表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
森で見つけた呪われ少年を看病していただけなのに、王太子殿下に溺愛されています  作者: 葉月晴子
第一章 呪われ少年と、ちっちゃな看病係

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/46

第27話 ノエルが、私の薬草籠を運んでくれた日

その日、ノエルが私のご両親に初めて、会う日だった。


ちょうどお兄ちゃんも隣町の学校から帰ってきていて、「ノエルの経過を診たい」と一緒に来てくれることになった。


私はいつもよりちょっと緊張していた。


「お父さん、お母さん、ノエル、ちゃんと優しい子だからね」


「ふふ、リリィ、わかってるわよ」


「ノエル様のお話、毎日、聞いてるからな」


「ぼくは前に一度、診ているけどね」


お兄ちゃんがふっと笑った。


──そうだった。お兄ちゃんは前にノエルを診てくれている。


──お父さんとお母さんは今日が初めまして。


──ふふ。


◇◇◇



ローゼンタール離宮の門の前。


セバスチャンが私たち家族を優しく、迎えてくれた。


「ホーニング家の皆様、ようこそ、お越しくださいました。エリック様もその節は」


「ご無沙汰しております」


お兄ちゃんが丁寧に頭を下げた。


「お世話になっております」


お父さんも続けて、頭を下げた。


「いえ、こちらこそ、リリィ様のお力で坊ちゃまは本当にお元気になられました」


セバスチャンの目がいつものように潤んでいた。


──お母さんもそれを見て、ちょっと感動していた。


「ノエル様、お会いするのが楽しみ、です」


◇◇◇



ノエルの寝室。


ノエルはベッドの上でぴしっ、と姿勢を正していた。


艶やかな黒髪に青いリボン。


お外用のちょっとおしゃれな、シャツ。


──ノエル、おしゃれしてくれてる。


──ふふ、緊張、してるんだろうな。


「ノエル、お父さんとお母さん、来てくれたよ。お兄ちゃんも」


「初めまして。……兄は久しぶり、だな」


ノエルがベッドから降りて、お父さんとお母さんに丁寧にお辞儀した。それからお兄ちゃんにもちょこんと頭を下げる。


──、!


──ノエル、お辞儀、できるんだ。


──当たり前なんだけれど、ちょっと感動。


「ノエル様、初めまして。リリィの母です」


「リリィの父、ジョン、です」


「ノエル、です」


ノエルは苗字を言わなかった。


──ノエル、自分の苗字、教えてくれないんだろうな。


──王家の秘密、だから。


──いいよ、ノエル。


──いつか、教えて。


それからノエルはお兄ちゃんにちらりと目をやった。


「兄もまた、来たのか」


「ふふ。ノエル様の経過が気になりまして」


◇◇◇



お父さんとお母さんはノエルと優しく、お話した。


お母さんが薬草の調合について、教えてくれた。


お父さんは薬草採集について、教えてくれた。


ノエルは目を輝かせて、聞いていた。


その間にお兄ちゃんがノエルの脈をそっと診た。


「前に診たときよりずっとお元気です。リリィの薬と毎日のおかげですね」


「……別に」


そう言いながら、ノエルの耳はほんのり、赤かった。


「お父さんとお母さんは薬草の専門家、なのですね」


「ふふ、専門家、と言うほどではないけれど」


「リリィのお父さんとお母さんは優しい、ご両親です」


ノエルがぼそりと付け加えた。


──、!


──ノエル、私のご両親のこと褒めてくれた。


──嬉しい。


──ノエル、いっぱい、頑張ってる。


◇◇◇



お別れの時間。


私たち家族が玄関でノエルとお別れしていた、その時。


ノエルがぼそりと呟いた。


「リリィ」


「うん?」


「お前の薬草籠、貸せ」


「えっ、薬草籠?」


「ぼくが運ぶ」


──、!


──ノエル、私の薬草籠を運んでくれる?


「館の門まで」


「うん、お願いします」


ノエルは私のちょっと重い薬草籠を両手でぎゅっと抱えた。


──ノエル、まだ、体力が完全に戻ってないのに。


──頑張ってくれてる。


ノエルは私の薬草籠を抱えて、ゆっくりと門まで歩いてくれた。


お父さんもお母さんもお兄ちゃんもノエルを優しく、見守っていた。


「ノエル様、本当に紳士、ですね」


お母さんがぼそりと囁いた。


「リリィ、いい子とお友達になれたな」


お父さんが私の頭を優しく、撫でた。


──ふふ。


──お父さん、お母さん、ノエル、気に入ってくれたみたい。


──嬉しい。


◇◇◇



門の前でノエルが私に薬草籠を返した。


「明日も来るのか」


「うん、来るよ」


「薬草籠、重いから軽くしてこい」


ふふ。


──ノエル、私の心配、してくれてる。


──けれど、運んでくれたノエル、可愛い。


「うふふ、軽くはできないけど、明日も頑張る」


「ぼくがまた、運ぶ」


「えへへありがとう」


──ふふ。


──ノエル、私のヒーロー。


──本当に可愛いヒーロー。


◇◇◇



帰り道、お母さんがぽつりと呟いた。


「ノエル様、リリィのことをすごく、大切に思ってるのね」


「えっ、そう?」


「ふふ、見ていれば、分かるわよ」


「リリィ、ノエル様のいちばんのお友達、ね」


お父さんがふっと笑った。


──ふふ。


──お父さん、お母さん、嬉しそう。


「うん、私、ノエルのいちばんのお友達」


「けれど、ノエル様、相当、リリィを頼りにしてるぞ」


──ふふ。


──お父さん、見抜いてる?


──いや、まあ、嬉しい、けど。


──ノエル、これからもいっぱい、元気になれるといいな。


──ノエルといつまでもお友達でいたい。


私の心にちっちゃな夢が芽生えた。



リリィ・ホーニング、六歳の初夏。


呪われた男の子に薬草を運ぶ日々、約二ヶ月と二週間半。


ノエルが私の薬草籠を運んでくれた、特別な日。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ