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覚悟の消散

「…本当に行くのかい?」


「…はい」


「ハイン兄ちゃん…」


「もう僕も15歳ですから…いつまでもお世話になんてなれません」


「…そんなこと気にしなくても…」


「…ハイン兄が行ったって、ベック兄の役に立てるわけないよ…魔法も使えないんだから…」


「…マックス」


「それでも…俺は行く」


「意味わかんない、ハイン兄のバカ…!」


「…これからは、お前が皆の兄ちゃんだ」


「うぅ…!」


「…泣くのは、今日限りな?」


「わかった…!」


「俺の方が絶対、ハイン兄なんかよりいい兄ちゃんやれるんだから…!」


マックスは、かろうじて涙をこらえながら笑うようにしてそう言った。


「…うん。お前なら大丈夫だ」


「ハイン…これを」


「これは…」


「皆でお小遣い貯めたんだ、ハイン兄なら絶対行くと思ったから…」


「…ありがとう。必ず返しに来る」


「ハイン兄ちゃん!元気でね!!」


俺は、手を振っては皆を後にして歩いて行った。


あの日のベックのように。



目的地の王都の隣町、セクミンに向かい馬車に乗り込んだ。


セクミンは魔物の出現量が多くて、冒険者の仕事も多いとか。


強くなるために、まずは…実戦経験が欲しい。


それに、生活費も稼げるなら一石二鳥だ。


危険は伴うだろうが…そんなのベックも同じだろ。


魔法は使えないけど…俺もそれなりに鍛えてきた。


戦えはする…はず…!



…というのも、言い訳かも知れない。


俺はただ、ベックと離れたくないのかも知れない。


ベックのいる王都の近くに来るための…言い訳…


…そんなことしたってベックに会えるはずもないのにな。


「純白の勇者」ベックか…あいつ、やっぱりすごいよな…


バカなのはわかってる。


でも…ベックが頑張ってるのに俺だけ立ち止まってる訳にはいかないんだ…!


「…ここが冒険者ギルド…!」


俺は、緊張感に唾を飲み込みながら、スイングドアを押し中へと踏み込んだ。


きぃぃ…


一瞬、中の冒険者たちの視線が俺に集まってはすぐに散らばっていった。


…落ち着け。堂々としてろ。


すみません。


「こんにちは、セクミン東部冒険者ギルド第2支部です」


営業用のセリフ!!!それに笑顔!!!


やけに緊張する!!!!


「あの…もしかして初めての方ですか?」


「あ、はい!新規登録をお願いしたく…」


「新規登録ですね、身分証を提示していただけますか?」


「あの…僕、孤児で戸籍がないんです」


「あ…そうでしたら、施設などの入院記録でも問題ありません!」


…あ!そういえば、院長が持っていけって…!


助かった…!


「はい、確認できました!それでは、簡単な登録テストがありますのであちらへどうぞ」


俺は、ギルドの裏庭に案内された。


「…新入りか?若いな」


「は、はい!ハインと言います、よろしく…」


「ああ、そういうなあいい。一応聞くが…なんか特技はあるか?」


「…いえ、特には」


「魔法は?」


「…低適性症で…使えないんです」


「…!」


試験管さんの顔が一気に青ざめていった。


あ、終わったか?


「あんちゃん…!低適性症って、身体は平気なのか?!」


「は、はい…どこも問題ないです」


「医者は何て言ってた?!力仕事とかやめさせられなかったか?!」


「…はい、どうしてかわかりませんけど問題ないって…稀なケースって言われました」


「…妙だな…まあ、それなら問題ないだろ」


「…あの、魔法が一切使えなくても冒険者になれるんですか?」


「…何言ってんだ?冒険者の中で魔法が使えるやつぁそう多くねえぞ?」


えっ、そうなの?


「ここだけの話、冒険者ってなあ低学力者が多いからな…適性も何も使い方習ったことねえのが普通だ」


ええ~~っ!!そうなのか!!門前払いされるかもって思ってたけどそんなことないんだ!!


常識がないってのは辛いな…緊張しすぎて損した…


「冒険者の利点は学歴不問、経歴不問、ハイリスクハイリターンだ。きつい条件なんかつけたら人手足りなくなるだろ?」


「あ…確かに」


「まあ、仕事をこなせるくらいの体力は必要だがな。体力テストで落ちるようなら冒険者登録はできねえぞ?」


「まあ…それを補えるくらいに長けた特技なんかがあれば話は違うがな」


「…体力テストでお願いします」


「よし、それじゃあ始めるぞ」


体力テストは…意外と簡単だった。


なんか…思ってたのと違うな?


「よし、見かけによらず結構体力はあるんだな。本当に低適性症か?」


「ハハ…」


「まあ、これくらいなら文句無しの合格点だ。お前もこれで冒険者だ」


おぉ…やった?

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