剣持たぬ戦士
当面の目標だった冒険者登録…は、あっさりできてしまった。
正直拍子抜けだったけど…勘違いしちゃ駄目だ。
俺は冒険者になりたいんじゃない。
強くなりたいんだ。
冒険者になることと…強い冒険者になることはまるで意味が違う。
新人冒険者の仕事は、大体雑用だ。
荷物運びや掃除、薬草採集…あと猫探し…といったところか。
いきなり新人に危ない討伐依頼とか任せられないってことだろ。
俺は経歴もないからな…
まあ、体力テストは通ってるんだ。
仕事振りを見せていけばそのうち討伐依頼も受けさせて貰えるだろ。
「おう、坊主、頑張ってるか?」
「ガルドさん…こんにちは、これから依頼ですか?」
「おうよ。ちとコボルトが出ててな…」
「討伐依頼…!」
「なんだ、坊主も行きたいのか?」
「…できることなら…」
「うん…そうだな、お前さん、装備は持ってるか?」
「いえ、貯金は貯めてて…これから整えようと思ってるんです」
「うん…そうか、あとで酒おごってくれるなら装備選ぶの手伝ってやってもいいぜ」
「本当ですか?!」
「ああ、ついでに…まともな装備が整ったら分け前は減るがパーティの後衞に臨時で入れてやる」
「ありがとうございます!!是非お願いしたいです!!」
「おう、じゃあ行くか!」
「はい!」
「あ、酒おごれってなあ冗談な?子供におごらせるわけないだろ。ハハハ!」
何だ、この優しい世界…!
俺の装備は…まず、軽量の防具。
重量の防具は防御力こそ高いけど使い慣れてない俺が着るには機動力を損ねるからだ。
主武装は…凶器じゃなくて鈍器。
剣や弓とかは使い方もわからないし、武器の性能によって攻撃力が大きく左右される。
あと手入れも必要だから出費が増えるってのも痛い…!
それに比べて鈍器は比較的に使いやすいし、固ければいいだけだから性能もそんなに気にならない。
ガルドさんも剣よりは棍棒の方が好きとか。
流石ベテラン…!漠然なイメージで剣にするところだった…助かった…!
まあ、今回は荷物持ちってことになってるからほとんど見学で俺が戦うことはないだろうけど。
「よし、装備は整ったな。それっぽくなってきたじゃねえか!」
「はい…アドバイスありがとうございます」
「なあに、こんなん大したことねえ。んじゃ行くか?」
「…はい、よろしくお願いします…!」
***
「今日荷物持ちとして入った新人のハインくんだ」
「よろしくお願いします!」
「ああ、よろしく頼む」
「助かった~元々来るはずだった荷物持ちが来れなくなってな~」
あ、そういうことか。
「…こほん、まあとにかく行くか!」
俺たちのパーティは、コボルトが出たという森の中に進んでいった。
パーティメンバーは俺を入れて6人。
鈍器使い兼リーダーのガルドさん、槍使いのスペンサーさん、盾使いのヘイデンさん。
斥候のデールさん、クロスボウ使いのハーリーさんに、荷物持ち兼予備の鈍器使いの俺。
他の5人は元々仕事仲間で、専業の荷物持ちは中々居ないから俺みたいな奴に声をかけて臨時で求人してるとか。
本当に剣士や魔法使いって居ないんだ…
ちょっと夢がないな。
まあ、仕方ない。
もうそんなのに目を光らせるような年でもないし、戦闘経験を積むことが目的だからな…
御伽話より普通の冒険者の戦いの方が勉強になるだろ。
さあ…気を引き締めて行くか…!




