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静かに燃える黒炎

俺が純黒魔術の鍛練のために選んだ仕事は、工事現場の補助作業だった。


比較的に安全で、魔術を試せると思ったからだ。


「若いな。こういう仕事の経験はあるのか?」


「はい、一応…故郷で釘打ちもやったことありますし、力仕事には自信があります!」


「…そうか、じゃあ早速釘打ちからやって貰おうか」


「はい!」


俺はハンマーを持ち、左手で持って木材の上に立ててある釘を打ち付けた。


釘が曲がらないように、垂直で正確に打ち付ける。


よし、孤児院で院長を手伝って修理とかやってた経験が活かせてる…!


まあ、だからこの仕事を選んだということもあるけど。


そのまま、木材に刺さった釘を垂直に打ち付けながら少しずつ根本まで打ち込んでいく。


「見かけに依らず手慣れてんな。んじゃ任せた」


「はい!」


よし…じゃあ次は魔術を使ってみよう。


しかし…釘打ちは力だけでやるんじゃない。


ならどうするか…


まず、魔術を使わずに釘を刺し込んで固定する。


右腕に魔力を集中させ…ハンマーを振り下ろす。


そして、釘に当たる瞬間だけ力を増幅させる…!


「純(じゅん)黒(こく)燃(ねん)」!


釘は、一気に木材に深く打ち込まれた。


よし、これで姿勢や力の方向を変えずに威力だけ上げられる。


それと、もう一つ。


この釘打ちで力加減も練習しておきたい。


戦闘中にこの間のジャンプみたいなことになったらたまったもんじゃないからな…


例えば走るときや回避するとき、使う魔力の量に応じて自分が出せる力は大略的にでも把握しておく必要がある。


まずはこの釘を半分だけ打ち込むんだ。


俺は、予め木材に釘を立てて並べた。


「よし…やるか!」


純黒燃!


…7割くらいか…


やり直し。


2割…力を抜きすぎたか。


4割。


6割。


3割。


…思ったより難しいな。


やった…!ぴったり半分…!


この感覚を覚えてもう一度再現するんだ。


「おい、あれ見ろよ」


「何だ…?あいつ…?新人じゃなかったっけ」


「なんか…めっちゃ速くね?」


「大工の息子とか…?」


「あんな打ち方聞いたことねえよ…」


「二回で一本終わりかよ…」


「…ハイン、君…」


「あっ、監督官!」


「それ…どうやってやったんだ…?」


あ、流石に目立つか…


でも魔術とか言ってもわからないだろうしな…


「えっと…企業秘密です」


「…そうか」


「こっちの釘は全部打ったんですけど…次は何しましょうか?」


「お、おぅ…じゃああそこの石を運んでくれ」


「はい」


よし、考えてたもう一つの技が試せる。


「あの…こっちにつくように言われたんですけど」


「ああ、そこの荷車に石を積んで一緒に運んでくれればいい」


「はい」


純黒魔術の長所は瞬発力…赤属性魔法みたいな維持力はない。


一瞬で終わる打撃や跳躍ならまだしも、こういうもの運びなんかには役に立たない。


でも、真似できないだろうか?


純黒魔術が瞬発力を出せる理由…それは多量の魔力を一気に燃やしてるからだ。


だったら、少しずつ燃やせばいいんじゃないか?


まず、全身に魔力を送る。


魔力が燃えるのを抑制して少しずつ使っていけば…!


「純(じゅん)黒(こく)延(えん)燃(ねん)」!


やがて、俺の身体が熱くなっていくのが感じられた。


くっ、なんだこれ…全身に力が入りすぎてる…!


集中力は散るし、いつもと感覚が違って上手く歩けない…!


「おぉい!ぼーっとしてねぇで早く…って、お前なんか顔赤いぞ?!大丈夫か?」


「はい…大丈夫です」


「顔色悪いけど…監督官に言って休ませて貰うか?」


「いいえ、大丈夫です。行けます」


「…無理するなよ」


この依頼は時給制だ。休めばその分給料が減る。


だから深堀はしないでくれたんだろう。


そうだ、必ずしも赤属性を真似する必要はないんだ!


全身じゃなくて、そのときに必要な部位だけ強化すればいい!


石を持ち上げるに必要な…肩から手までを強化する。


集中力はちょっと散るけど…さっきよりは大分ましだ。


「あ、そんぐらいの大きさなら何人かで寄って運ぶなり砕くなりして…!って、一人で持てるのか…?」


「…はい。大丈夫です」


「…やっぱ危ないから俺も一緒に持つわ…不安でならねぇ…」


「…ありがとうございます」


…練習のためとは言っても脳筋すぎたか?!


まあ…でもいいか。工事現場の仕事なんて初めてだったけど、大して何もやらかしてないし、新しい技も習得できた。


技の名前とかは流石に恥ずかしいからエラには言えないけど…


今は地味に見えても、こんな積み重ねがきっと俺を強くする。


そう信じたい。

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