転がされた護送員の顔を覗くようにしゃがみ込む。そして「……そこそこ、衝撃っつーか。残念だわ。おまえだったんだな」と述べて、かつらを取った。


「おつかれ、イムロ。知り合い?」

「知り合いもなにも。……同僚っす」


 翼騎兵隊地西部の、評判の良い隊員。左利きで。前にグラがお腹に怪我を負わされたのも、たぶん左からの傷だった。


 そして、僕たちはその護送車にふんじばったその間諜を乗せて、せっせとヴェルンシーヴァまで運んで行くわけです。


「いやあ、ひさしぶりの尋問だなー! わくわくしちゃうよ!」


 護送車の足元に転がっている間諜さんを見ながらドルツさんが本当にたのしそうな笑顔でそう言ったので、僕は控えめに「あの、お手柔らかにお願いしたいんですが……?」と言ってみた。


「わかってるわかってる! 最終的にこっちの言うこと聞くようにすればいいんでしょう? 腕が鳴るねえ!」


 不安しかない。どうしよう。人選間違ったかもしれない。


 とりあえず、これがどういう流れかというと。

 お茶飲んで、寝て、起きて。僕も考えた。

 戦争って、いろいろ種類があるよな、と。


「なんかこう、俺、ヨータさんが空恐ろしいっすよ」

「なんでさ」

「なんでこんなこと思いつくんすか? ちょっと資料室行き過ぎだと思います」


 まずは手始めに。ルムスの同僚の間諜をあぶり出して……味方に引き入れる。たぶん、その間諜さんもルムスと同じく、だれかを人質に取られているに違いないっていう、あてずっぽうな考えも含んで。

 二重スパイ、やってもらおうかなって。


「そんなことないよ。僕の国じゃ歴史の授業とかで勉強したことの応用。あと、マンガとか小説とか」

「やっぱ勉強じゃないっすか。あー怖。逆らわんとこー」


 ちなみにもちろん、キャラヤには話は通してあるよ。そっちの説得の方がたいへんだったかな。『ぼくのかんがえたさいきょうのせんそう』を理解してもらうのと、納得してもらうのとでは大きく意味が違うし。なにせ目が笑ってないから、あの人。怖かった。

 中継地点で、馬を陸送騎乗用ハルシーピに変えた。それで、ヴェルンシーヴァまであと数時間。日が変わる前には着けるかな。僕は間諜さんの背中にクッションを入れてあげた。ちょっとでも待遇良くしておかなきゃね。


 ヴェルンシーヴァに入って一番に迎えてくれたのは、タルクじゃなくて、待ち構えていたブロムだった。


「……ヨータくぅん。なんですかぁ、あの手紙ぃ……」

「なにその恨めしそうな顔と声」

「恨めしいですよお、なんであんな、ヨータくんっぽくないこと書くんですかあ!」

「っぽくないのはわかる。解釈違いさせてごめんね。でもまあ、非常事態だからさ、よろしく!」


 ブロムへは、めっちゃテルク=ファルへの援軍要請を書いて送った。たくさんの軍隊が必要だから。で、お願い聞いてくれなかったら、初生雛鑑別師としてのスキルも譲らないからねって。ちなみにヴェルミトゥラのハッラさん宅で働いてもらっている、元テルク=ファル医務官のミシムからは、べつにこのままヴェルク=シーヴィの人間になってもかまわないっていう言質を取った。なんかライラちゃんとめっちゃ仲良くなってた。


「あんなこと、私の一存で決められるわけないでしょう。タルクム・ブラズヴェル防衛卿も、いっしょに来ています」

「あー、趣味国防おじさん。来ちゃったかー、しかたないねー」

「……そんな呼び方しているんですか、ヨータくん」


 話が大きくなったなー。いや、大きくしたんだけどね!

 僕が、数日前にキャラヤへなにを言ったかっていうと……「侵略戦争じゃなくて――やってみませんか、革命」ってこと。

 キャラヤの男の子の部分を刺激できたみたいで、口元でにっと笑って「詳しく聞こうか」された。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
匿名感想書いて!!!!!( ↓ のバナーからフォームに飛びます)

匿名感想フォーム

こちらの
感想おきば
で返信します

18羽 「証明のしようがないですが」② 時点での主要登場人物一覧
※イメージが壊れる可能性があるため、自己責任でご覧ください script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ