<約束、これからも>
ミア編(全4話です)
ミアが感じていたことのスピンオフです。
それだけで、胸がいっぱいになった。
私は祈った。
どうか。
思い出して。
でも。
思い出せなくてもいい。
それなら、それでもいい。
私は、あなたの一番の理解者でいたい。
あなたが苦しんでいるなら。
そばにいる。
あなたが迷っているなら。
一緒に歩く。
それが。
私にできることだから。
そして。
あの日。
メモリアルパークで。
彼は、倒れた。
私は怖かった。
どうして?
お願い。
目を開けて。
何度も呼びかけた。
「だいじょうぶ?」
返事がない。
「ねぇ、だいじょうぶ!?」
私は泣いていた。
彼の頭を膝に乗せる。
お願い。
帰ってきて。
もう一度。
私を見て。
しばらくして。
彼の瞼が動いた。
ゆっくりと目が開く。
「……」
私は息を止めた。
そして。
彼は私を見た。
「よかった…!」
涙が止まらなかった。
彼が言った。
「…ミアちゃん?」
その呼び方。
その声。
胸の奥が震えた。
そして。
彼は、自分が何者だったのかを思い出した。
人間だったこと。
宇宙船に乗ったこと。
事故に遭ったこと。
そして。
私との約束。
「約束…」
彼がそう呟いたとき。
私はもう、我慢できなかった。
「うん」
涙を流しながら笑った。
「うん。やっと、思い出してくれた……」
私は彼の手を取った。
小さな指を。
彼の指へ重ねる。
あの日と同じように。
「約束」
それだけで十分だった。
ねぇ。
私。
今、すごく嬉しい。
ずっと待っていた。
ずっと信じていた。
何度も不安になった。
もう会えないかもしれないと思ったこともあった。
それでも。
約束だけは忘れなかった。
あなたは帰ってきた。
人間だったあなたとは違う姿で。
違う声で。
違う人生を生きて。
それでも。
ちゃんと私を見つけてくれた。
だから。
今度は私も、あなたを離さない。
地球でできなかったこと。
一緒に見られなかった景色。
一緒に過ごせなかった時間。
全部。
これから取り戻していこう。
カフェで一緒にコーヒーを飲もう。
月の街を歩こう。
知らない場所へ行こう。
あなたが記事を書くなら。
私は隣で、その話を聞く。
あなたが疲れたら。
今度は私が慰める。
昔と同じように。
あなたが帰ってきたら。
「おかえり」と言う。
そして。
あなたが「ただいま」と言ってくれる。
それだけでいい。
だって。
私たちは、もう一度出会えたのだから。
私は、彼の手を握る。
小さな指を重ねる。
あの日の約束と同じように。
でも。
今度は違う。
これは、別れのための約束じゃない。
これからを一緒に生きるための約束。
「ねぇ…」
私は、心の中で彼に話しかける。
今度こそ。
ずっと一緒にいようね。
約束、守ってくれてありがとう。
そして。
――これからも、ずっと。
月世界の夜空には、青い地球が浮かんでいた。
私たちが出会った場所。
私たちが別れた場所。
そして。
もう一度、約束を結んだ場所。
私はその青い星を見上げながら、そっと笑った。
待っていてよかった。
本当に。
待っていてよかった。
だって。
あの日の小さな約束は。
何十年もの時を越えて。
ちゃんと、私のところへ帰ってきたのだから。
『ミア:今日、仕事が終わったらカフェに来る?』
『アルト:行くよ。待ってて』
うん、待ってる。
これにて、おしまいです。
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました。
次は月世界の女神様編、かもしれません。
全く別のシリーズ、かもしれません。
また、どこかで!
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