↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
27/30

027 交通会社ユニークスキル返し罠

 我が名は、ブッコロ・スー。

 ダンジョンボスとしての責任を三か月近く放棄し続けた結果、最近は遠距離通信魔法で【別に帰ってこなくていいですよ】とまで言われる様になってしまったという、誠に稀有なる存在である。

 ちなみに、遠距離通信魔法の有効範囲は県内まで。

 いけてもお隣の県の途中までっぽい。


【――という訳で、キョーシローを通さないから、お前がお望みの舞妓は、祇園で歩いてる姿を探して、ただ遠くから見るだけにナル。それでもイイカ?】

【イエス、かまわない。舞妓の踊りはネットで見れる。ただ単に、一度は実物を目にしておきたかっただけだからな】


 土曜日の昼間。

 昨晩キョーシローが作ってた京都観光計画を、ようやく我なりに再構成できた所だ。

 我の所持金の内訳は以下の通り。

 五月から七月にかけて政府から支給されたラーメン代、それの月々の貯蓄が合計三万ちょい。

 ワンルーム時代、近所のジジバ……ゴホン。

 お腹がお太くていらっしゃるご高齢のニンゲンから貰ったお小遣い、合計一万ちょい。

 公民館で貰ったお捻りが合計三万ちょい。

 結論! 我の手持ち――七万ちょいちょいちょい円!

 これだけあれば、我とニーチャで京都に行って帰ってこれることウケイアイだ。

 だって考えてみ?

 新幹線代が往復で一人三万でしょ?

 二人で六万でしょ?

 ちょいちょいちょいでお昼ご飯代にはなるでしょ?

 飲食店は使えないから、まあスーパーかコンビニで買って公園とかで食べるとして?

 そしたら残り一万円で?

 しかも、我のプランだと京都の交通費は一人二千円くらいで足りるし?

 つまり要はつまるところ? それなりの余裕を持って観光できる寸法だ。

 ……フワオウッ!

 日本に来てまだ三か月なのに、我主導で観光!?

 さすがダンジョンボス、天才が過ぎるでっしょでしょ。

 でもガチで詰む可能性も考えて、ホーコに連絡して助けを求める覚悟はしておく。これマジ大事。


【じゃあ明日の朝、東京駅から午前六時発の新幹線で京都いくからナ。三時半になったら起こすから、早めに寝ておケ?】

【オウケイ。……しかし、流石レジェンド、時間管理まで完璧と見える】

【デゲショウ?】


 我は明日の為に、夕飯をしこたまたらふくどっさり食ってから――詳しい事情は抜きで、午前三時になったら通信魔法で起こすようギヴに頼んで――就寝。

 そして激しい舌打ちをアラームに起床。

 若干不愉快ではあったが、部下の不満をしかと受け止めるのもボスの務め。

 この程度、まあまあまあまあ、まあ可愛いものよ。


「…………めっちゃすごいイビキ……」


 我が起きるのとほぼ同時に、どこからか電気を消す電子音がした。

 多分キョーシローかなと思って、様子を確かめに部屋にこっそり入ってみる。

 そしたらスゴバコズビビビめっちゃイビキかいてた。

 頑張り過ぎたってばキョーシローってばまったくほんとにもう。


「せめて今日くらいは、ゆっくり寝てクレ」


 家全体を対象に――快眠結界発動。

 キョーシローだけじゃなくてホーコも疲れてるし、なんならアメリアも勉強疲れが凄い。

 みんな、ちゃんとよーく寝て、疲れをとるんだぞ?

 ブッコロお姉さんとのお約束だからな?


【オイニーチャ、起きろ起きロ】

【ラジャー。ミッションを開始する】


 寝る前に言いつけて置いた通り、ニーチャは即座に変装お着替えしてから、歯磨きとトイレに向かった。

 その間、リュックサックに、普段我がいつでも食べていいおつまみパンを大量に詰め込んでいく。

 更に、もう一つのリュックサックに、我とニーチャの念のためのお着替えをワンセット、あと常温のペットボトルの水も何本か入れる。

 そんでもって再度時間の確認してから、我もトイレにいって歯を磨いて変装お着替えして――午前四時を少し過ぎた頃。

 ニーチャにはペットボトルが入ったリュックサックを背負わせてから、魔法で足音を消しつつこっそり――フワオウッ!

 でーちゃったーでーちゃったー♪ こんな時間に家をでーちゃったー♪

 なんか不思議とテンション高まるうううううううううううううわっほい!


【しかし、本当にミー達二人で出かけていいのか? シローに怒られやしないか?】


 家から出てものの数分後、いまさら不安げな表情をしだしたニーチャに、我は笑顔で答えてやった。


【大丈夫大丈夫。全責任は我が取ル。心配するナ】


 というかむしろ、帰ったらキョーシローに怒られる事が決まってるんだよな。

 でもまあ、致し方なし!


【レジェンド・ブッコロ、なんと頼りがいのある存在よ……】

【あんまり頼られた事なかったから、照れるゼ☆】


 ルンルンランランボス気分で最寄りの駅で電車に乗り、東京駅へ。

 そして、指定席券売機で新幹線のチケットを買うべく脳味噌フル作動!


【……フフフ、事前情報通りダ】


 あまりにも予習通りで、思わず笑みがこぼれてしまった。


【ワッツ? 何がだ?】


 我は交通系ICカードを華麗に取り出し、説明してやる。


【金をチャージしておけば、このカードで新幹線のチケットが買えル。それが今確定シタ】


 ネットで見たとおりにやっただけだけどネ。

 それでもパズルがハマったみたいな感覚があってめちゃ楽しい!


【オウ、なるほど? それで、何かいいことあるのか?】


 アリアリのアリでげすよ大将!


【いいか、よく聞ケ? ……往復分のチケットを今買うと、帰りのチケットをどこかで無くすかもしれナイ。おまけに、現金をなくす可能性だって否めナイ】


 言っててちょっと悲しくなってきた。

 我、めっちゃとっても偉いボスなのに、ダンジョンに居た時、私物は部下に管理されてたもんね。

 いや、私物どころか全部、なんでもかんでも持ってかれてた。

 管理役の部下に申請しないと、なーんも渡してくれなかった思い出が――今、蘇るッッ!

 ……別に、文句はなかったけどね?  むしろ気が楽でよかったし?


【そこで、あらかじめ二人のカードに帰りの新幹線代と、京都での交通費を入れてオク! そうするとドウナル!? はいニーチャ君!】

【フム、……京都から帰る時に、あらためて帰りの新幹線のチケットを買えば良いのだな?】

【正解正解大正解! よくできましタ!】

【なるほど、流石レジェンドだ。後顧の憂いをばっさり断つのか】


 という訳で、それぞれカードに17000円ずつチャージして、あとはニーチャの行きの新幹線チケットも買って!

 よおおおおっしオッケエエエエエエイ!


【さらに言うとすれば、東京で交通系ICカードが使えたなら、京都で使えない道理が無イ。これが論理的思考というモノ】

【パーフェクトだ。本当に今日のレジェンドは頼りになる。素晴らしい】

【あらそうかしらア?】


 我の予定通り、乗車時間の三十分前に全ての準備が完了した。

 余裕をもって駅のホームへ向かい、そのまま新幹線に乗り込んだ。

 そして、隣り合わせで取った指定席に座った。

 あとは二時間揺られていれば、勝手に京都に着く。

 いいぞいいぞー、なにからなにまで完全完璧順調過ぎる。


【……レジェンド、暇だな。カーレースをさせてくれないか?】

【ヨカロウ】


 バッテリーの問題があるけど、まあ最悪、コンビニで充電させてもらえばいいか

 今はとにかく、ニーチャを退屈させない事を優先するべき。

 なんてったって今日のメインゲストなんだからな。


【…………フンヌグググググググ! やはり難しいな、車の運転というヤツは】

【……ちゃんとドリフトしたラ?】


 さてと、ニーチャはこのまま放っておいて、我は寝ようかな。

 でもその前に、到着時間の十分前にアラームをセットしておきましょねーっと。


【シイイイイイット! 曲がり切れない! なんだこの急カーブは!?】

【…………減速シタラ? あと、電車内は静かにネ?】


 我、もう寝るから。

 ちゃんと用法用量を守って正しくお使い下さいネ?


【ホワイ!? 減速!? それだと追いつけないだろうレジェンド!?】

【曲がりきれない方がタイムロスなんダガ!?】


 カーブには全力で突っ込んでいくスタイルのニーチャ。

 正直その気持ちが全然分からない。

 なにをどう考えたらそうなるんだろうか?

 だがまあいい、とりあえず我は寝、……うーん、寝たいけど、いっちょ我のおっきな背中、魅せとくか!?


【アアモウ、貸してミ!? 我がお手本を見せてヤル! とくとご覧アレ!】

【……ヲヲ! やはりレジェンド、開幕から一位で――二位を周回遅れにさせただと!?】

「ウオオオオオオオオオオオオッ! ここでインド人を右にいいいいいいいいいいいいっ!」

【何を言ってるレジェンド!?】


 ここから一時間くらい、我一人でフィーバーしてずっとゲームしてしまった。

 ニーチャには悪い事したかもしれない。アイムソーリー。


【……レジェンド? レジェンド? そろそろミーにもやらせてくれないか?】

「マッテ! 今いいとこダカラ! ここでコースアウトからの超絶ショートカット! フオオオオオオオオオオオオッ! 超エキサイティンッ!」


 結局、我は寝る事無く京都に辿り着き、フットーしまくった脳味噌のまま新幹線を降りるハメになった。


【こっちだ行くゾ! ついて来イ!】

【ヲヲ、なんとスムーズな案内! 流石だレジェンド!】

「あたりきしゃりきのこんこんちきだゼ☆」

【……ワッツ?】


 さて、京都駅バスターミナルから市バスに乗って――かの伝説の飛び降りの名所、清水寺から観光開始だ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。