粘質の教材
「おい、あれ見ろ」
「……魔女か」
「隣の奴は?」
「知らん……」
「魔女が人連れてるなんて初めて見たぜ……」
「臨時パーティーの結成、及び依頼の受注ですね?少々お待ちください」
エラさんにハインさん……エラさんは一見戦えそうにないけどたくさん魔物を討伐してるし……ハインさんも魔法が使えるって噂の期待の新人……!
お二人で一体どんな依頼を……!
「このスライム討伐の依頼を受けたいです」
えっ?
***
「魔法霧散の訓練だが……さっきもいった通りスライムを使う」
「スライムは魔物の中でも最小クラスと言われているし、攻撃力も皆無に近い」
「傷口から血を吸い尽くした……なんて話しは聞いたことはあるが傷は付いてないんだ。脅威ではない」
「つまり、この上なく安全な的というわけだ」
「よし……やるぞ……!」
「あった、スライムだ……!」
「魔力が最大まで回復している今、お前の身体からは少しずつ純黒魔力が流出している。スライムはその魔力を求めてお前の方に来る」
「本当だ、こっちに来てる……」
「純黒魔力は……魔物には塩水みたいなもんだ」
「塩水?」
「喉が渇いていて何かを飲みたい、かといって塩水を飲むと更に喉が渇く。それでもっと飲み物が欲しくなるが、魔物に水と塩水の見分けがつくほどの知能はない」
「純黒魔力を取り込めば取り込むほど弱化し、取り込めば取り込むほどもっと魔力を求めるようになる。そしてやがては消散する」
「へえ……」
「お前、なんか説明上手くなったな……例えが分かりやすかった」
「お前のレベルに合わせてみた」
うん……なんか馬鹿にされてる気がするな。
「とにかく、まずは純黒魔力の意識的な体外排出だ」
「勘を掴むまでが難しいが……体外へ繋がるパスウェイはお前ももう使っている」
「さっき言ってた最大まで回復すると身体の外に出すって奴か」
「そうだ、それを意識的にやれれば一段階目はクリアだ」
「そこでスライムを使う」
「スライムを?」
「スライムを手で持ってみろ」
「ええ……」
「怖いか?あんなにちっちゃくて無害なのに?」
「そんなことねぇよ!!」
「とにかくやってみろ」
……無害に見えてもこれ……魔物だよな……?ちょっと気味悪いな……
「スライムには口に似た部位がない。代わりに身体の表面で魔力を吸収する」
「今お前の魔力もお前の掌にに繋がったパスウェイから吸収されているだろう……」
「どうだ、体外へのパスウェイが活性化するのを感じないか?」
「うん……今のとこよくわかんねぇ」
「まあ、すぐには難しいだろう。だが、これが私の知る限り一番の近道だ」
「そうか……まあ、でも何もないよりはましだな」
やがて、スライムは苦しむように身体をよじり、消散していった。
「あっ、」
「魔石は取って置く。他のスライムを探すぞ」
「でも、本当に魔力は吸われたんだな……」
もう少しして、俺たちはもう一匹のスライムを探した。
スライムを手に乗せて……
身体の中の通路を感じる……
「魔力は、魔臓から生成され心臓を通って全身に伝わる」
心臓……
胸から肩、腕を通って掌までを意識する。
「ううん~~何か感じるような感じないような……」
「もっと大量の魔力を一編に排出できれば感じ取り易いだろうがな」
「魔力の出し方が分からない以上、スライムが吸う分までしか感じられないのか……」
「そうだな。ハイスライムでも見つかればあるいは……だが、ハイスライムは質量が大きい分危険性がある」
「難しいな……」
***
「これで何匹目だ……?」
「ひふみよ……11体目だな」
「ダメだ……全然コツが掴めねぇ……」
「身体の中で燃やすときはすぐ覚えたのに……」
「体内燃焼は難度が比較的に低いからな。それに、経験があっただろう?」
「ああ……あのとき……死にそうになってとっさに……」
「そうか、誰かに攻撃魔法を撃って貰えば……!」
「危険すぎる。それにあのときは偶然と言っていいくらいだ。大体誰に頼むんだ?」
「……確かに」
「地道にやっていくしかないか……」
「今日はもう遅い。あと数体、普通にメイスで倒して帰るぞ」
「そうだな……」




