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三人の軍勢

『フォールネン帝国領イルタス』


俺たち勇者パーティーは、各国を巡回しつつ魔物の脅威に対処する役目を果たしている。


人類を脅かすのは魔王だけじゃない。


俺たちこそが人類の希望……だっけな。


勇者が名字を持たないままでは困るということで、俺には「ホワイト」なんていうあからさまな名字まで付けられた。


宣伝の道具になってる気がして釈然としないが……まあ、そんなことはどうでもいい。


国が俺を利用するように、俺も国を利用してやる。


国の訓練や教育で、俺は勇者に相応しい力を手にすることができた。


肩書きや名前なんてどうでもいい。


自分の力で自分の大切なものさえ守れればそれでいいんだ。


「勇者様御一行だー!」


向かった先の「戦場」では、帝国軍が待機していた。


帝国軍たちは一斉にこちらに身体を向け、節度ある敬礼をして見せた。


俺は敬礼を返し、総指揮官と握手を交わした。


「現在状況は?」


「現状報告いたします。魔物の大量発生であります。現在、動きは見せておりませんが、周囲の市街には避難命令を出しています。人命被害はありませんが、馬車が通れず困難な状況であります」


「ご苦労」


「はっ!」


崖から見渡した先には、大型魔物を含んで多種の魔物が混在していた。


このままではやがて魔物たちが活動を開始し、同族捕食の末に上位種が生まれかねない。


「あああ、すごい数……どうしよう、緊張する……ちゃんとできるかな……」


『聖女』リウ=メイリン

魔力色C7F4D1(明彩緑)


「大丈夫よ、メイちゃん。私たちならできる。ほら、深呼吸して」


『賢者』エネス=フェッテル

魔力色D3C1F8(明彩紫)


「は、はい……エネスさん。すー……ふー……よし、頑張ります!」


「この人たちが……今世紀最強の戦力……?」


「……それではヒトゴマルマルより討伐作戦を……」


「軍は後方待機を」


「……今なんと……?!」


「魔物は私たちで討伐する。それが一番被害を減らせる」


『勇者』ベック=ホワイト

魔力色FFFFFF(純白)


「……!なりませぬ!!例え勇者様であってもリスクが……」


「私に考えがある」


「ここで遠距離攻撃を仕掛ける。兵力を投入しては攻撃に巻き込みかねない」


「ここでですと……?!」


「失敗すれば、この場の指揮権は貴殿に一任しよう」


「……了解」


総指揮官は、兵力を引き連れ後方に下がった。


「彼らだけに任せていいのでしょうか……」


「は、力に溺れたガキ風情が……遠距離攻撃だと?数百メートルはある。魔法が届くはずもなかろうに……」


「だがむしろ都合がいい。ここであいつが失態を犯せば、アーデズとの外交で優位を占められるだろう……」



「メイリン、弓矢を」


「は、はい!」


メイリンは、すぐに緑属性魔法を発動し始めた。


「勇者さん!半物質の弓矢です!」


「ああ」


「魔法付与(エンチャント)・増力(ブースト)」


半物質は、魔力と物質の中間状態。魔力を直接取り込ませることで魔法をエンチャントすることができる。


更に、自分に身体強化を発動。


「エンチャント・炎爆(パイロバースト)」


「エネス、抑制を」


「任せて」


「エンチャント・魔法妨害(マジック・インタラップション)」


俺は弓を構え、魔物たちに向かって思いっきり弦を引き、放した。


矢は、空気を切りながら瞬時に目の前から消えた。


「なっ……!」「全く見えなかった……!」


「あれほど遠く飛ばせるなんて……!」


「し、しかし、この距離で当たるはずもなければ当たったところで……!」


矢は、当たる必要もなければ、ダメージを与える必要もない。


あれはただの魔法を運ぶ容器(コンテイナー)だ。


エネスが距離を計算して発動した青属性魔法、マジック・インタラップションの効果が切れ、パイロバーストによって爆発が起き始める。


矢は、魔物の真ん中に飛び、そのまま爆発を起こした。


「なっ……!」


「およそ30体の殲滅を確認!!」


赤属性魔法、パイロバーストは……威力こそ優れているが通常の魔法の範囲内で使えば自分も巻き込まれる。


だが、こうやって遠くで発動させれば問題はない。


「ま、魔物の移動を確認!!こちらに向かってきます!!」


ダメージを負った魔物は、魔力を求めて攻撃の元に向かう。


あとは反復作業だ。


「……凄い」「たったの三人で……あの大群を倒していく……!」


勇者は剣を扱う、なんていうのも印象を作っているだけだ。


剣も使えないことはないが、使えるなら何でも使う。


重要なのは被害を減らすことだ。


「魔法の威力もそうだが……何発撃ってんだ……?」


「なんて魔力量だ……!」


「ベックくん、魔力大丈夫?」


「ああ、まだまだ行ける」


「本当凄いよね……」


俺の魔力量は、勇者パーティー内でも一番多い。


だからその分俺が魔力消費の多い魔法を担うべきだ。


「ま、魔物が崖の下まで!!」


……やはり範囲爆発魔法だけでは倒しきれないな。


各個撃破するしかない。


「メイリン、槍を」


「はい!!」


「エンチャント・ブースト」


投擲。


「上空に魔物あり!!ロックだ!!」


鳥型の魔物か……厄介だな。


「勇者さん!!次の槍です!!」


「ああ」


「エンチャント・ブースト」


投擲。


ロックは槍を素早く避け、崖の上まで上り詰めた。


「ケエエエ」


「なんて素早さだ……!」「変種か……?」


「二人とも、俺の後ろに」


ここまで許してしまったか……だが、


「ここまで来たら私たちの魔法の射程内だね」


「ああ、エネス。頼む」


「任せて。青属性魔法、脱力(イグゾースチョン)」


「キェエエエ」


よし、動きが遅くなった。


「メイリン」


「はい!」


槍を受け取り、エンチャントする。


「エンチャント・ブースト、空爆(エアロバースト)」


「二人とも伏せて!」


投擲!


俺は槍を空中に投げ、エアロバーストの発動を確認し次第地に伏せた。


「ケエエエ……!」


ロックは、羽をやられ地面に落ちていった。


まだ消散しないか……


赤属性魔法、火投(ファイア・スローイング)。


火の玉がロックに当たると、ロックの身体は徐々に燃えていった。


「……大型43体含む魔物237体、全て討伐完了……!」


「本当に三人だけであの大群を……!」


……ぱちぱちぱち


やがて、拍手の音が広がり始めた。


「流石勇者様御一行!!」


「人類の未来は約束された!!」


「救世主だ!!」


総指揮官は、驚いた顔で顎を抜かしていた。


「総指揮官殿、状況終了だ」


「あ、ああ……!さっ、流石は勇者様……!信じておりましたぞ!!」


「……私一人の力ではない。この戦法は聖女や賢者殿なしでは不可能だった」


「いいこというねベックくん~」


「ゆ、勇者さん……もう……」


……焦げた匂い?


……待て。


俺は、急いで崖の下を見下ろした。


そこには、さっきのロックの死体がそのまま残っていた。


「仕留めきれていない……?いや、あの損傷で消散しないはずがない……!」

魔物は半物質の疑似生命体。


構造体を維持できなくなると消散するはず。


なのに、肉の焦げた匂い。そしてそのまま残った死体……


「……あれは、一体何なんだ……?」

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