第9話 挑戦
麗華との同棲生活が始まってしばらくしてからも、俺たちの筋トレ生活は変わらず続いていた。
今日もいつものようにダンジョンでトレーニングをする予定だが、その前に一つ、やっておきたいことがあった。
現実のベンチプレスの重量を測ることだ。
近所のジムはダンジョンになってしまったため、今日は麗華と一緒に区の施設にあるトレーニング室へ向かった。
目標はもちろん、ベンチプレス100kg。
ダンジョンでのトレーニングを始めてから、俺の身体は確実に成長している。以前は95kgが限界だったが、今ならその記録を更新できるはずだ。
トレーニング室に入ると、俺はさっそくベンチプレス台に向かった。
まずは軽い重量で身体を慣らし、少しずつ重くしていく。
90kg。
問題なく上がる。
95kg。
これも上がった。
以前の自己ベストと同じ重量だが、今では以前よりも余裕がある。
「よし……次は97.5kgだ」
俺は息を整え、バーベルを握り直した。
ラックから外し、ゆっくりと胸まで下ろす。
そして、一気に押し上げた。
「んんっ……!」
重さはある。だが、止まるほどではない。
バーベルは少しずつ上昇し、ついに腕が伸びきった。
「やった! 97.5kg上がったぞ! 過去最高更新だ!」
「すごいです! 大樹さん!」
麗華が嬉しそうに両手を上げて拍手した。その弾むような動きに合わせて、豊かな胸もふわりと揺れる。
おお……!
素晴らしいご褒美。眼福だ。
95kgから2.5kgの記録更新。
たった2.5kgと思うかもしれないが、ベンチプレスにおいて、この差は大きい。
何より、今まで積み重ねてきたトレーニングが、現実の重量として結果に表れたのが嬉しかった。
「よしっ! 続けて100kgに挑戦だ!」
「ええっ! もう100kgですか? 頑張ってください、大樹さん! 応援しています!」
麗華が胸の前で両手を握り、ぴょんぴょんと弾みながら声援を送ってくれる。
そのたびに、あの双丘が上下に揺れた。
よし……!
俺はあそこまで到達するんだ!
いや、違う。100kgだ!
100kgを持ち上げ、その先にある麗華の笑顔を手に入れる!
俺はもう一度ベンチに横になった。
100kg。
ついに、この重量に挑戦するときが来た。
両手でバーベルを握り、深く息を吸う。
集中しろ。
目の前の一回に集中する。
「大樹さん、頑張って! いけますよ!」
麗華の声援が飛ぶ。
よし! 絶対に上げてやる!
ラックからバーベルを外し、胸までゆっくりと下ろす。
そして、全力で押し上げた。
「うっ……くっ……!」
重い。
97.5kgとは明らかに違う。
それでも、俺は力を込めて押し続けた。
バーベルは少しずつ上がっていく。
だが、半分ほど上がったところで、その動きが止まった。
「だ、大樹さんっ! あと少しです!」
腕に力を込める。
もう少し。
あと少しだ。
しかし、バーベルはそれ以上動かなかった。
ドンッ!
バーベルが補助台に落ちた。
「くそっ! 100kgはまだだめか……」
俺はベンチから起き上がり、悔しさに顔をしかめた。
あと少しだった。
確かに成長している。97.5kgまで上げられたのだから、それは間違いない。
それでも、目標の100kgには届かなかった。
「大樹さん、大丈夫です」
麗華が俺の隣に来て、優しく声をかけてくれた。
「大樹さんは、私に初めて会ったとき、言ってくれましたよね。目の前の一回に集中する。それを積み重ねていくんだって」
「ああ……」
「大樹さんが積み重ねてきたこと、私、知ってますよ」
麗華は俺の目を見て、微笑んだ。
「だから、きっと大丈夫です。100kgだって、いつか上げられます」
そうだ。
俺は何を焦っているんだ。
95kgだった記録を、97.5kgまで伸ばせた。それだけでも、確かな成長じゃないか。
目標に届かなかったからといって、これまでの努力がなくなるわけじゃない。
目の前の一回に集中する。
その一回を積み重ねていく。
「……ああ、そうだな!」
俺は麗華に向き直った。
「またトレーニングを積んで挑戦しよう!」
「はいっ!」
100kgへの挑戦は、まだ終わっていない。
次こそは、必ず上げてみせる。
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ダンジョンでレッツ筋トレ!
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