第十五章 開幕のとき来る 七話
バイソンクリニックの機関をすり抜けるでもするかのように、カズイから放たれた七色の虹の光が、キラキラと、天へ向け昇り光っていく。
「ねえ。ママーー! 虹色の光が、あの建物からいっぱい、ひかり上がっていく――!」
「まあ、ほんと。今からみいちゃんが行くバイソンクリニックよ。もしかしたら何か催し物でもあるのかしらね。今から楽しみだわ」
小さいお子さんを連れていた親子が、ウキウキしながらバイソンクリニックに向かって行く。
その時間、バイソンクリニック付近に居た住民たちは、珍しい物でも見るかのように、その怪奇現象のようなものに心が癒されていた。
「……なあネムイ。これで良いんだよな?」
「……分からないわ。肉眼と鑷子じゃ、限界がある。そもそも医薬品の類でやる事が前提の寄生虫の対処療法なのよ。それに脳梗塞だって何も手付かずなのに」
さすがのネムイたちでも、肉眼だけでは限界があった。
見てわかる範囲までは取ったが、どうしても納得がいかない。
ここで妥協するなんて論外。
リンが二度目の手術をする頃にはアメーバの繁殖や、底を付いた血液、リン自身の体力、諸々、問題が折り重なっているのだ。
だからこそ、ここで、完璧にアメーバを除去するしかない。
アッシュたちが始めてから、五分が経っていた。
リンの肌は、先程以上に青みが強くなっていた。
因みに、アッシュとリンの血液型は一致してないため、輸血できない。
様々な問題が念頭から根塊した時には、アッシュは自然とリンの腱膜を縫合しようとしていた。
「アッシュ⁉ まだ完璧じゃないのよ? おまけに脳梗塞は?」
「今、大事なのは、リンが少しでも生き残れる方を取る事が最優先だ。正直、リンの容態を見る限り、もう限界を超えている。これ以上は……」
ネムイが動揺しながらアッシュを止めようとするが、アッシュの決意は固かった。
悔しそうに、自分自身を殺してやりたいほど、自分の力の無さを呪い殺す様な思いで、縫合しようと手を動かそうとしたその時――
――ガシッ!
「――ンッ⁉」
「……え……だれ?」
なんと、アッシュの手を強く握り止めたとのは、見ず知らずと言って良い程、初対面の二十代前半の男性。
アッシュとネムイは呆けて、この場に居るはずのない部外者に衝撃を走らせる。
だが、その男からはただならぬ雰囲気を醸し出していた。
鋭い目、自信に満ちた表情でありながら、その力で他者を虐げる怪しく光る目。
どこか懐かしさを感じる。
だが、思い返したくない男の顔が、脳裏に強く浮かぶ。
その男は血だらけだった。
おまけにスクラブを付けていたため、もしかしたらと思う人物。
「どけ、ここからは私のターンだ」
「だ、ダージュ先生⁉」
「え、嘘でしょ。だって、死んだはずじゃ? おまけになんで別人になるまで若返ってるのよ?」
まさかのダージュ復活。
その事に動揺が隠しきれず、うろたえてしまうアッシュとネムイだった。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
今回で第十五章は終わりです。
次章からも是非ご一読ください。
よろしくお願いします。




