純黒の中枢
あれから数日後……毎日のようにスライム討伐にいってるのに「純黒魔力の体外排出」は、未だに習得できていない。
心臓から腕を通って掌まで続く通路を想像しても今一はっきりしないし……
何か感じるような、そう思い込んでるだけで実は何も感じてないような……
連日二人でスライム討伐ばっか受けてるから、受付嬢さんも流石に困ってたな……
もしかしたら裏で「スライムスレイヤー」なんて呼ばれてたりして……はは……
二つ目の魔術……魔法を消す技が習得できたら、かなりやれることが増えるはず。
ベックにはまだ届かないだろうけど……少しずつ近づいていきたい。
ベックにだけ荷を負わせて俺は守って貰ってばかりなんて、我慢できない。
……なんていっても、本当はベックと離れたくなかったのかも知れない。
思えば、魔法が使えなくて、魔術なんて知らなかった俺がベックみたいに強くなる方法なんてあっただろうか?
まずは戦闘経験を積もう、そうすれば何かできることがあるかも知れない。
そう漠然と考えてたのかも知れない。
俺は……まだベックに頼って、甘えてるのかも知れない。
本当は、ベックの役に立つことなんてできないんじゃないだろうか。
魔術を学んでるのも、ただ自分は頑張っていると、言い聞かせるため、安心させるためなんじゃないだろうか。
……情けないな。
大人ごっこをしてるだけで……俺はまだまだ子供のままだな……
そんなことを考えてるうちに、また一体のスライムが消散してしまった。
「あっ、」
集中してなかった……
「早く次のスライムを……!」
「焦るな」
「……エラ」
「集中が乱れる。この魔術を覚えるのはただでさえ難しい。何を考えているのかは知らないが、そんな状態ではパスウェイの活性化を感じ取るなんて到底無理だ」
……本当、理性的に言うよな……まあ、今はそれが正しい処方になるかもな……
「……ありがとう」
「……珍しいな。お前から礼なんて」
「本当に、そう思ったから言っただけだ」
俺は、高すぎる目標だけを見上げて、勝手に不安になってたのかも知れない。
落ち込んで一歩も動けないままだったら、元も子もないからな……
大きな目標も、まずは小さな目標の積み重ねだな。
俺が冒険者になったのはそのためだったのに……何故か忘れてた。
まずは、「体外排出」を覚える。
それだけ見てればいい。
そのためにも、まずは前向きになることだな。
できないことじゃなくて、できることを考えるんだ。
旅立った頃に比べたら、俺は結構成長してる。
冒険者としての仕事も、常識もわかってきてるし、一回だけだけど実際の戦闘も見学してる。
それに……何より一つ目の純黒魔術だな。
「純黒燃」では、ガルドさんに腕相撲で勝った。
「純黒延燃」も、戦闘で使え……
待て、純黒延燃?
魔力を身体の中で好きな部位に集めて、燃やす速さを遅くする。
何で今まで気づかなかったんだ?
予め魔力を集めて置けば、一編にもっとたくさん出せるんじゃないか?!
でも、魔力はスライムが吸う分までしか出せない……
じゃあ、スライムを増やせば……!
「エラ、やってみたいことがある。スライムを集めるの手伝ってくれ!」
「……なんだ?まずは説明を……」
「集めてから説明する!」
「……あのときの仕返し……じゃないだろうな?」
***
「ひふみよ……18体か……」
「よし、これだけいれば多分十分だ」
「これだけ集めるのも一苦労だったな。さて、何をするつもりだ?話して貰おうか」
「その前に……この周りに人いないだろうな?」
「……まあ、いないんじゃないか?」
「よし、行くぞ!」
「……何をしているんだ?」
「何故脱いでいる?」
「あ、見たくなかったら目そらしててもいいぞ」
「いや、そういうことじゃない、どんな意図があってという……」
「純黒延燃」。
俺は、全身に魔力を送って燃焼を止めた。
そしてそのまま、スライムたちの上に身を投げた。
「まさか……待て、危なっ……!」
スライムたちの上に肌が当たると、スライムたちは一気に消散していった。
地面には、18個の小さな魔石だけが残った。
「……ハイン?」
「……取れた」
「今なんて……」
「やっと感じ取れた!!はっきり感じた、身体の中から外に繋がる通路!!」
「なんだと……?どうやって……」
「ハイン、今のはお前が前に言っていた魔力を少しずつ燃やす技か?」
「……ああ、そうだ」
「馬鹿な、あれは体内燃焼のパスウェイのはず……!」
「……待て、まさか……!」
「同じ中枢を共有していたのか!」
「ハブ……って何だ?」
「純黒パスウェイは、一筋の道ではなく、分かれ道だったということだ。ハブというのはその分かれ道の分岐点のことだ」
「じゃあ、途中までは体内燃焼と同じ道ってことか……?」
「ああ、そういうことだ。だから身体に集めて体内で燃やす寸前の魔力が体外に排出された」
「知識レベルは低いが……その分常識にとらわれないな」
「……それ、褒め言葉か?」
「最大級の賛辞だ」
「まあ、そんなことより、次は背中の方だ!!」
「いや、その前に服を着たらどうだ?」
「あっ、」
「それと、実際に意識的体外排出が使えるかどうか、確認する方が先だ」
「ああ……よし、やるぞ!」
「あった、もう一体のスライム!」
「まずは手で接触した状態でだ。遠隔はまだ難度が高すぎる」
「ああ、わかった」
スライムに手を乗せて……外への通路に魔力を送る……!
「純黒蝕」!
スライムは、数秒足らずで苦しみ出し、消散した。
「……成功だな」
「やった……!」
***
「スライムの魔石24個、確認できました。こちら報酬となります」
「今回は前より早くお帰りになったのに討伐数が増えてるんですね……?」
この二人……どうして毎回スライムしか狩らないんだろう……
二人とも実力はあるはずなのに……
「全く、いきなり脱ぎ出すもんだから驚かされたぞ」
?!
「挑戦的なのはいいが、もう少し慎重になった方がいいぞ」
「はは……そうだな」
えっ?
えええっ?!
脱ぐって何?!
?!まさか、スライム討伐は口実で、村の外の森で……!
「でも、ちゃんと出せてよかったな」
「まあ……そうだな」
わあああああ
「ハインさん!!エラさん!!誰も見てないからってお外で卑猥なことはダメです!!!」
「えっ?」「は?」




