A bird is caught prey.2
「頼む!私を助けてくれ!私が行かないと死んでしまう命がたくさんあるんだ!!!」
貧弱なインテリは正義ぶった声でそう叫んだ。
久々に何か喋ったら、またそれか。
私は飽きれて、つい笑ってしまった。
「大丈夫だって。あんたがいなくて死んじまう命なんて、もう既に死ぬ運命にあるのさ」
インテリがうるさいからナイフを喉元に突きつけてやると、またすぐにおとなしくなった。
「確かにそうだ。死ぬ奴はその辺で転んだだけでも死ぬし、生き残る奴は何百発銃弾をぶっ放しても必ず生きてる。フェザーみたいにな!」
大佐は銃を分解しながらおかしそうに笑った。
「なんだよ大佐。それじゃ、私が死神みてえじゃねえかよ」
私はつまらねえ冗談を言いやがってと思いながら、インテリの顔をナイフの刃の裏で撫でまわした。
「フェザーは死神だ。人が10人死ぬとフェザーは1日長生きする。だから、次から次へと殺さなければならない。ジェットブースターを背負ったフェザーは最悪な死神だ。生贄がいくらいても足りない。まあ、俺も同じなんだけどな」
大佐は分解し手入れをした銃を元通りに組み立て、それを満足そうに眺めた。
このままぼんやりとした時間が続くかと思った時だった。
急に空気が変わる。
来た。すぐ近くだ。
私は手入れをしていたジェットブースターを背負い起動させた。
良い音だ、私のジェットブースターが血を見たがって騒いでいる。
「大佐、来たようだぜ」
聞こえる。渋谷ベースに近づいてくる足音。
かなり多い、20~30人というところか。
「フェザー状況は?」
大佐は今まで手入れしていた銃を一見分からないように体に身につけ、いつものサブマシンガンを装備した。
「裏には回っていない。もうすぐ正面から大人数でやってくる」
私は右手にコンバットナイフを握ると、手を後ろに回して正面からナイフが見えないように構える。
「誰かいるか?」
精悍な顔をした男が1人で入ってきた。
日本人か。
他の奴らは外で待機しているようだ。
服装や持っている装備からして、元警察というよりは元自衛隊だろうな。
力だけじゃない、この男の体型から機動力とスタミナに長けた本物の強さを感じる。
「何の用ですか?ここは薬くらいしか売るものはないよ」
大佐は入り口から離れた奥のソファーに座ったままそう返事をした。
「俺の部下を殺したのはお前達か」
男は入り口に立ったまま、奥のソファーの近くで椅子に縛られているインテリを見た。
「どうかな?昨日、年端も行かない少女が1人であの男を連れてきたんだが、部下っていうのは小学生くらいで食い物の取り合いでもしたのかい?」
大佐はそういうといやらしい笑いを浮かべたが、男は表情一つ変えなかった。