粘質の投射体
「おい、あの二人……!」
「ああ……」
エラさんにハインさん……
お二人はアーデズ初の魔獣発見者……!
普通の魔物とは違う未知の存在を、討伐にまで持ち込んだ……
今お二人の株は急上昇中、まさに絶好調……!
今度こそすごい依頼を……!
「受付嬢さん、おはようございます」
「はいっ!おはようございます!依頼の受注でしょうか!」
「はい、このスライム討伐の依頼をお願いします」
バターン~
スライムスレイヤーまた来た!!!
なんで?!魔獣まで倒したのに?!
スライム倒さないと死ぬ病気でもあるの?!
いや、そういうこと……の口実じゃなくて、本当にスライムに何かあるとでも言うの?!
真似する人とか出てきそうで怖いんだけど?!
***
「手放した魔法を遠隔で操作できるのは、魔法を構成し、維持する魔力を操れるからと言われている」
「魔術とて違いはない。魔力そのものを扱うんだからな」
「もっとも、魔力を遠隔で操作できる原理は現代の魔法学では明確に解明されていないがな」
「そこはまだわからないのか……」
「しかし、イメージとしては……そうだな、虫の足は引き千切られてもしばらく動くだろう?そんな感じで考えればいい」
「うぅん……気持ち悪いな!!」
「でもわかりやすいだろう?」
「確かにそうだけど!!俺は今から手足を引き千切って動かすのか?!」
「魔力をな」
エラが比喩を使い始めてから話はわかりやすくなったけど……今回のちょっとキツいって!!
「とにかくだ。魔力の遠隔操作を習得するぞ」
「まあ……わかった。で、まず何から始めればいいんだ?」
「まず、ばらまいた魔力を1ヵ所に集める」
「1ヵ所に?」
「お茶をいれたことはあるか?」
お、また例えか?
「まあ……あるけど」
「お湯に茶葉を入れると、お湯の色が均等に染まっていく」
「それが自然と1ヵ所に集まったり、茶葉に逆戻りすることはない」
「確かに……」
「魔力も同じだ。体外に排出された途端、空気中にばらまかれていく」
「それを逆行して、魔力を一点に集中させるんだ」
「なるほど……それが基礎ってことか」
「ああ、魔法教育でも、まず先に教えるのはこれだ」
「そうか……って、なんでそんなこと知ってるんだ?」
「……話しすぎたか。私の話はいい。早速始めるぞ」
えっ、なんだ……?
なんか不機嫌そうだし……ここは深掘りしないで置こう……
そういえば、エラって初めて会ったときからちっとも自分のこと話さないよな……
「……わかった、で、遠隔操作って……どうやってやるんだ?今度はパスウェイを使うとかでもないんだろ?」
「魔力を意思によって操れるということは、頭脳で何らかの作用が働いていることだろうと推測されている」
「脳か……」
「つまりは、考えることだ」
「うぅん……雑っ!」
「仕方がない。何故歩けるのかと聞かれても歩きたいと考えたからとしか言いようがないだろう」
「確かに……」
「百聞は一見にしかずだ。とりあえず実際にやってみろ」
「よし、わかった」
まずは掌から魔力を体外排出……
そして出した魔力を1ヵ所に……!
……ダメだ、虫の足がずっと頭にちらついて気持ち悪い!!
いや、こんなことでいじけちゃダメだ。
ベックを助けるんだろ?!
しっかりしろ、ハイン!!
そう、俺は虫だ。
手足を引き千切って動かす!!
「手にそんなに力入れても仕方ないぞ」
「あっ、つい……」
「で、ちゃんと集められたかどうか、どうやってわかるんだ……?」
「それは簡単だ」
「お、ちょうどあったな」
「スライム……?」
そういえば今回もスライム討伐の依頼受けて来たんだったな……
またスライムに吸わせるのか?
「どの辺に集めようとしている?」
「ああ、ここら辺に……」
エラは、いきなり俺にスライムを投げつけてきた。
「うわああああっ!!」
「何やってんだ!!」
「お前が魔力を集めたところにスライムが一瞬だけ通って、消散すれば成功だ」
「あっ、そういうこと……?」
見下ろした先には、スライムが地をはいでいた。
「失敗したのか……?」
「まあ、一回目で成功する方がおかしい。やり直しだ」
「……わかった」
魔獣は魔法を使う。
それに対抗するためには、遠隔操作がどうしても必要だ。
この前だって……ハウンドの魔獣を倒せたのはエラが魔法を消してくれたからだ。
そしていつか……魔王と戦うためにも……!




